戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第165話 剣術大会⑫

「あっ、ルーク」

ルークが待ち合わせ場所にいくと既にミリーナが待っており、ルークに気付いた後に声をかけて来た。

何となくだが、動揺しているように見える。

「悪い。待たせたようだ」

「ううん。あたしもさっき来たところだから」

「それなら良かった。何かあったのか？」

「うん・・・ちょっと想像以上にお給金が入ってて、、、」

どうやら騎士用銀行にて残高確認をしたときに給金が沢山入っていたらしい。

「まあ、ミリーナは近衛騎士でも上の地位だからな」

「・・・やっぱりそういうことよね。まだ近衛騎士入っばかりだっていうのに、、、」

銀行の残高をみてプレッシャーを感じたのかミリーナに元気がない。

「まぁ、貰えるものは貰っておけば良い。命令された任務を遂行しているのだから卑屈になる必要はないさ」

ルークの励まし・・・と入ってもルーク本人にとっては事実を言っているだけのだが・・・を聞いてミリーナが吹っ切れたような表情をする。

「ありがと、ルーク！そうよね！自分がその額に見合った行動をしていけばいいだけよね！！って、あれ？ヒルダは？？」

ミリーナは漸くルークの傍にヒルダが居ないことに気がつく。

「ヒルダも今、動揺している」

「えっ？何それ、どういうこと？ちょっとあたしヒルダのところに行ってくるわ！」

言うや否やルークの返事も待たずにミリーナが直ぐ様ヒルダの元へ向かう。

「・・・なかなか素早いな」

ルークが振り返ったときには軍用銀行に向かったミリーナの姿は既に無く、ルークは感心したように呟いた。



「ヒルダちゃん！」

ミリーナが軍用銀行に入った時、ヒルダはわなわなとしていたので思わず名前を呼ぶ。

銀行員はミリーナが銀行に用がないことをすぐに悟ると元の仕事に戻る。

「ん、おお、ミリーナか。どうしてここへ？？」

ミリーナの声掛けで漸くヒルダがミリーナが来たことに気付く。

「さっき、ルークにヒルダちゃんが動揺しているって聞いて訳も聞かずに飛んできちゃった」

「それはすまなかった。実は・・・」

ヒルダがさっきあったルークとのやり取りを含めた経緯を話した後、貸してもらった金額の多さに動揺していたことを話した。

「へぇ、ルークがそんなことをね」

全てを聞いた後、ミリーナが笑顔になり、

「もちろんあたしも同じ気持ちだから忘れないでよ」

「・・・ありがとう」

ミリーナの言葉に嬉しくなったヒルダが素直に礼を言う。

それを見て、満足した後、ミリーナが呟く。

「それにしてもそんな大金をポンと貸すなんてルークってば、、、きっと『国王代行』のお給金が良かったに違いないわ」

ミリーナが直感で口にする。

「ん？何か行ったか？」

ミリーナの呟きが聞こえなかったのかヒルダが聞いてくる。

「ううん。何でもないわ。ルークがいいっていうんだから気にしないでいいわよ。さあ、行きましょ」

「わ、分かったのじゃ」

ミリーナの言葉に返事をしたヒルダが銀行の外に向う。

ルークに借りたお金をしっかりと両手で大事そうに持って。