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第154話 剣術大会

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「なるほどのぅ。ここがボルンの街か!」

あれから数日後、ルークとミリーナ、ヒルダの三人がボルンの街に到着した。

結局、ヒルダはミリーナを捕まえることはできなかったが、さすがの知識欲からずいぶんと長い時間追いかけていた。

ミリーナはすぐに諦めると思っていたので、ヒルダが中々粘りとても感心していた。

もともと後で教える気だったので次の街のこと、『剣術大会』のことを教えたのだが、ヒルダは疲れ果てていたのが嘘のように目をキラキラさせて色々とミリーナに質問していた。

ミリーナもそこまで知っていたわけではないため、ルークに助けを呼ぶ程であった。

(もうヒルダちゃんに知識欲を刺激するような内容でからかうのはやめよう)

ミリーナの正直な気持ちであった。

「なかなか雰囲気がある街ね!」

「そうだな」

ミリーナもそしてルークもボルンの街に感心していた。

ボルンの街は中央に『剣術大会』用の闘技場を設置し、そこを中心に街が拡がっている。

なんでもボルンの街の領主は代々剣術が好きで、初代の領主が「まず中央に闘技場を設置しよう」と言ってボルンの街が出来たということだ。

そのため、領主の館は闘技場の隣に建っているらしい。

『剣術大会』の歴史は古く、初代の領主の時代から毎年1回開催されている。

今回はたまたまその時期にやってきたという訳だ。

「のぅ、ルーク!お主もその『剣術大会』に出るのか?」

ヒルダがルークの傍にやってきて目を輝かせながら尋ねる。

数日一緒に居た間にヒルダもすっかりルークに慣れ、名前を呼ぶときも呼び捨てで呼べるようになっていた。

「ん?出ないぞ?見に来ただけだ」

「「えっ!!」」

ルークの言葉にヒルダだけでなくミリーナも驚きの声を上げる。

「ミリーナまで、どうした?」

「あたしもてっきりルークは参加するかと思ってたから」

「ミリーナも知っているだろう?『剣術大会』には軍人や騎士は参加できないことを」

ボルンの街で毎年行われる『剣術大会』には参加者資格は以下の者とされている。

①死ぬ可能性を許容できる者
②15歳以上の者
③軍人でも騎士でもない者

当初は参加者資格を絞りたくないということから①だけであった。

その内、未成年・・・15歳未満の参加者の死亡を嘆いた保護者の声を聞き続けた当時の領主が②のルールを追加した。

そして『剣術大会』がセインツ王国中に有名になった頃、軍人や騎士が多く参加するようになり、最大の盛り上りを見せるようになった。

その結果、軍人に関しては、戦争が起こっていない限りそこまで問題にはならなかったが騎士はそうはいかなかった。

各街に必要な騎士が不足し、この機に乗じて犯罪が横行したのである。

これには流石に不味いと思った当時のボルンの街の領主が慌てて③のルールを追加したという。

騎士だけ参加不可にすると反発が予想されるため、軍人も同様としたという訳だ。
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