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第22話

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「おのれ!!!マギーめ!!へまをしおって!!!」

ガシャン!

ところ変わってある屋敷、豪華な装飾品に身を包んだ一人の男が飲んでいたグラスを酒が入ったまま床に叩きつける。

「旦那様っ、落ち着いてください!」

そばに仕えていた40代くらいの執事が乱心した主人に駆け寄る。

「落ち着いていられるかっ!何度思い出しても腸が煮えくり返る!!」

旦那様と呼ばれた男が顔を真っ赤にして肩で息をする。

「・・・」

自分宛ではないとしても主人の激昂に当てられて何も言えなくなる執事。

「『何が私がバルム家の長女を必ずものにして見せますだ!』バルム家の御者まで懐柔してやった上に全て段どってやったにも関わらず失敗しおって!!」

男は、執事の返事など関係なく、思ったことをそのまま叫んでいく。

もうこれで何日目、何度目になるだろう。

先日の男の息子・・・いや、元息子のマギーがバルム家の長女アリシアを手籠めにし、嫁に迎え入れることに失敗してからずっとこの調子である。

ふと思い出しては今のようにグラスか食器を叩き割るため、掃除の手間が増えて仕方がない。

執事は、やれやれと心の中で思いながら何度か目のセリフを吐く、

「あの一件は旦那様のところまで被害が及ばないように手は回してあるので問題ありません。もちろん、確実にバルム家の当主は旦那様の関与を疑っているとは思いますがいくら3大貴族と言えども直接何かを旦那様に対して行うことは不可能かと存じます」

「・・・ふん。そんなことは分かっている」

執事が淡々と言った言葉に少し冷静になりながら男が答える。

「・・・もしや、マギー様のことを助けたいと思ってらっしゃるのですか?」

執事が少しだけ、ほんの少しだけ期待を込めてそのように言う。

だが、案の定男は、

「ふん。そんなことはどうでも良い。ただ、奴の所為で儂のメンツは丸つぶれだ。それだけが許せんのよ」

(ああ。やっぱりか)

執事は、少しでも期待した自分がバカだったと再認識する。

この男・・・ナガリア家当主は、自分と金以外の興味は殆ど無いと言っても過言ではない。息子の内の一人がどうなってもどうでも良いのだ。

「なんだ?」

ナガリアが執事の能面のように感情を表さない顔に変化があったことに気づき、ぎろりと睨む。

「いえ。何でもございません」

(本当にこの方は自分のことになると勘がいいのですよね)

「・・・まぁいい。それで、探らせていた件はどうなった?」

ナガリアが執事に問いかける。

「思わしくありません。マギー様の目論見を潰した第三者なぞ、本当にいるのでしょうか?」

執事は、情報収集に長けたものを配下を使ってマギーの事件に関与した第三者を探らせているが一向に情報が得られず思わずナガリアに問う。

「ああ。絶対いるに違いない。あれほどまでに用意周到にことを運んでおいたのだ、バルム家の長女一人では到底覆すことはできまい」

「仰ることは分かりますがそのような気配が全くないのです。・・・マギー様に直接聞きに行ければよいのですが面会謝絶ですし・・・」

ナガリアによる口封じでも恐れているのか、マギーは誰の面会もできなくされていた。

忍び込んで聞き出すことも可能ではあるが、それをするにはリスクしかない。

そもそも第三者が居ようがいまいがもはや関係ないのだ。

普通に考えれば。

だが、ナガリアはそれを良しとしなかった。

表立っては口が裂けても言えないがマギーの犯罪の大部分を担った上その目論見を潰された第三者に対して復讐しないと気が済まないのだ。

完全に逆恨みである。

「・・・お前たちは、街の中の人間を探っていたのだったな」

ナガリアが何かを思いついたのか確認を取ってくる。

「はい。あれだけ用意周到にしてきたことを覆すには我々の動きを掴んでいた対抗組織の介入しか考えられませんので」

ナガリアは今の地位になるまで色々とあくどいことも行って来た。

そのため、敵が多く、個人では太刀打ちできないからと言って徒党を組んだ対抗組織も1つや2つではない。

今回の件もそう言った連中の手によるものと考えていた。

「これだけ探って見つからないのだ。もしかしたら、全く想定していなかった魔法学園側の者かもしれんぞ」

「まさかっ!魔法学園には多額の寄付金も送っておりますし、旦那様に対して何かをしてくることなんて考えられません」

執事が驚いて否定する。

「そうだろうな。だが、魔法学園の息がかかっていない者・・・例えば魔法学園の生徒という線はありうるのではないか?」

「・・・否定はできませんが、基本寮に住んでいる魔法学園の生徒が今回の件に気づき対処するなんて考えられません」

「普通に考えればそうだ。だが、今回は普通に考えて失敗するはずのないことが起こったのだ。探ってみるのもありだと思わんか?」

「・・・畏まりました。どういった人物を探りましょうか?」

ナガリアがこのように言う時は「やれ」ということだとよく分かっている執事はこれ以上は何も言わず詳細内容を詰めようと確認する。

ナガリアは少し考えてから、

「そうだな。・・・急にバルム家の長女と仲良くなった者あるいは魔法学園側からの待遇が良くなったものを探れ」

そう言い放ったのだった。



「・・・」

「・・・」

グレイは筆頭執事のムスターの後についていくこと数分、まだ目的地に到着していなかった。

(ここに来るまでの間にあれだけ会話をした相手と沈黙のまま進むのも何だか妙な気分だな・・・よし)

「ムスターさんはいつもあのようなことをされているのですか?」

グレイは思い切って話しかける。

「はて?何のことでございましょうか?」

ムスターが律儀にグレイと同じ位置まで来てから返事をする。

「真偽判定というのですかね。あれです」

ゾルムがグレイに返事をする際にチラチラとムスターを見てから答えていたのでグレイが本当のことを言ったかを確認していたと考えての言葉である。

「・・・私《わたくし》としたことがズー様に対して口が軽くなっていたようですね。その事は公式には旦那様しか知らないことですので他言しないで頂けると嬉しいです」

ムスターが失敗してしまったといった顔をした後申し訳無さそうに懇願する。

(なるほど。真偽判定は正解でゾルム様以外にも知っていたり、気づいたりしている者もいるが表向きはいないということか)

グレイはムスターの言葉の裏まで充分理解してから返事をする。

「もちろんでございます。あの場で確認しなくて正解でした」

(危ない危ない。もしゾルム様の前で話していたら空気が悪くなっていたかもしれない)

グレイは心の中で汗を拭う気分だった。

(もしかしたら、ムスターさんのは長年の経験による真偽判定ではなく俺の『相手の寿命を視る』能力のような特別なものかもしれないな)

グレイがそのように思った理由の一つにはムスターの種族がハーフエルフであるということも含まれている。

本当かは不明だがエルフやハーフエルフの中には人間にはない不思議な能力を持っている者もいるという噂を聞いたことがある。

昔、グレイは自分の能力のことをエルフなら分かるかもしれないと思ったことがあったがどこにいるとも知れないので断念した経験がある。

「私が思うにムスターさんはゾルム様の対話相手から見えない位置にいた方が良いかと存じます。私はたまたまここに来るまでの会話があったからこそ気づきましたが、中にはあのやり取りだけで気づいてしまう方もいるでしょうから」

流石に能力云々のことを発言するとせっかくの友好的な雰囲気が壊れてしまう可能性があるため、別のことを言った。

「・・・仰るとおりですね。参考にさせて頂きます」

ムスターは内心で自分の人生の10分の1位の年齢の少年に対して舌を巻く。

(今までに旦那様と私《わたくし》のやり取りの意味に気づくものはおりませんでしたがズー様が言うようにリスクは少なくしておくに越したことはありません。今度旦那様に提案してみましょう)

ムスターが今後のことを考えているとグレイが別のことを聞いてくる。

「食事をする場所というのはまだかかるのでしょうか?・・・正直、緊張が緩んだらお腹が空いてしまって。。。」

グレイが恥ずかしそうにお腹に手を当てる。

「ふふ。もうすぐですのでご安心ください」

ムスターは急に年相応の様子になったグレイに微笑しながら答える。

(不思議な少年ですね)

ムスターは普通の人間よりも長生きしてきたが、グレイのような人間には会ったことが無かった。

(アリシア様がご興味を持つ訳が分かった気がします)




コンコンコン

ムスターが大きな扉をノックすると中からメイドが扉を開ける。

大きな扉が室内側に向かってゆっくりと開いていく。

「どうぞ。ズー様」

ムスターがお辞儀をする。

(俺が先に入っていいってことだな)

グレイがそう判断すると中に入っていく。

「グレイさん!!」

中に入ったグレイの名前を呼び、綺麗な長い赤髪を揺らめかせながら駆け寄ってくる人物がいた。

「アリシアさ・・・様、お久しぶりです」

グレイはその人物がアリシアであることが分かると相好を崩す。

ようやく知人に会えて嬉しいという気持ちもあるが何よりもアリシアに会えることが心から嬉しいグレイであった。

「・・・」

アリシアは嬉しそうな表情の中に少し拗ねた要素を交えるという器用なことをするが言葉にはしない。

(ああ・・・敬語だから少し拗ねているんだろうな)

グレイはその事に気づきはしたが、今の場所でタメ口で話す愚行をする気にはなれなかった。

(それにしても綺麗だな)

アリシアの服装を見てはっきり言ってグレイは見惚れていた。

シンプルに白いワンピースを着ているだけといえばそうなのだが、アリシアの綺麗な赤い髪が映える。

「アリシア。私にも紹介してくれないかしら?」

グレイがアリシアに綺麗と言いそうになりかけたとき、アリシアとは別の声がした。

グレイが声の方を見ると、思わず驚いた。

そこには、アリシアを更に大人にして髪を青色にしたような美人が居たからだ。

「お母様!?失礼致しました。こちらが私《わたくし》の命を救ってくださったグレイ・ズーさんです」

アリシアがグレイのことを紹介する。

「初めまして。グレイ・ズーと申します」

グレイは空気を読んで挨拶をする。

その女性はにっこりと微笑み、

「あなたがグレイ君ね。私の名前はウェンディ・エト・バルム。アリシアの母です。アリシアのことを救ってくれて本当にありがとう」

アリシアの母・・・ウェンディはグレイに向かって頭を下げる。

「とんでもないです。大事に至らなくて本当に良かったです」

「ありがとう。さて、そろそろ主人も来る頃だから、席に着きましょう。グレイ君はそこの席に座って」

ウェンディがそう言うとグレイの席を指し示す。

グレイが言われた席に向かいながら改めて部屋の中を見る。

大きな食堂である。

魔法学園の食堂とはいかないもののかなりの広さである。

天井には巨大なシャンデリアが鎮座し、部屋の壁には見ただけで高級なものと分かる絵画や彫刻などが飾ってある。

やろうと思えば国の貴族を大勢を集めてダンスパーティーができそうだ。

食卓もかなり広く端から端までが長く、上座と下座では声を張り上げないと届かないくらい広い。

「失礼致します」

グレイが席に着くと、

「失礼します。ふふふ、グレイさんと隣でお食事を摂れるなんて夢みたいですわ」

グレイの右隣にはアリシアが、

「うふふ、アリシアったら嬉しそうね」

グレイの前、アリシアの左前にはウェンディが座る。

(なんだろう。こんなにも大きな食卓でここだけしか使わないなんて物凄い罪悪感が・・・)

グレイは流石に一番の下座である食卓の端に座ると思っていたこともあり、動揺した。

「さっきぶりだね。グレイ君」

いつのまにかバルム家当主のゾルムが食卓に着きながらグレイに声を掛ける。

「!?・・・はい。ゾルム様」

グレイは急に現れたゾルムに驚きながら返事をする。

ゾルムの後ろにはムスターも当然のように控えていた。

流石にグレイと同じところから入ったら大人が2人通って気づかないわけがない。

(見た限りではよく分からないが隠し通路でもあるんだろうな)

グレイはそう結論付けた。
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