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第95話

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「・・・マドッグ・ゾイド。聞いたことありませんね」

グレイが話した名前をアリシアが呟きながら心当たりがあるか考えるが聞いた覚えは無かった。

「そうなんだ。ということはこの前の執事のように2つ名があるのかもしれないね」

グレイがアリシアの言葉に仮説を立てる。

「間違いなく、そうなのでしょうね。グレイさんの能力があったからこそ名前が分かりましたが普通は分からないですから」

アリシアがグレイの仮説を支持する。

「そうか。だからマドッグと呼んだときに動揺していたんだな」

グレイが先程のことを思い出しながら言う。

「・・・珍しいですわね。グレイさんがそのようなことをなさるとは」

自分の能力を相手に知られることをとても嫌に思っているグレイは知られる可能性があることであっても滅多には言わないとアリシアは考えていたのでグレイの発言に驚く。

グレイは気まずそうにして、

「あいつの動揺を誘いたくて。ちょっと感情的になっていたこともあるけど・・・」

「何がありましたの?」

「・・・」

『あいつはグレイのフルネームを知っていた。そして抹殺対象だとも言っていたな』

グレイがどう言おうか迷っているとイズが端的に答える。

「イズっ!」

どう説明したらアリシアが受け止めやすいか考えて迷っていたグレイはイズの直球過ぎる言葉に思わず声を上げる。

『何だ?アリシアに隠し事をする必要はないのだろう?であれば、話しても構うまい』

イズが淡々とそう答える。

「いや、だからって・・・」

グレイがイズに対してさらに言おうと思った時、グレイは底しれないプレッシャーを感じ、その発生源を慌てて見た。

「・・・グレイさん。伝え方は考えなくてよろしいので出来るだけ細かく起こったことを順番に話して頂けますか?」

笑顔だ。笑顔ではある。いつものアリシアの美しい笑顔ではあるはずだな、とてつもないプレッシャーを含んでおり、逆らってはいけないとグレイの体全体がそう判断する。

「は、はい。畏まりました」

グレイはすぐさま建物を見つけた時から出るまでの間に起こったことをこと細やかに話し始めた。





「・・・まずは、繰り返しになりますがグレイさんがご無事で本当に良かったです。まさか、相手がそこまでの手練だった上にあれが無ければ死んでいたというくらい危機的状況とは思いもよりませんでしたわ」

アリシアはグレイの話を聞き終えて改めてグレイの無事を祝う。

「ありがとう」

グレイがアリシアの言葉に素直に礼を言う。

すると、アリシアはグレイの右手を両手でつかみ自分の前に少し寄せて、

「ですが、これからは敵いそうにない相手と遭遇した場合には逃げてくださいね」

目を潤ませながらお願いをした。

余程心配してくれたのだろう。

アリシアの両手が小刻みに震えている。

「・・・うん。分かった。心配させてごめんね」

グレイはアリシアの言葉に申し訳無いと思いながら今までの行動で逃げるという選択肢は無かったが、今後はそういったことも考えて行動しようと決意した。
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