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第142話 ヒルダ・ノーム・ジークムント④
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「ところでヒルダ、その閉じ込められた場所には見張りとかはいたのか?」
ルークがヒルダに確認をする。
「いや・・・我を連れて来たから数時間はいたがどこぞに移動していった。ちなみに我の他に連れてきた者もおらんかったぞ」
「そうか。なら手掛かりは残っていないだろうな」
「それは残念ね」
ヒルダの答えに、ルークとミリーナが考え込む。
どうやら犯人の特定をしたいようだ。
「気にするな。ジークムント王国の者が行ったか、セインツ王国の誰かに依頼して行ったかのどちらかだろうが、特定は不可能じゃろうて」
「それはそうなんだがな・・・」
「頭では分かるんだけど気持ちがね・・・」
「お主ら敵国のしかも王族のためにそこまで考えてくれてありがとうな」
ヒルダが二人に改めて礼を言う。
「・・・気にするな。それに今は停戦中だしな」
「礼を言われることじゃないわ!ヒルダちゃんはこれからどうするの?」
ヒルダが本心からの言葉と理解したルークとミリーナがそれぞれの言葉で返答する。
「これからか・・・そうじゃな」
ミリーナの言葉にヒルダが考え込む。
「・・・どこか適当な街まで送ってくれぬか?できればジークムント王国に対してあまり関わりのない場所が良いな」
「ふむ。それなら、セインツ王国の北側でなければ大抵そうだろうな」
「ヒルダちゃんはそこへ行ってどうするの?」
「これでも我は優秀だからな、適応してその地で生きていくことくらいできるじゃろうて。なんせ、その優秀さのせいで母国を追い出されるくらいだからのぅ」
ヒルダが自虐的な笑いを零す。
「・・・そっか」
ミリーナはヒルダの様子に同情を禁じ得ない。
まだ幼いヒルダが、王族争いに巻き込まれて知らぬ他国に追い出されたのだ。
押しつぶされそうなくらい心身ともに苦しいに違いない。
ミリーナが掛ける言葉が見つからず黙っていると、ルークが何事も無いように話し出した。
「なら、一緒に来るか?」
「は?」
「え?」
ルークの言葉にヒルダだけじゃなくてミリーナも驚いた声を上げる。
「ん?聞こえなかったか。俺たちと一緒に来るかと聞いたんだが?もちろんミリーナが同意すればだが」
ルークがミリーナをちらりと見ながら再度呟く。
「もちろんあたしには異論はないけど・・・」
(それができたら最高だけど、ヒルダちゃんはジークムント王国の王女なのだ。それをセインツ王国の『国王代行』のルークと行動を共にするのは停戦解除の火種になりかねないんじゃないかしら・・・)
「・・・ばかなことを言う出ない!」
ミリーナの思考を遮るようにヒルダが声を荒げた。
「お人好しにもほどがあるぞ!我はこれでも王女なのだ。それをお主のようなセインツ王国を代表する人物が傍にいることを知ったジークムント王国がどう思うか考えて見ろ!!」
「停戦解除の火種になるかもしれないな」
ルークが淡々と事実を答える。
「分かっておるのだったら、たわけた提案などするでない!!」
「関係ない。そうなったら俺がなんとかしてやる」
「なっ!?」
普段のルークにはない強い言葉にヒルダが驚愕する。
「俺は良く知っている。自分の意思以外のところで孤独にされることがどんなに辛いのかを。それを知ったからには放っておけない。これはヒルダのためだけではない。俺のためでもある」
ルークは思い出していた。
自分以外の影響で軍に従事する年数が延びていたこと。故郷に帰れば十数年前に死んだことにされ既に許嫁は別のところに嫁ぎ、両親も他界し孤独になったことを。
それだけでもあんなにも辛かったのに、ヒルダの場合は自国の人間から裏切られ、頼る者もおらず異国の地に追放され、死ぬ寸前までの状況であったのだ。
しかもまだ11歳の身でだ。
耐えられる訳がない。
ルークがヒルダに確認をする。
「いや・・・我を連れて来たから数時間はいたがどこぞに移動していった。ちなみに我の他に連れてきた者もおらんかったぞ」
「そうか。なら手掛かりは残っていないだろうな」
「それは残念ね」
ヒルダの答えに、ルークとミリーナが考え込む。
どうやら犯人の特定をしたいようだ。
「気にするな。ジークムント王国の者が行ったか、セインツ王国の誰かに依頼して行ったかのどちらかだろうが、特定は不可能じゃろうて」
「それはそうなんだがな・・・」
「頭では分かるんだけど気持ちがね・・・」
「お主ら敵国のしかも王族のためにそこまで考えてくれてありがとうな」
ヒルダが二人に改めて礼を言う。
「・・・気にするな。それに今は停戦中だしな」
「礼を言われることじゃないわ!ヒルダちゃんはこれからどうするの?」
ヒルダが本心からの言葉と理解したルークとミリーナがそれぞれの言葉で返答する。
「これからか・・・そうじゃな」
ミリーナの言葉にヒルダが考え込む。
「・・・どこか適当な街まで送ってくれぬか?できればジークムント王国に対してあまり関わりのない場所が良いな」
「ふむ。それなら、セインツ王国の北側でなければ大抵そうだろうな」
「ヒルダちゃんはそこへ行ってどうするの?」
「これでも我は優秀だからな、適応してその地で生きていくことくらいできるじゃろうて。なんせ、その優秀さのせいで母国を追い出されるくらいだからのぅ」
ヒルダが自虐的な笑いを零す。
「・・・そっか」
ミリーナはヒルダの様子に同情を禁じ得ない。
まだ幼いヒルダが、王族争いに巻き込まれて知らぬ他国に追い出されたのだ。
押しつぶされそうなくらい心身ともに苦しいに違いない。
ミリーナが掛ける言葉が見つからず黙っていると、ルークが何事も無いように話し出した。
「なら、一緒に来るか?」
「は?」
「え?」
ルークの言葉にヒルダだけじゃなくてミリーナも驚いた声を上げる。
「ん?聞こえなかったか。俺たちと一緒に来るかと聞いたんだが?もちろんミリーナが同意すればだが」
ルークがミリーナをちらりと見ながら再度呟く。
「もちろんあたしには異論はないけど・・・」
(それができたら最高だけど、ヒルダちゃんはジークムント王国の王女なのだ。それをセインツ王国の『国王代行』のルークと行動を共にするのは停戦解除の火種になりかねないんじゃないかしら・・・)
「・・・ばかなことを言う出ない!」
ミリーナの思考を遮るようにヒルダが声を荒げた。
「お人好しにもほどがあるぞ!我はこれでも王女なのだ。それをお主のようなセインツ王国を代表する人物が傍にいることを知ったジークムント王国がどう思うか考えて見ろ!!」
「停戦解除の火種になるかもしれないな」
ルークが淡々と事実を答える。
「分かっておるのだったら、たわけた提案などするでない!!」
「関係ない。そうなったら俺がなんとかしてやる」
「なっ!?」
普段のルークにはない強い言葉にヒルダが驚愕する。
「俺は良く知っている。自分の意思以外のところで孤独にされることがどんなに辛いのかを。それを知ったからには放っておけない。これはヒルダのためだけではない。俺のためでもある」
ルークは思い出していた。
自分以外の影響で軍に従事する年数が延びていたこと。故郷に帰れば十数年前に死んだことにされ既に許嫁は別のところに嫁ぎ、両親も他界し孤独になったことを。
それだけでもあんなにも辛かったのに、ヒルダの場合は自国の人間から裏切られ、頼る者もおらず異国の地に追放され、死ぬ寸前までの状況であったのだ。
しかもまだ11歳の身でだ。
耐えられる訳がない。
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