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第1話
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「あー。また今日から学園か・・・憂鬱だ」
学園指定の制服に着替えながら黒髪黒目、中肉中背の男・・・グレイ・ズーがボヤきながら言う。
グレイは魔法学園の4年生として在籍中で、今日は週始まりの月曜日の朝である。
そんな時、部屋のドアがノックされる。
「おーい、グレイ~。もう行ける~?」
「おー、エルかぁ。もうちょっと待ってくれ~!」
友達のエルリック・バスターが迎えに来てくれているようなので、グレイは支度を急ぎ部屋のドアを開ける。
「悪い。待たせた」
「全然気にしないでいいよ。おはようグレイ」
「ああ、おはようエル。・・・エルは相変わらず光り輝いてるよな」
「ふふ、グレイってばいつもそういうよね」
エルリック・バスター。
名門貴族の次男坊である。
金髪碧眼の美男子だ。
魔法も剣術も学科も学年上位をキープしており、性格も良しという完璧超人である。
噂ではファンクラブもあるという。
(天は二物を与えないって言ってなかったか?エルなんて何物貰ってるんだか・・・)
グレイはエルを見てもう何度目か数えるのも馬鹿らしいくらい考えたことを今日も考える。
「仕方がないだろう。エルみたいな完璧超人を見た凡人はそう思うんだよ」
「そんなことないよ!僕はグレイの優れているところを沢山知ってるし」
「わかったわかった。ありがとう。この話はおしまいにして学園に行こうぜ」
「・・・何かはぐらかされた気もするけど、わかったよ。行こう」
このやり取りは朝の挨拶みたいなものなのでエルも理解しているのか簡単に引き下がる。
グレイは部屋の鍵を閉めて、エルと一緒に学園に向かって歩き出す。
学園の生徒は例外を除いて全寮制である。
寮から学園までは徒歩15分ほどの距離である。
とは言え、寮も学園内に建てられている。
学園自体がとても広いのだ。
グレイとエルは近道を進む。
道は狭く、エルが先頭を歩く形になる。
グレイはいつもここでエルを良く『視る』ことにしていた。
『エルリック・バスター。16歳2ヶ月。残り寿命76年2月2日』
(ふぅ。今日もエルはいつも通りだな)
グレイは内心安堵する。
これは恐らくグレイだけの特別な能力で、相手の名前、年齢、残り寿命が視えてしまうのだ。
過去に周りの人にも視えていると思い、話してしまった事があったが散々な目にあったためこの学園に入ったときには誰にも話していない。
グレイ自身も気持ち悪い能力だと思うがこれはオンオフが効かないため、普段から視えてしまう。
長年の経験で視えても視ないように意識出来るようにはなっていた。
とはいえ身近な人のことだと把握しておきたくなり視るようにしている。
今日も何事もなく、二人は学園に辿り着いた。
「おはよう、みんな!」
エルが元気にクラスのみんなに挨拶をしながら入っていく。
グレイとエルのクラスは4年D組である。
二人が通っている魔法学園は国唯一のもので国中から通いに来るため物凄く人数が多い。
1クラス50人で1学年で41クラスあるため2000人を超える人数が通っている。
「おはよう、エルリック」
「おはようございますですわ。エルリック様」
「エルリックおはよ~」
流石優等生。全員から気持ちいい位の挨拶を受けながら自分の席に座る。
グレイとエルの席は後ろと前で異なるため、クラスに入るときはエルとは違う後ろから入るようにしていた。
凡人が挨拶しても反応が薄いことを理解しているため、そそくさと入り席に着く。
やがて、始業のチャイムがなり、ホームルームが始まった。
「あ~。やっと昼飯だ!」
グレイはお昼休みを告げるチャイムを聞き、机に突っ伏す。
月曜日から座学ばかりで疲れ果ててしまったのだ。
「おーい、グレイ~。学食行こうよ?」
エルがグレイの席に向かってやってくる。
「おう、行こうぜ」
お腹がペコペコなグレイに断るという選択肢はない。
二つ返事で了承すると席を立上り、二人並んで学食に向かう。
「なぁ、エル」
「ん?どうしたのグレイ?」
「いつも思うんだが、俺なんかと行動していて嫌じゃないか?」
グレイはクラス内でいじめられるということは無い物の平凡な能力しかないため、グレイ・ズーという名前の頭の文字をとって良く『グズ』と呼ばれてからかわれていた。
『グズ』というのは異国の言葉で鈍臭いという意味らしい。
グレイ自体、否定できないと感じているため余り気にはしていなかったが、よく一緒に行動してくれているエルの評判に傷がつくことだけは気になっていた。
「え?嫌なんてことないよ。グレイといると楽しいもの」
何を当たり前のことをといったように答えてくるエル。
余りにもまっすぐな目をして言うため、グレイは思わず口ごもる。
「そ、そうか?なら良いんだ」
少し照れ臭くなり、エルから視線を外し前を向く。
「あれ?グレイもしかして照れてるの?」
勘の鋭いエルがグレイの様子を見てにやにやする。
「て、照れてないぞ」
「・・・説得力無いな~」
そんなやりとりをしていると学食に到着した。
学食同じ入口から入り左右に別の空間に分かれている。
貴族用とそれ以外用である。
両者は同じくらいの大きさなのだが、貴族の人数は全体の10%位なので1人当たりの面積が異なっている。
グレイは言ったことないがエルの話ではメニューも異なるらしい。
「あ、あそこに席が空いているよ」
言うやいなやエルが持ち前の身体能力を駆使して席をとる。
「僕が席を確保しているから、先にグレイが買ってきてよ」
「ありがとう。それだと効率が悪いから俺がエルの分も買ってくるよ。何にする?」
「そう?ならAランチ!」
「分かったAランチな」
俺はエルの食べたいものを聞くや列に並ぶ。
しばらく並んでいると、入口の方から何やらどよめきが起こる。
「ああ!アリシア様よ!!」
「月曜日からお目にかかれるなんて最高だわ」
「いつ見ても神々しい」
「お近づきになりたい」
周りからはそのような声が聞こえてくる。
アリシア・エト・バルム。
グレイたちが暮らしているバルムス王国の貴族の中でも最も高貴な3大貴族の一つであるバルム家のご令嬢である。
容姿端麗、成績優秀というまさに才色兼備を実際の人物にしたような女性で、綺麗な長い赤髪、透き通るような琥珀の瞳が印象的だ。
余り他人に興味のないグレイも名前くらいは聞いたことはある。
(確か、学年は同じだったっけな)
普段ならわざわざ見たりしないのだが、学食の列に並んで手持ち無沙汰だったため、何となく見てみた。
「・・・そんな馬鹿な」
衝撃的な事実に思わず声に出してしまうグレイ。
『アリシア・エト・バルム。15歳8ヶ月。残り寿命5時間19分』
普段は見ないようにしているにもかかわらず、あり得ない寿命に思わず凝視してしまったのだった。
「どうしたの?グレイ?」
あの後、動揺のままに何とかエルの分も含めた食事を購入し、一緒に食べているとエルが心配そうに聞いてきた。
「・・・いや、別にどうともないぞ」
「そう。なら良いけど」
グレイは何とか平静を装いエルの質問に答える。
そしてグレイは再び思考の渦に入っていく。
(何でだ?何であと5時間しか寿命が無いんだ)
グレイはこれまでに無いほど頭をフル稼させていた。
(もしかして病にかかっているのか?)
アリシアが病気持ちだという話は聞いたことはない。
念のため、エルにも聞いてみることにする。
「な、なぁエル?」
「ん、どうしたの?」
「さっきの注目凄かったな」
「ああ、バルムさんのこと?グレイも興味あるの?意外だね」
エルが本気で驚く。
「お、俺だって綺麗な女の子に興味くらいあるさ」
「ほうほう。それで?」
続きがあるんだろう?とばかりにエルが聞いてくる。
グレイは余り大きな声で話すのが憚られたため、エルを手招きし、察しが良いエルが耳を向けてくる。
「バルムさんって、体が悪いとか病気とかあったりするのか?」
「へ?いや、聞いたことないよ」
「そうか。教えてくれてありがとう」
「どうしたの急に?」
エルが不思議そうに聞いてくる。
「あ、ああほら、美人薄命って言うだろ?現実にも有りうるのか気になってさ」
「プフぅ、何それ?やっぱりグレイは面白いなぁ」
エルはグレイの言葉を疑いもせず、お腹を抱えて笑い出す。
これ幸いとグレイは再度思考の渦に再度潜る。
(病気とかではないとすると自殺か他殺か事故になるな。・・・これ以上は情報が少なすぎて分からないな)
ふと、グレイの中の悪い心が囁く。
~別に関係ない人間が死ぬってわかったからといってお前が動く必要ないだろう。運命なんだよ。それが
一方、グレイの中の善い心が囁く。
~グレイだけが知ったということはきっと意味があるんだよ!!運命なんて変えちゃえ!!
「ふぅ」
グレイは一度深呼吸をし、自分の行動を決める。
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
グレイはボソリと呟き、未だ笑っているエルにお願いをする。
「エル、悪い。これ下げておいてくれるか。ちょっと用事を思い出したから先に教室に戻っていてくれ」
グレイは一方的にエルにお願いすると、立ち上がってどこかに向かって駆けて行く。
「え?ああ。うん・・・ってあれ?もう居ないや」
エルが返事した時には既にグレイの姿は無かった。
(さて、どうやって接触するか)
グレイは走りながら考える。
相手は大貴族の令嬢だ。
中々一人になることなど無く、いつも誰かしら取り巻きが居るだろう。
今から貴族スペースの食堂に行くのも無謀だ。
要人も多いため辿り着く前に問答無用で捕縛され、下手すれば騎士を呼ばれ連行される。
(学生同士が違和感なく、しかも初対面で二人きりになるには・・・)
グレイが悩みながら歩いているといつの間にか人気の少ない場所に来ていた。
「こう見えて、私も忙しいのですわ。何の用ですの?」
(ん・・・?)
グレイがこっそり覗くと如何にも貴族の女の子が男子と二人っきりでいるのが目に入った。
(そうか、この手があったか!恥ずかしいが仕方がない)
グレイはアリシアと二人きりになる方法が見つかったため、急いで準備をすることにした。
学園指定の制服に着替えながら黒髪黒目、中肉中背の男・・・グレイ・ズーがボヤきながら言う。
グレイは魔法学園の4年生として在籍中で、今日は週始まりの月曜日の朝である。
そんな時、部屋のドアがノックされる。
「おーい、グレイ~。もう行ける~?」
「おー、エルかぁ。もうちょっと待ってくれ~!」
友達のエルリック・バスターが迎えに来てくれているようなので、グレイは支度を急ぎ部屋のドアを開ける。
「悪い。待たせた」
「全然気にしないでいいよ。おはようグレイ」
「ああ、おはようエル。・・・エルは相変わらず光り輝いてるよな」
「ふふ、グレイってばいつもそういうよね」
エルリック・バスター。
名門貴族の次男坊である。
金髪碧眼の美男子だ。
魔法も剣術も学科も学年上位をキープしており、性格も良しという完璧超人である。
噂ではファンクラブもあるという。
(天は二物を与えないって言ってなかったか?エルなんて何物貰ってるんだか・・・)
グレイはエルを見てもう何度目か数えるのも馬鹿らしいくらい考えたことを今日も考える。
「仕方がないだろう。エルみたいな完璧超人を見た凡人はそう思うんだよ」
「そんなことないよ!僕はグレイの優れているところを沢山知ってるし」
「わかったわかった。ありがとう。この話はおしまいにして学園に行こうぜ」
「・・・何かはぐらかされた気もするけど、わかったよ。行こう」
このやり取りは朝の挨拶みたいなものなのでエルも理解しているのか簡単に引き下がる。
グレイは部屋の鍵を閉めて、エルと一緒に学園に向かって歩き出す。
学園の生徒は例外を除いて全寮制である。
寮から学園までは徒歩15分ほどの距離である。
とは言え、寮も学園内に建てられている。
学園自体がとても広いのだ。
グレイとエルは近道を進む。
道は狭く、エルが先頭を歩く形になる。
グレイはいつもここでエルを良く『視る』ことにしていた。
『エルリック・バスター。16歳2ヶ月。残り寿命76年2月2日』
(ふぅ。今日もエルはいつも通りだな)
グレイは内心安堵する。
これは恐らくグレイだけの特別な能力で、相手の名前、年齢、残り寿命が視えてしまうのだ。
過去に周りの人にも視えていると思い、話してしまった事があったが散々な目にあったためこの学園に入ったときには誰にも話していない。
グレイ自身も気持ち悪い能力だと思うがこれはオンオフが効かないため、普段から視えてしまう。
長年の経験で視えても視ないように意識出来るようにはなっていた。
とはいえ身近な人のことだと把握しておきたくなり視るようにしている。
今日も何事もなく、二人は学園に辿り着いた。
「おはよう、みんな!」
エルが元気にクラスのみんなに挨拶をしながら入っていく。
グレイとエルのクラスは4年D組である。
二人が通っている魔法学園は国唯一のもので国中から通いに来るため物凄く人数が多い。
1クラス50人で1学年で41クラスあるため2000人を超える人数が通っている。
「おはよう、エルリック」
「おはようございますですわ。エルリック様」
「エルリックおはよ~」
流石優等生。全員から気持ちいい位の挨拶を受けながら自分の席に座る。
グレイとエルの席は後ろと前で異なるため、クラスに入るときはエルとは違う後ろから入るようにしていた。
凡人が挨拶しても反応が薄いことを理解しているため、そそくさと入り席に着く。
やがて、始業のチャイムがなり、ホームルームが始まった。
「あ~。やっと昼飯だ!」
グレイはお昼休みを告げるチャイムを聞き、机に突っ伏す。
月曜日から座学ばかりで疲れ果ててしまったのだ。
「おーい、グレイ~。学食行こうよ?」
エルがグレイの席に向かってやってくる。
「おう、行こうぜ」
お腹がペコペコなグレイに断るという選択肢はない。
二つ返事で了承すると席を立上り、二人並んで学食に向かう。
「なぁ、エル」
「ん?どうしたのグレイ?」
「いつも思うんだが、俺なんかと行動していて嫌じゃないか?」
グレイはクラス内でいじめられるということは無い物の平凡な能力しかないため、グレイ・ズーという名前の頭の文字をとって良く『グズ』と呼ばれてからかわれていた。
『グズ』というのは異国の言葉で鈍臭いという意味らしい。
グレイ自体、否定できないと感じているため余り気にはしていなかったが、よく一緒に行動してくれているエルの評判に傷がつくことだけは気になっていた。
「え?嫌なんてことないよ。グレイといると楽しいもの」
何を当たり前のことをといったように答えてくるエル。
余りにもまっすぐな目をして言うため、グレイは思わず口ごもる。
「そ、そうか?なら良いんだ」
少し照れ臭くなり、エルから視線を外し前を向く。
「あれ?グレイもしかして照れてるの?」
勘の鋭いエルがグレイの様子を見てにやにやする。
「て、照れてないぞ」
「・・・説得力無いな~」
そんなやりとりをしていると学食に到着した。
学食同じ入口から入り左右に別の空間に分かれている。
貴族用とそれ以外用である。
両者は同じくらいの大きさなのだが、貴族の人数は全体の10%位なので1人当たりの面積が異なっている。
グレイは言ったことないがエルの話ではメニューも異なるらしい。
「あ、あそこに席が空いているよ」
言うやいなやエルが持ち前の身体能力を駆使して席をとる。
「僕が席を確保しているから、先にグレイが買ってきてよ」
「ありがとう。それだと効率が悪いから俺がエルの分も買ってくるよ。何にする?」
「そう?ならAランチ!」
「分かったAランチな」
俺はエルの食べたいものを聞くや列に並ぶ。
しばらく並んでいると、入口の方から何やらどよめきが起こる。
「ああ!アリシア様よ!!」
「月曜日からお目にかかれるなんて最高だわ」
「いつ見ても神々しい」
「お近づきになりたい」
周りからはそのような声が聞こえてくる。
アリシア・エト・バルム。
グレイたちが暮らしているバルムス王国の貴族の中でも最も高貴な3大貴族の一つであるバルム家のご令嬢である。
容姿端麗、成績優秀というまさに才色兼備を実際の人物にしたような女性で、綺麗な長い赤髪、透き通るような琥珀の瞳が印象的だ。
余り他人に興味のないグレイも名前くらいは聞いたことはある。
(確か、学年は同じだったっけな)
普段ならわざわざ見たりしないのだが、学食の列に並んで手持ち無沙汰だったため、何となく見てみた。
「・・・そんな馬鹿な」
衝撃的な事実に思わず声に出してしまうグレイ。
『アリシア・エト・バルム。15歳8ヶ月。残り寿命5時間19分』
普段は見ないようにしているにもかかわらず、あり得ない寿命に思わず凝視してしまったのだった。
「どうしたの?グレイ?」
あの後、動揺のままに何とかエルの分も含めた食事を購入し、一緒に食べているとエルが心配そうに聞いてきた。
「・・・いや、別にどうともないぞ」
「そう。なら良いけど」
グレイは何とか平静を装いエルの質問に答える。
そしてグレイは再び思考の渦に入っていく。
(何でだ?何であと5時間しか寿命が無いんだ)
グレイはこれまでに無いほど頭をフル稼させていた。
(もしかして病にかかっているのか?)
アリシアが病気持ちだという話は聞いたことはない。
念のため、エルにも聞いてみることにする。
「な、なぁエル?」
「ん、どうしたの?」
「さっきの注目凄かったな」
「ああ、バルムさんのこと?グレイも興味あるの?意外だね」
エルが本気で驚く。
「お、俺だって綺麗な女の子に興味くらいあるさ」
「ほうほう。それで?」
続きがあるんだろう?とばかりにエルが聞いてくる。
グレイは余り大きな声で話すのが憚られたため、エルを手招きし、察しが良いエルが耳を向けてくる。
「バルムさんって、体が悪いとか病気とかあったりするのか?」
「へ?いや、聞いたことないよ」
「そうか。教えてくれてありがとう」
「どうしたの急に?」
エルが不思議そうに聞いてくる。
「あ、ああほら、美人薄命って言うだろ?現実にも有りうるのか気になってさ」
「プフぅ、何それ?やっぱりグレイは面白いなぁ」
エルはグレイの言葉を疑いもせず、お腹を抱えて笑い出す。
これ幸いとグレイは再度思考の渦に再度潜る。
(病気とかではないとすると自殺か他殺か事故になるな。・・・これ以上は情報が少なすぎて分からないな)
ふと、グレイの中の悪い心が囁く。
~別に関係ない人間が死ぬってわかったからといってお前が動く必要ないだろう。運命なんだよ。それが
一方、グレイの中の善い心が囁く。
~グレイだけが知ったということはきっと意味があるんだよ!!運命なんて変えちゃえ!!
「ふぅ」
グレイは一度深呼吸をし、自分の行動を決める。
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
グレイはボソリと呟き、未だ笑っているエルにお願いをする。
「エル、悪い。これ下げておいてくれるか。ちょっと用事を思い出したから先に教室に戻っていてくれ」
グレイは一方的にエルにお願いすると、立ち上がってどこかに向かって駆けて行く。
「え?ああ。うん・・・ってあれ?もう居ないや」
エルが返事した時には既にグレイの姿は無かった。
(さて、どうやって接触するか)
グレイは走りながら考える。
相手は大貴族の令嬢だ。
中々一人になることなど無く、いつも誰かしら取り巻きが居るだろう。
今から貴族スペースの食堂に行くのも無謀だ。
要人も多いため辿り着く前に問答無用で捕縛され、下手すれば騎士を呼ばれ連行される。
(学生同士が違和感なく、しかも初対面で二人きりになるには・・・)
グレイが悩みながら歩いているといつの間にか人気の少ない場所に来ていた。
「こう見えて、私も忙しいのですわ。何の用ですの?」
(ん・・・?)
グレイがこっそり覗くと如何にも貴族の女の子が男子と二人っきりでいるのが目に入った。
(そうか、この手があったか!恥ずかしいが仕方がない)
グレイはアリシアと二人きりになる方法が見つかったため、急いで準備をすることにした。
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