戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第338話 気絶

ルークに投擲されたミリーナは綺麗な放物線を描きながら空を飛ぶ。

（・・・これは確かに怖いわね）

対空時間は短いはずだが、ミリーナにとってはとても長く感じられた。

（気持ちいいわね）

疑似飛行ではあるが、今更何をしようがもはやルークの膂力を信じるだけなのでミリーナは割り切ってせっかくなので初めての経験を楽しもうとする。

（あら、もう到着ね）

楽しみ始めたら時間が経つのが早くなったようで、すぐに対岸が見えてくる。

ミリーナは器用に空中で体を捻り、

ズザザザァ

綺麗に着地を決めた。

「ミリーナぁぁぁ、無事かぁぁぁ！！」

振り返るとヒルダが大声で叫んでいるのが見える。

「ええ！無事よ！！」

ミリーナがヒルダにそう答える。

「ミリーナ、では縄を外してくれ。後、ヒルダを受け取ってくれ！！」

「分かったわ！！」

ルークの指示に従い、ミリーナは自身に巻き付けた縄を解くと直ぐにルークが回収する。

「ヒルダ、覚悟は良いか？」

ルークが縄を縛って上げたヒルダに確認する。

「もちろんじゃ！！」

元気に答えるヒルダ。

その言葉を聞いてルークはミリーナの時と同様、ヒルダを右手に乗せる。

「ミリーナ！行くぞ！！」

ルークは対岸のミリーナに最終確認を取る。

「ええ！！いつでも良いわよ！！」

ミリーナはヒルダを受け止める準備をしながら答えた。

「おおおぉぉぉぉ！！！」

ミリーナの言葉を聞いてルークがヒルダを投げた。

空中に投げられたヒルダはうっかりと下を見てしまう。

「ぎゃぁぁぁぁ！！！高すぎじゃァァァ！！！！」

余りの高さにヒルダは叫び声を上げ、気絶してしまった。

ヒルダが気絶してもルークによる軌道は変わらず、ミリーナに向かって飛んでいく。

ミリーナは危うげなくしっかりとヒルダを受け止め、

「ヒルダちゃん！！」

ほっぺたを軽く叩きながら声を掛けた。