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第26話
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「お~い。席着け~」
グレイとエルリックが教室で他愛の無い話をしていると担任の教諭が入ってきた。
慌ててクラスメイト達が自分の席に付いていく。
(ん?まだ早くないか)
グレイはまだ予鈴も鳴っていないことに気づき訝しむ。
(まさか・・・)
グレイは今朝教室で分かれたアリシアの様子を思い出す。
「よし。皆席に着いたな。では早速だが、これから重大発表がある」
担任の教諭がそう宣言した後、
「今まで我が魔術学園では敢えて成績や実力による優劣のあるクラスを設けてこなかった。しかし、この度、君たちの中から成績優秀な者、将来が期待できる者、特別な能力を持った者などを集めて『S組』を作ることにした。何か質問あるか?」
一気に話し終えた。
教室は少し静まり返った後、
「「「はぁぁぁぁぁ!!!」」」
大騒ぎになった。
「せ、先生!その『S組』は全学年で設けられるのですか?」
兄弟姉妹が学園に居るのだろう。ある女子生徒がそんなことを尋ねる。
「いや。君たち4年生だけだ。今回君たちの学年でのみ試しに導入することになった」
「何で、4年生だけなんですか?」
その話を聞いていた別の男子生徒が尋ねる。
「もう学年が始まってから数カ月が経った。5年や6年だと残りの学園生活が短く『S組』の効果が判断付かない可能性がある。それで4年だ。4年からはクラス対抗の競技も出てくるからな」
「効果とは?」
別の男子生徒が尋ねる。
「『S組』を作ることで起爆剤となり、全クラスのやる気の底上げ、更には今まで周りに刺激になる者が少なかった『S組』レベルの生徒の能力向上の効果だ」
「いつからなんですか?」
別の女子生徒が尋ねると、担任の教諭は意地悪そうな笑みを浮かべ。
「今からだ。正確には、二時限目が始まる頃には『S組』は揃っている」
「「「って今日からかい!!!」」」
またもや大騒ぎになった。
「あー、あー、静かにしろー。では、『S組』に成る者を発表するぞ!何と、このクラスは他の『S組』者がいないクラスとは一線を画していてな、2人もいるんだ」
ごくっ
担任の教諭の言葉を聞いて黙り込む生徒。
「まずは、エルリック・バスター。お前だ。前まで来てくれ」
「え?僕??」
何とエルリックだった。
「まあ、そうだよな」
「エルリックなら納得だ」
「ええー、エルリック様にクラスで会えなくなるの・・・」
「おめでとうエルリック!」
エルリックが前に行くに連れてクラスメイト達が口々に好意的な言葉を投げかけていく。
「よし。次の一人を発表するぞ」
「先生」
「ん?どうしたエルリック?」
「これって辞退とか出来ますか?」
担任の教諭の近くまで来たエルリックが一度グレイを見た後、そんな事をいった。
(・・・あのバカ)
グレイは心の中で呟く。
グレイとクラスが離れるのが嫌なのだろう。
(まあ、悪い気はしないが)
「ほう。何故だ?」
担任の教諭は面白そうに目を細める。
恐らく生徒のリアクションについても記録してこいと言われているのだろう。
「理由は言えません」
(それはそうだろうな)
グレイは自分の自惚れでなければきっと合っているエルリックの辞退したい理由を正直に話すわけにはいかないだろうと納得する。
「そうか。まあ、いずれにせよ拒否権は無い。ひとまず、もう一人を発表する」
1限目も半分が過ぎた。
担任の教諭が少し慌て気味にそう言った。
「そうか。まあ、いずれにせよ拒否権は無い。ひとまず、もう一人を発表する」
担任の教諭がそう言うと、エルリックは明らかに暗い表情になった。
そして、他のクラスメイト達はもう一人が誰なのかに集中し、静かになる。
「もう一人は・・・グレイ・ズーお前だ」
「「「はぁぁぁぁ!?」」」
あり得ないくらい大騒ぎになった。
(・・・やっぱりか)
クラスメイトが叫んでいる中、グレイは何となく予想していたため冷静に事実を受け止めていた。
担任の教諭が手招きしてくるのでグレイは渋々席を立つ。
ゆっくり前を歩いていくと、
「なんでこいつが!!」
「あり得ないわ!」
「落ちこぼれの分際で!!」
「『S組』なんて嘘なんじゃない?」
「ちょっとまって、それじゃあエルリック様もってこと?」
「グズの癖に!!」
「俺とかわれ!」
「何であんたなのよ、あたしと変わりなさい!!」
予想していたがとんでもない言葉の嵐だった。
「おい、静かにしろ!グレイが選ばれたのは事実だ。これは上の方で決めているから覆ることは無い。お前達の気持ちは分からなくはない。自分たちより下だと思っていたやつが選ばれたんだからな気が気じゃないだろう・・・だがな、言っておくがグレイが落ちこぼれだと一体誰が何を見て決めたんだ?良いことを教えてやろう。グレイは本日付けでバルム家のご令嬢であるアリシアの付き人になったんだぞ?落ちこぼれなわけがないだろう」
担任の教諭が今までグレイが何も言わずにいたことに鬱憤が溜まっていたのかクラスメイト全員に言い聞かせた。
「え、うそ」
「まぢかよ」
「うそだ、、、信じられない」
「何でこんなやつがアリシア様の!!」
グレイのアリシア付き人発言は『S組』の時よりもショックが大きかったようだ。
ちなみに担任の教諭がそのことを知っているのはバルム家側から通達したからだろう。
付き人を指名した場合は学園側に伝える事になっている。
グレイが担任の教諭を見ると、してやったりという顔をしていた。
(このおっさん。これが言いたくて前まで来させたな。でも、まあこんなにも思ってくれていたとは意外だったな)
グレイは内心で呟く。
「よし。エルリック、グレイ。行って来い!もう戻ってくんなよ!!」
クラスメイト中が混乱している中、担任の教諭は笑顔でエルリックとグレイに言う。
『落ちこぼれるなよ。上を目指せ!!』
そう言いたいのだろう。
不器用な先生である。
「「長い間お世話になりました」」
グレイとエルリックは声を揃えて礼を言ったのだった。
「ふふ。まさか、グレイも一緒なんてね。最高だよ!」
エルリックが件の『S組』に向いながら嬉しそうに呟く。
「ああ。同感だ。というか、エル。お前、俺が一緒じゃないと思って辞退しようとしただろう?」
グレイは隣を歩くエルリックをジト目で見ながら呟く。
「え?ははは・・・バレてた?」
エルリックが気まずそうに言う。
「ばればれだよ。・・・ただ、その気持ちは素直に嬉しいがな。ありがとう」
エルリックはグレイの言葉に一度きょとんとしてから笑顔になり、
「ふふふ、どういたしまして」
2人は仲良く新たな特別なクラス『S組』に向かうのであった。
「ここか?」
グレイがある教室の前に立ち、そう呟く。
「ここだろうね」
エルリックが同意するように呟いた。
何の因果か知らないが、『S組』の教室は先日アリシアに手紙を書くときに使った空き教室であった。
今は、空欄だったところに『S』と書いてある。
「よし。入るか」
ここで突っ立っていても仕方がない。グレイは意を決するとエルリックに声を掛ける。
「うん!」
エルリックの同意の声が聞こえたのでグレイは思い切ってドアを開けた。
ガララララ
既に座っている生徒達から注目される2人。
まばらに座っているところを見ると、まだ席が決まっている訳では無いのかもしれない。
「あ、グレイさん!」
そんな中、一際目立つ存在がグレイに向かって手を振っていた。
言わずと知れたアリシアである。
グレイは他の生徒の手前もあるため、軽く会釈するに留め、アリシアの方に向かって歩き始める。
エルリックは黙って後をついて来ている。
「アリシア様、さっきぶりですね」
グレイが後半の言葉を少し強調して言う。
今になってハッキリしたが、アリシアはこの事を知っていたに違いない。
アリシアは笑顔を浮かべながら、
「ええ。そうですわね」
とどこ吹く風で答える。
「・・・はあ。今度事情をお教えくださいね」
グレイは諦めたかのようにアリシアに言うと、
「はい。もちろんですわ」
と早く話したいとばかりにアリシアが返答した。
「ねぇ、グレイ」
一通りのやり取りを後ろで見守っていたエルリックがグレイの後ろの引っぱる。
「あ、エル。悪かった。アリシア様、私の数少ない友だちを紹介させてください」
グレイがエルリックのことを紹介するためにアリシアに再度声を掛ける。
「はい」
アリシアは席から滑らかに立ち上がり、グレイとエルリックに体を向ける。
「こちら、エルリック・バスター。見た目通りの名門貴族です」
「・・・グレイ、もっと気の利いた紹介の仕方はないの?直接、お話しするのは初めてですよね。エルリック・バスターです。グレイとは親友やってます」
エルリックはグレイに苦言を呈した後、すぐに切り替えてアリシアに対して優雅なお辞儀を披露する。
(やはり、美男子がやるとくどくないよな)
傍で見ていたグレイがそんな感想を持つ。
「名乗りの必要は無いかも知れませんが、アリシア・エト・バルムです。宜しくお願い致しますわ。バスター家の次男さんですよね。直接お話ししたことはございませんでしたが、御噂はかねがね伺っておりますわ。まさか、グレイさんの親友とは思っても見ませんでしたが」
アリシアも優雅にお辞儀を披露した。
(・・・美少女がやると見惚れてしまうな)
グレイは少し顔を赤くしながらそんなことを思う。
「ははは。良く言われます」
エルリックが苦笑する。
「今度是非ともグレイさんのお話をお聞かせください」
アリシアがそんなことを言い、
「構いませんよ。グレイのことならいくらでも話せますから」
エルリックがそんなことを言う。
「ふふふ。グレイさんのご友人は面白い方ですわね」
そのやり取りが気に入ったのか、アリシアがグレイに向かって笑いながら言ってくる。
「・・・は、ははは。そうですよね」
(・・・エルのは本気の言葉なんだよな)
エルリックが冗談ではないことを知っていたグレイは乾いた笑いを返すのみであった。
グレイとエルリックが教室で他愛の無い話をしていると担任の教諭が入ってきた。
慌ててクラスメイト達が自分の席に付いていく。
(ん?まだ早くないか)
グレイはまだ予鈴も鳴っていないことに気づき訝しむ。
(まさか・・・)
グレイは今朝教室で分かれたアリシアの様子を思い出す。
「よし。皆席に着いたな。では早速だが、これから重大発表がある」
担任の教諭がそう宣言した後、
「今まで我が魔術学園では敢えて成績や実力による優劣のあるクラスを設けてこなかった。しかし、この度、君たちの中から成績優秀な者、将来が期待できる者、特別な能力を持った者などを集めて『S組』を作ることにした。何か質問あるか?」
一気に話し終えた。
教室は少し静まり返った後、
「「「はぁぁぁぁぁ!!!」」」
大騒ぎになった。
「せ、先生!その『S組』は全学年で設けられるのですか?」
兄弟姉妹が学園に居るのだろう。ある女子生徒がそんなことを尋ねる。
「いや。君たち4年生だけだ。今回君たちの学年でのみ試しに導入することになった」
「何で、4年生だけなんですか?」
その話を聞いていた別の男子生徒が尋ねる。
「もう学年が始まってから数カ月が経った。5年や6年だと残りの学園生活が短く『S組』の効果が判断付かない可能性がある。それで4年だ。4年からはクラス対抗の競技も出てくるからな」
「効果とは?」
別の男子生徒が尋ねる。
「『S組』を作ることで起爆剤となり、全クラスのやる気の底上げ、更には今まで周りに刺激になる者が少なかった『S組』レベルの生徒の能力向上の効果だ」
「いつからなんですか?」
別の女子生徒が尋ねると、担任の教諭は意地悪そうな笑みを浮かべ。
「今からだ。正確には、二時限目が始まる頃には『S組』は揃っている」
「「「って今日からかい!!!」」」
またもや大騒ぎになった。
「あー、あー、静かにしろー。では、『S組』に成る者を発表するぞ!何と、このクラスは他の『S組』者がいないクラスとは一線を画していてな、2人もいるんだ」
ごくっ
担任の教諭の言葉を聞いて黙り込む生徒。
「まずは、エルリック・バスター。お前だ。前まで来てくれ」
「え?僕??」
何とエルリックだった。
「まあ、そうだよな」
「エルリックなら納得だ」
「ええー、エルリック様にクラスで会えなくなるの・・・」
「おめでとうエルリック!」
エルリックが前に行くに連れてクラスメイト達が口々に好意的な言葉を投げかけていく。
「よし。次の一人を発表するぞ」
「先生」
「ん?どうしたエルリック?」
「これって辞退とか出来ますか?」
担任の教諭の近くまで来たエルリックが一度グレイを見た後、そんな事をいった。
(・・・あのバカ)
グレイは心の中で呟く。
グレイとクラスが離れるのが嫌なのだろう。
(まあ、悪い気はしないが)
「ほう。何故だ?」
担任の教諭は面白そうに目を細める。
恐らく生徒のリアクションについても記録してこいと言われているのだろう。
「理由は言えません」
(それはそうだろうな)
グレイは自分の自惚れでなければきっと合っているエルリックの辞退したい理由を正直に話すわけにはいかないだろうと納得する。
「そうか。まあ、いずれにせよ拒否権は無い。ひとまず、もう一人を発表する」
1限目も半分が過ぎた。
担任の教諭が少し慌て気味にそう言った。
「そうか。まあ、いずれにせよ拒否権は無い。ひとまず、もう一人を発表する」
担任の教諭がそう言うと、エルリックは明らかに暗い表情になった。
そして、他のクラスメイト達はもう一人が誰なのかに集中し、静かになる。
「もう一人は・・・グレイ・ズーお前だ」
「「「はぁぁぁぁ!?」」」
あり得ないくらい大騒ぎになった。
(・・・やっぱりか)
クラスメイトが叫んでいる中、グレイは何となく予想していたため冷静に事実を受け止めていた。
担任の教諭が手招きしてくるのでグレイは渋々席を立つ。
ゆっくり前を歩いていくと、
「なんでこいつが!!」
「あり得ないわ!」
「落ちこぼれの分際で!!」
「『S組』なんて嘘なんじゃない?」
「ちょっとまって、それじゃあエルリック様もってこと?」
「グズの癖に!!」
「俺とかわれ!」
「何であんたなのよ、あたしと変わりなさい!!」
予想していたがとんでもない言葉の嵐だった。
「おい、静かにしろ!グレイが選ばれたのは事実だ。これは上の方で決めているから覆ることは無い。お前達の気持ちは分からなくはない。自分たちより下だと思っていたやつが選ばれたんだからな気が気じゃないだろう・・・だがな、言っておくがグレイが落ちこぼれだと一体誰が何を見て決めたんだ?良いことを教えてやろう。グレイは本日付けでバルム家のご令嬢であるアリシアの付き人になったんだぞ?落ちこぼれなわけがないだろう」
担任の教諭が今までグレイが何も言わずにいたことに鬱憤が溜まっていたのかクラスメイト全員に言い聞かせた。
「え、うそ」
「まぢかよ」
「うそだ、、、信じられない」
「何でこんなやつがアリシア様の!!」
グレイのアリシア付き人発言は『S組』の時よりもショックが大きかったようだ。
ちなみに担任の教諭がそのことを知っているのはバルム家側から通達したからだろう。
付き人を指名した場合は学園側に伝える事になっている。
グレイが担任の教諭を見ると、してやったりという顔をしていた。
(このおっさん。これが言いたくて前まで来させたな。でも、まあこんなにも思ってくれていたとは意外だったな)
グレイは内心で呟く。
「よし。エルリック、グレイ。行って来い!もう戻ってくんなよ!!」
クラスメイト中が混乱している中、担任の教諭は笑顔でエルリックとグレイに言う。
『落ちこぼれるなよ。上を目指せ!!』
そう言いたいのだろう。
不器用な先生である。
「「長い間お世話になりました」」
グレイとエルリックは声を揃えて礼を言ったのだった。
「ふふ。まさか、グレイも一緒なんてね。最高だよ!」
エルリックが件の『S組』に向いながら嬉しそうに呟く。
「ああ。同感だ。というか、エル。お前、俺が一緒じゃないと思って辞退しようとしただろう?」
グレイは隣を歩くエルリックをジト目で見ながら呟く。
「え?ははは・・・バレてた?」
エルリックが気まずそうに言う。
「ばればれだよ。・・・ただ、その気持ちは素直に嬉しいがな。ありがとう」
エルリックはグレイの言葉に一度きょとんとしてから笑顔になり、
「ふふふ、どういたしまして」
2人は仲良く新たな特別なクラス『S組』に向かうのであった。
「ここか?」
グレイがある教室の前に立ち、そう呟く。
「ここだろうね」
エルリックが同意するように呟いた。
何の因果か知らないが、『S組』の教室は先日アリシアに手紙を書くときに使った空き教室であった。
今は、空欄だったところに『S』と書いてある。
「よし。入るか」
ここで突っ立っていても仕方がない。グレイは意を決するとエルリックに声を掛ける。
「うん!」
エルリックの同意の声が聞こえたのでグレイは思い切ってドアを開けた。
ガララララ
既に座っている生徒達から注目される2人。
まばらに座っているところを見ると、まだ席が決まっている訳では無いのかもしれない。
「あ、グレイさん!」
そんな中、一際目立つ存在がグレイに向かって手を振っていた。
言わずと知れたアリシアである。
グレイは他の生徒の手前もあるため、軽く会釈するに留め、アリシアの方に向かって歩き始める。
エルリックは黙って後をついて来ている。
「アリシア様、さっきぶりですね」
グレイが後半の言葉を少し強調して言う。
今になってハッキリしたが、アリシアはこの事を知っていたに違いない。
アリシアは笑顔を浮かべながら、
「ええ。そうですわね」
とどこ吹く風で答える。
「・・・はあ。今度事情をお教えくださいね」
グレイは諦めたかのようにアリシアに言うと、
「はい。もちろんですわ」
と早く話したいとばかりにアリシアが返答した。
「ねぇ、グレイ」
一通りのやり取りを後ろで見守っていたエルリックがグレイの後ろの引っぱる。
「あ、エル。悪かった。アリシア様、私の数少ない友だちを紹介させてください」
グレイがエルリックのことを紹介するためにアリシアに再度声を掛ける。
「はい」
アリシアは席から滑らかに立ち上がり、グレイとエルリックに体を向ける。
「こちら、エルリック・バスター。見た目通りの名門貴族です」
「・・・グレイ、もっと気の利いた紹介の仕方はないの?直接、お話しするのは初めてですよね。エルリック・バスターです。グレイとは親友やってます」
エルリックはグレイに苦言を呈した後、すぐに切り替えてアリシアに対して優雅なお辞儀を披露する。
(やはり、美男子がやるとくどくないよな)
傍で見ていたグレイがそんな感想を持つ。
「名乗りの必要は無いかも知れませんが、アリシア・エト・バルムです。宜しくお願い致しますわ。バスター家の次男さんですよね。直接お話ししたことはございませんでしたが、御噂はかねがね伺っておりますわ。まさか、グレイさんの親友とは思っても見ませんでしたが」
アリシアも優雅にお辞儀を披露した。
(・・・美少女がやると見惚れてしまうな)
グレイは少し顔を赤くしながらそんなことを思う。
「ははは。良く言われます」
エルリックが苦笑する。
「今度是非ともグレイさんのお話をお聞かせください」
アリシアがそんなことを言い、
「構いませんよ。グレイのことならいくらでも話せますから」
エルリックがそんなことを言う。
「ふふふ。グレイさんのご友人は面白い方ですわね」
そのやり取りが気に入ったのか、アリシアがグレイに向かって笑いながら言ってくる。
「・・・は、ははは。そうですよね」
(・・・エルのは本気の言葉なんだよな)
エルリックが冗談ではないことを知っていたグレイは乾いた笑いを返すのみであった。
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