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第108話

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グレイは今言われたアリシアの言葉に対して自問自答する。

バスター家の場所をご存知ですか?
→当然ながら知らない。先生を見つけて聞こうと思っていたくらいだが、冷静に聞かれて今思うに、いきなり家の場所を教えてくれるとは思えなかった。

そこまでどのようにして行かれるおつもりだったのですか?
→当然、最短距離を走って行くつもりだった。迷宮からここまで通常の行程よりも最短距離を走ることで前倒しで戻って来れたんだ。自分なら出来るだろうと考えていた。

魔法学園側にはどうお伝えするつもりですか?
→正直、全く話を通さず行くつもりだった。冷静に考えてみるとグレイが無事に戻って来たことを知っている先生は何人かいるだろう。それなのに学園に顔を出さないとなると当然バルム家に連絡が行くはずだ。そうすると間違いなく面倒なことになる。

どうやってエルリックさんの妹さんにお会いするおつもりですか?
→これはエルに話せば何とかなると思っていた。

どのようにして例の方法をエルリックさんの妹さんに施すおつもりですか?
→流石にこれはどうしたら良いのか検討もつかなかったので出たとこ勝負で行くしかない


ふぅ

グレイは勢いだけで飛び出そうとしていた自分を恥じ入り、落ち着くために深呼吸をすると、

(アリシアさんが良いと言ってくれるのであれば協力をしてもらう方が諸々確実だ。念の為確認しておこう)

「・・・本当に良いのですか?アリシア様こそもとの生活に戻れないかもしれませんよ」

ただ、一つだけ確認する。

すると、アリシアはグレイが同行を認めようとしてくれていることをすぐに悟り、飛びっきりの笑顔で、

「勿論良いに決まってますわ!」

嬉しそうに肯定した。

(その笑顔は反則だろ)

グレイはアリシアの可愛すぎる表情に惚けながら、そしてそれ以上に自分のために全力で協力しようとしてくれるアリシアに快く底から嬉しくなりながら、

「ありがとうございます。本当に」

アリシアに礼を言った。

「とんでもないですわ。時間が勝負になるかもしれません。早速参りましょう」

アリシアは表情を引き締め、グレイの前を歩き出す。

二、三歩歩く度に引き締めた表情が緩くなり、その度にすぐに表情を引き締める。

(今度はグレイさんと共に向かえますわ)

アリシアはグレイと一緒にいけることが嬉しくてたまらなかったのだった。

「アリシア様、お待ち下さい!」

すぐに行動したアリシアにグレイは慌てて追いかける。

すぐに緩む表情を恥ずかしくて見せたくなかったアリシアはしばらくの間グレイの前を歩き続けたのであった。



それからまずアリシアは屋敷の方に連絡を取り、馬車の手配をする。

そして、

「魔法学園側にも話を通しておきましょう」

というと馬車を待っている間にある場所に向かって歩き出した。

(どこに行くんだろう。今日は日曜日だから先生はいないと思うのだけど・・・)

グレイはアリシアの後をついて行きながら疑問に思ったのであった。
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