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第94話

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「グレイさん、イズさん、どうぞお召し上がりください」

「アリシアさん、ありがとう」

『すまんな、アリシア』

グレイ、アリシア、イズの3人はかなり遅めの朝食と遅めの昼食を兼ねて食べ始めた。

診療所での騎士隊長への事情説明及びリンダやキャミーに関するお願いをした後、ようやく自由にできる時間が出来たので食事に来ていた。

場所は診療所から十数分歩いたところにあるアリシアオススメのレストランであった。

「美味しい!手が止まらないよ。アリシアさんは良いお店を知っているね!?」

朝から何も食べていない上に激闘を繰り広げたグレイは空腹+食事の味のあり得ないくらいの相乗効果によりナイフとフォークが口と食事の間を行ったり来たりせわしなくなっている。

『本当だな!美味だ!!』

イズも今回も良い仕事をしてくれたため、疲れているのかいつも以上に食べる速度が早い。

「うふふふ。ありがとうございますわ。足りなければ追加注文しますので遠慮なく言ってくださいね」

一方、アリシアの場合は、アリシアももちろんお腹は空いていたが、いつも通り優雅に食事を摂っており、流石の一言であった。

ちなみに今3人がいる部屋はレストランの個室で、イズが防音の魔法を行使しているため気兼ねなく話せる。





「・・・では、グレイさん。そろそろ本当は何があったのか教えていただけますか?」

食事が大体終わり、お茶を飲んで落ち着き始めた頃、アリシアはずっと気になっていたことを確認し始めた。

診療所では、3人きりになれるタイミングが無かったため、今の今まで聞くことが出来なかったのだ。

(グレイさんの服の状況を見るだけでもかなり大きな事があったに違いありませんわ)

アリシアはグレイが無事に診療所の自分のところまで会いに来てくれた瞬間からひと目でグレイにただ事ではないことが起きていたことを悟っていた。

グレイはなるべく目立たないように服の傷や血の滲みを隠していたがアリシアの目は誤魔化せなかった。

(もっとも、グレイさんは私《わたくし》に隠そうとしたわけではなく、それ以外の方に対して事が大きくならないようにしていたのでしょうけど)

「・・・そうだね。アリシアさんには隠し事はしないから安心して」

グレイがアリシアを見て言う。

「大丈夫ですわ。そのことに関しましては一分の不安もありませんから」

アリシアはグレイが自分に隠し事をするわけがないと信じ切っているため笑顔で返事をする。

(ですが、面と向かってそう言って頂けるととても嬉しいですわ)

アリシアは内心ではグレイの言葉がとても嬉しく感じられた。

「そっか、なら良かった」

グレイはアリシアの正しい認識にほっとしてから、

「まず、俺が戦った相手の名前はマドッグ・ゾイド。年齢は39歳。『組織』の中では『暗殺者』のようなものだと言っていた」

何があったのかを話し始めた。
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