戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

第162話 剣術大会⑨

「ほんとじゃな、『剣術大会』を見に来る者や参加するもので賑わっているから金も入り用なのじゃろうな」

ミリーナの言葉にヒルダが予想を言う。

「だろうな、さてミリーナ。ここで別行動をするか？俺は銀行へ、ミリーナは騎士団へ」

ルークがヒルダの言葉に頷いてからミリーナに尋ねる。

「あたしも銀行寄りたいから騎士団へは一緒に行ってくれる？」

騎士団に行く機会は殆どなく、少し不安なのかミリーナがそう頼んでくる。

「分かった。ならまずは銀行に行こうか」

ルークは軍用銀行、ミリーナは騎士用銀行に向う。

ヒルダは意外にもルークの方に付いてきた。

「じゃあ、終わったらここで合流しよう」

「分かったわ」

声をかけ終えるとルークとミリーナはそれぞれの銀行へ向かった。

軍用銀行に入ったルークは迷わずカウンターに進む。

「申し訳ないが残高の確認がしたいのだが」

「畏まりました！身分を証明するものはございますか？」

カウンターに座っていた銀行員が久々の客にハキハキと答える。

ルークは、首下の服から何かを出した。

「なんじゃそれは？」

隣についてきていたヒルダが質問をする。

「ん。ああ。軍に入った時にもらえる身分証だな」

言ってルークは、取り出したものを渡す。

「ほぉ。これで身分を証明のぉ」

ヒルダがルークから渡されたもの・・・長方形型の小さな金属板を観察する。

「ほんとじゃな、ルークの名前が書かれておる」

ヒルダから身分証を受け取ったルークが銀行員に渡す。

「ありがとうございます！確認して参りますのでお待ち下さい！！」

身分証を受け取った銀行員が奥に移動する。

「他に客もいない。そこに座って待っていようか。しばらく時間がかかるはずだからな」

「わかったのじゃ」

ルークとヒルダが移動し、椅子に座る。

「かたい椅子じゃのぉ」

「仕方がないさ」

ルークはヒルダの言葉に肩をすくめる。

「それにしても、騎士団詰所の中に銀行があるなど斬新じゃな」

ヒルダが改めて感心したように述べる。

「他の国は知らないがそうなのだろうな」

「銀行強盗の減少。騎士団の遠征費や護衛費用の削減。騎士と国民の親和。メリットがたくさんあるのぉ」

ヒルダが銀行内にも待機している騎士を見ながら呟く。

「ほぅ。やるなヒルダ。そこまで分かるとは」

ルークが感心したように呟く。

騎士と国民の親和。騎士がより一層溶け込むことで、犯罪が起きる前兆を捉えやすくなったり、有事の際の協力関係の強化にもつながる。

「ふふふ、照れるではないか。・・・では、そろそろ本題に入りたいのじゃが」

ヒルダは褒められて喜んでから、話題を変えた。