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第109話 正面突破③

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「は、はい。白髪の男が一人で庭にいる私兵を蹴散らして館の中に入ったのです」

私兵長アグラスの言葉に対して、部下が再度相手が一人であることを伝える。

(冗談を言っているわけではないねぃ)

アグラスは、1階の方からかすかに聞こえる戦闘音を聞きながら、部下の様子を見てそう判断する。

「・・・分かった。庭にいる連中よりも、館の中にいる連中の方が手練れだ。流石にここまでは来るとは思えないが入ってきたら全員で一斉に矢を放てるようにしておけ」

「「「はっ!!」」」

アグラスの指示で、『謁見の間』にいる私兵たちが一斉に弓を構える。

「ぎししし、この調子なら問題なさそうだな。庭に居た使えない連中の分の金は払わんからな」

アグラスの対応を見ていたバストロが余裕を取り戻し、アグラスに言い放つ。

「・・・へぃ」

(出来だが払いじゃないはずだがねぃ。侵入者を倒した後に金を吹っ掛けるとするかねぃ)

不満はあったが、今はバストロと言い争う場合じゃないと考えたアグラスは一度言葉を飲み込むことにする。

ケビンは侵入者のことを聞いてから何となく予想がついていた。

(恐らく、ルークさんだ。でも、一人で来るなんて!?駄目だ!ここまで来れても蜂の巣にされてしまう)

檻の中からでは、逃げてくれとも伝えられず、唯々祈るしかなかった。




「ぐはっ!」

バストロの館の1階。私兵の一人がルークによって突き飛ばされ悲鳴を上げる。

(館の中の連中は庭にいた奴らより腕が立つようだな)

ルークが手応えの違いからそう判断する。

「ぐぅっ!」

また一人無効化し、次々とあふれ出る連中を気絶させていく。

驚いたことにルークはそれを剣を使わず行っていた。

「何て奴だ!」

私兵の連中もこれまで腕っぷしの強さで今まで生きてきたが、ルークのような規格外とは戦ったことが無かった。

否が応でも彼我の差が分かってしまい、腰が引けていく。

「がはぁ」

「ぎゃぁ」

「ぐふっ」

ルークはその隙を逃がさず、無力化していき、しばらくするとルーク以外には誰もかもが倒れたのだった。
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