106 / 369
第105話
しおりを挟む
アリシアがお茶を飲み終わり、もう一人分に手を伸ばそうとした時であった。
コンコンコンコン!
激しく窓がノックされる。
「っ!?」
アリシアは突然の事に驚く。
(一体何が・・・)
窓の方を警戒しながら見ると、
「あれ?イズさん?」
もはや見慣れた可愛い小鳥のイズが窓をノックしている姿が見えた。
アリシアは完全に警戒を解くと窓際に近づき窓を開けて上げる。
すると、イズは待ってましたとばかりにアリシアの部屋に飛び込むと、
『アリシア!グレイが呼んでいるっ!!内容はまだ聞けていないが緊急事態だそうだ!!』
「!?・・・畏まりましたわ。すぐに準備をします」
アリシアは一瞬驚いたものの、すぐさま準備をする。
「イズさん、参りましょう!」
アリシアが声を掛けるとイズはアリシアの右肩に飛び乗る。
『グレイは先程アリシアを見送った場所にいるはずだ!』
「畏まりました!」
アリシアは寮の部屋を出ると小走りで移動を開始する。
本当は走り出したいのだが、貴族の寮内の規律が厳しく、誰かに見つかると返って時間がかかる可能性が高いため、小走り程度にとどめる。
「それでどういう状況なのですか?」
アリシアは周りに人がいないことを確認し、少しでも状況把握するためにイズに話しかける。
『グレイの部屋に行ったら鍵を無くしていたようでな。再発行して貰うために管理者という者を尋ねたのだ。すると管理者はグレイの部屋の鍵と再発行に関わる手続きを進めてくれた者の存在を明かした。そして、その者からの手紙を受けったグレイは自分の部屋に入って読み進めると急遽アリシアを呼んでくれと我にお願いしたのだ』
イズがアリシアの右耳元で状況を説明する。
「・・・そういうことでしたか」
アリシアは貴族女子寮を出るための最短距離を進みながら考える。
(グレイさんの鍵を用意したのは私《わたくし》ではありません。グレイさんが鍵を無くしている可能性までは考えられませんでした。きっと、バスターさんが用意されたのでしょう。とすると、グレイさんが読まれたという手紙の送り主はバスターさんのはず。一体どうされたのでしょうか・・・)
残念ながら、アリシアはグレイが居なくなってからのエルリックの様子に関して余り覚えていない。
もしかしたらグレイが慌てるほどの内容につながる兆候があったのかもしれないが、グレイのことで頭が一杯であったアリシアにはエルリックだけでなく、他のS組の生徒の誰のことも印象に残っていなかった。
(とにかく、今はグレイさんと合流して、状況を確認することが先決ですわ・・・)
アリシアは逸る心を抑えながら、無駄に広い貴族女子寮内を進んでいく。
そして、しばらくして、
(出口が見えてまいりましたわ)
アリシアは寮の出口に辿り着いたのであった。
コンコンコンコン!
激しく窓がノックされる。
「っ!?」
アリシアは突然の事に驚く。
(一体何が・・・)
窓の方を警戒しながら見ると、
「あれ?イズさん?」
もはや見慣れた可愛い小鳥のイズが窓をノックしている姿が見えた。
アリシアは完全に警戒を解くと窓際に近づき窓を開けて上げる。
すると、イズは待ってましたとばかりにアリシアの部屋に飛び込むと、
『アリシア!グレイが呼んでいるっ!!内容はまだ聞けていないが緊急事態だそうだ!!』
「!?・・・畏まりましたわ。すぐに準備をします」
アリシアは一瞬驚いたものの、すぐさま準備をする。
「イズさん、参りましょう!」
アリシアが声を掛けるとイズはアリシアの右肩に飛び乗る。
『グレイは先程アリシアを見送った場所にいるはずだ!』
「畏まりました!」
アリシアは寮の部屋を出ると小走りで移動を開始する。
本当は走り出したいのだが、貴族の寮内の規律が厳しく、誰かに見つかると返って時間がかかる可能性が高いため、小走り程度にとどめる。
「それでどういう状況なのですか?」
アリシアは周りに人がいないことを確認し、少しでも状況把握するためにイズに話しかける。
『グレイの部屋に行ったら鍵を無くしていたようでな。再発行して貰うために管理者という者を尋ねたのだ。すると管理者はグレイの部屋の鍵と再発行に関わる手続きを進めてくれた者の存在を明かした。そして、その者からの手紙を受けったグレイは自分の部屋に入って読み進めると急遽アリシアを呼んでくれと我にお願いしたのだ』
イズがアリシアの右耳元で状況を説明する。
「・・・そういうことでしたか」
アリシアは貴族女子寮を出るための最短距離を進みながら考える。
(グレイさんの鍵を用意したのは私《わたくし》ではありません。グレイさんが鍵を無くしている可能性までは考えられませんでした。きっと、バスターさんが用意されたのでしょう。とすると、グレイさんが読まれたという手紙の送り主はバスターさんのはず。一体どうされたのでしょうか・・・)
残念ながら、アリシアはグレイが居なくなってからのエルリックの様子に関して余り覚えていない。
もしかしたらグレイが慌てるほどの内容につながる兆候があったのかもしれないが、グレイのことで頭が一杯であったアリシアにはエルリックだけでなく、他のS組の生徒の誰のことも印象に残っていなかった。
(とにかく、今はグレイさんと合流して、状況を確認することが先決ですわ・・・)
アリシアは逸る心を抑えながら、無駄に広い貴族女子寮内を進んでいく。
そして、しばらくして、
(出口が見えてまいりましたわ)
アリシアは寮の出口に辿り着いたのであった。
163
お気に入りに追加
1,441
あなたにおすすめの小説
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる