戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第261話 ヒルダ・スターリン

「では『ヒルダ・スターリン』という名前で登録させて頂きますね」

あの後、ルークとミリーナは宿に戻り待機しているヒルダと合流し、3人でボルンの街騎士団詰所に来ていた。

そこで早速、ヒルダの領民証の登録に来ていた。

「ああ。頼む」

「はい。それではしばらくお待ちください」

騎士団詰所の受付事務員が必要な書類を書き込んでいる間、待合室のような場所で座って待つ。

「ヒルダちゃん。良かったわね」

ミリーナが終始笑顔のヒルダに向かってそう言う。

「うむっ！まさか身分証を貰えることになるとは、本当にルークには感謝しかないのじゃ」

ヒルダが嬉しそうにミリーナに言葉を返す。

「気に入ってくれたなら良かったよ」

ルークは笑顔のヒルダの顔を見て気分が良くなることを感じた。

「おや。これはこれはルーク殿にミリーナ特別班班長ではないですか」

「マロウ騎士団長！」

後ろから声を掛けられ振り返ると、ボルンの街の騎士団団長マロウ・ハザ一級騎士がおり、ミリーナがすぐさま立ち上がり挨拶をする。

ルークはひとまず、軽く頭を下げて挨拶のかわりとした。

「皆さんは本日はどのような御用向きでしたか？」

一通り挨拶を終えると、マロウが尋ねてくる。

「領民証の手配に来たんだ」

「領民証・・・ああ。あの件ですね。それにしてもルーク殿の戦いは本当に素晴らしかったですね。いつか私もあのような戦いをしてみたいものです」

マロウが少し興奮した様子で言う。

無理もない。特に、ルークとバグラス大将軍の戦いは後世まで伝わる名勝負なのだから。

「ありがとう」

ルークは本日何度目かになるか分からない言葉を呟いた。

というのも騎士団詰所に来る間にも色々な人から同じように声を掛けられたからだ。

ボルンの街に来たときには無名だったのに数日で有名になり過ぎたルークであった。