戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第286話 拘束

「ルーク！！」

ルークが追跡者を昏倒させた後、ヒルダと荷物を担いだミリーナが駆けつける。

「ミリーナ、縄を」

ルークがミリーナに頼むとミリーナがすぐに縄を投げ渡す。

どうやらルークが言う前にすぐ渡せるように準備していたようだ。

「流石だ。ありがとう」

ルークがミリーナを褒めながら追跡者の体を縄で縛っていく。

「剥ぐぞ」

「ええ」

ルークが既にヒルダと荷物を地面におろしていたミリーナに声を掛けてから追跡者の顔を覆っていたものをとる。

「・・・普通の顔じゃの」

興味深く見に来たヒルダが呟く。

追跡者の顔はどこにでもいそうな平凡な人物であった。

「本当ね。こんな格好と行動をしていなければ全く気にしなそう」

ヒルダの言葉に反応するミリーナ。

「・・・」

ルークは淡々と、追跡者を調べる。

武器類が出てくるが身元を示すようなものは身に着けていなかった。

「ちょっと！！ルークそんなところまで確認するの！！」

ルークの行動を見ていたミリーナがルークに慌てたように声を掛ける。

ルークはなんと追跡者の口の中まで確認していたのだ。

ゴリッ

ルークはミリーナの声掛けに反応せずに何かを指でとった。

「・・・自害用の毒入りの歯だ」

「なっ！！」

「なんじゃと！！」

ルークがミリーナとヒルダに見せたのは変色した歯であった。

「・・・良く気付いたわね」

ミリーナが先ほどの言葉を反省しながらルークに問いかける。

「こういう輩もいる。覚えておくといい」

ルークの口ぶりからすると過去に同じような手合いと遭遇したことがあるようだ。

そんな世界に身を置いていたルークにミリーナは改めて驚き、

「分かったわ。ありがとう。それでこれからどうする？」

ルークに確認を取る。

「そうだな・・・」

ルークはミリーナの言葉にこれからの行動を考え始めたのだった。