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第33話

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「管理者さん!こっちですっ!!」

エルリックが慌てたように男子寮の管理者を連れてグレイの部屋に向かう。

管理者は70歳くらいの御老人で慌てて先導するエルリックのスピードに付いて行けないものの息を荒げながら付いてくる。

ちなみにアリシアは先にグレイの部屋の前で待機していた。

「バスターさん!」

エルリックの姿を見つけたアリシアが声を掛ける。

「バルムさん!!」

エルリックはグレイの部屋の前に到着し、管理者が到着するや否や

「慌ただしくて申し訳ございません。開けていただけますか?」

とお願いをする。

管理者は息を荒げながらも頷き、グレイの部屋のドアを開ける。

バンッ!!

エルリックは居ても立っても居られず鍵が開くや否や部屋の中に飛び込む。

アリシアも管理者に礼を言いながらエルリックの後に続いた。

「ここが、グレイさんの住んでいる部屋なのですね。・・・少なくともこの部屋にはグレイさんはいらっしゃいませんね・・・」

必要なもの以外何も置いていない殺風景な部屋だった。

一般男子寮はアリシアの想像以上に狭く、2部屋しかない。

もう1部屋は寝室だろう。

アリシアが一人でここまで来たのであればそちらも確認に行っただろうが今はエルリックもいるので流石に寝室に入るのはやめておいた。

「・・・手掛かりになりそうなものはありませんね」

アリシアが最初に入った1部屋目の中を探るも何も手掛かりになるものは無かった。

そうしていると、エルリックが寝室から出てくる。

アリシアはエルリックの表情を見てグレイが居なかったことを悟ると、

「・・・グレイさんは居なかったようですね」

残念そうに呟く。

もしかしたら杞憂で、グレイがここにいると思っていたが世の中そう上手くは行かなかったようだ。

「うん・・・昨日寝た形跡も無かった。いなくなったことの手がかりも無し・・・制服すら無かったから昨日から帰ってないみたい・・・」

エルリックが元気なくアリシアに答える。

グレイは基本的に綺麗好きなため、余程時間が無いことが無ければ部屋を綺麗にした状態で部屋を出る。

そのおかげで昨日からグレイが返ってきていないことが分かった。

「・・・こちらで得られる情報はここまでですわね。バスターさん、参りましょう」

アリシアが不安な気持ちを堪え、エルリックにそう言う。

「・・・分かった。けど、どこへ?」

エルリックはグレイが居なくてショックなのか、不安そうにアリシアに尋ねる。

「時間が惜しいですわ。移動しながらお話しします」

アリシアはそう言うと、管理者に礼を言った後、再び走り始めた。

エルリックはアリシアの後を慌てて追いかけた。



「バルムさん、どこに行くの?」

グレイさんの部屋を飛び出した私《わたくし》たちはひとまず一般男子寮を出て、しばらく走っているとバスターさんが私《わたくし》に尋ねました。

私《わたくし》は走りながらちらりとバスターさんの顔を見ます。

普段とは全く異なり不安で歪んだ顔になっているのがひと目で分かりました。

グレイさんのことを心の底から心配していらっしゃることがよく分かります。

私《わたくし》も心配でたまりませんが、2人とも動揺しているわけにも参りません。

私《わたくし》だけでも気をしっかりと持たなければ、今一度そのように決意し、考えを述べるためにバスターさんの方を向き口を開きました。

「私《わたくし》は・・・学園長先生のところへ行って参ります」

グレイさんのことを知っていて魔法学園内で起きたことですので一番早く動いてくださるはずですわ。

「!?」

バスターさんは一瞬驚いた様子をしてから頷き、

「分かった。僕はどうすればよい?」

私《わたくし》に尋ねて来られました。

バスターさんも動揺していますが、私《わたくし》の意図を汲んでそう尋ねられたことが、よく分かりました。

「バスターさんはユイ先生にグレイさんが寮に昨日から帰っていないことをお伝えください。私《わたくし》が学園長先生のところに向かったことも含めて」

「了解!間違いなく伝えるね」

バスターさんがそう言ってくださいました。

担任の先生よりも先に上司である学園長先生に話を伝えるのは良くありません。

私《わたくし》かバスターさんのどちらかが行くとするとこの振り分けが最適なはずですわ。

・・・今回のグレイさんの行方不明の原因はきっと私《わたくし》の所為ですから学園長先生のところには私《わたくし》が行くべきですもの

ああ、私《わたくし》のバカ!

どうしてこのような事態になることを想定しグレイさんにお伝えできなかったのか・・・悔やんでも悔やみきれませんわ!!

・・・理由は分かってます。

グレイさんとの接点が出き、楽しくて楽しくて浮かれていたのです・・・

考えれば考えるほどネガティブになっているといつのまにかバスターさんと向かう方向が違う場所まで来ておりました。

「じゃあ、また!・・・バルムさん、自分を責めないで」

「!?」

バスターさんがそう言うと教室に向かうため別の方向に走って行かれます。

・・・お見通しでしたのね。

外に動揺を出さないようにしていたのですが、バスターさんには悟られていたようですわね。

そうですわ。今は出来ることをしませんと・・・

たったひと声かけてもらっただけで少しだけ気持ちが楽になった私《わたくし》は走る速度を上げて学園長先生のところに急ぎました。



あれからしばらくしてやっと学園長先生のいる部屋へ直通の昇降装置に到着致しましたわ。

少ししか時間が経っていないことは分かっておりますがとても長く感じました。

「どなたもいらっしゃいませんね」

いつも秘書であるエミリーさんがいらっしゃるはずの机にはどなたもいらっしゃいませんでした。

もしかして学園長先生もご不在でしょうか。

私《わたくし》はその不安を覚えながらも、

「本当は勝手に上がっては行けないのでしょうが仕方がありませんわ」

昇降装置に乗り込みました。

どうか部屋にいてください。

私《わたくし》動くは昇降装置の中でそのように願っておりました。

ゥゥゥン

昇降装置が静かな音を立て停車したのを確認し、私《わたくし》は飛び出します。

すぐに部屋に到着し、

ドンドンドン

慌てているのが表面に出てしまったのかノックする音が大きくなってしまいましたが仕方がありません。

「・・・」

反応がありませんわ。

・・・はしたないとは思いながらも緊急事態ということを言い訳に学園長先生の部屋のドアに手をかけます。

・・・開きませんわ。

ご不在のようですわね。

仕方がありませんわ。

私《わたくし》もユイ先生のところに参りましょう。

そう思った時でした。

「・・・バルム様ですか?」

声をかけられましたのは。

私《わたくし》は急いで振り返り声の主を認めます。

フサフサの白髪、見事な白ひげの学園長先生が不思議そうに私《わたくし》を見ておりました。

「学園長先生!!」

私《わたくし》は急いで学園長先生に駆け寄り、

「緊急事態ですわ!!」

と声を上げました。

学園長先生は声を出さずに一度驚いてから、

「分かりました。まずは中へお入りください」

と仰ると遠くからドアに手をかざして扉を開けられると直ぐ様中に入られました。

私《わたくし》も急いで後に続きます。

「それで血相を変えられてどうされましたか?」

学園長先生が表情を引き締め、私《わたくし》にそう尋ねられます。

私《わたくし》は学園長先生が素早く行動を起こせるように言葉を選び話し始めました。

「グレイさんが昨日夕方から行方不明になりました。寮の部屋を確認した所、昨日から帰宅されてない様子ですわ。私《わたくし》は先日の一件が起因していると考えております」

「・・・なんと。ズー君が」

学園長先生が中々フレンドリーな感じでグレイさんの事を呼びながら驚いてから、

「『遠話』」

と呟いてからどなたかと話し始めました。
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