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第95話 イリア・ゼーラ・ハミリアン
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イリア・ゼーラ・ハミリアン
第二の王都と呼ばれるゼーラの街の領主であるケビン・ゼーラ・ハミリアンの一人娘である。
イリアは子供の時から大層可愛く、両親にとても大切に育てられていた。
それに加えて一人娘ということもあり、大事な娘を何があるかよく分からない家の外に出すことを極力嫌がった両親は教養などは全て家庭教師を雇って済ませ、領主の館から外に出ることがないようにしていた。
幼い時からそういう暮らしをしていたイリアは特段おかしなことだとも思うこともなく、普通に育っていった。
やがて、両親の理想通りに育ったイリアはとても綺麗な女性となり領主の館に訪れる客の話題の的になった。
その話題が街中、ひいては他の領地にまで轟くのは自然な流れであった。
ある時、そのことを耳にした国王が是非とも社交パーティーに参加させよとケビンに伝えた。
流石に国王の言葉に抗うことも出来ず、イリアは始めて領主の舘から離れ、王城で催されたパーティーに参加した。
イリアにとっては王城へ向かう途中の風景、良い匂いのする食べ物屋、自分の家では見たことのない数の老若男女の人々を見て『外の世界』に憧れを強く持つことになる。
パーティーに参加したイリアは噂以上の綺麗な女性だと国王や王族始め、貴族たちの注目の的となった。
だが、イリアにとっても不幸なことにそこに参加していた他の街の領主に見初められ執拗に求愛されたのだ。
その相手がイリアとそこまで歳も離れておらず、未婚の人なら一考の余地はあったかもしれないが、イリアと2周り以上離れている上に、妾としてと言われたため始末に置けない。
その自体に気づいたケビンが事を納めたもののその後頻繁にゼーラの街に顔を出し、イリアを求めて来たのだ。
「・・・というわけですの」
イリアが自分の事を話し終えた。
当時の事を思い出したのか、手が震えている。
ルークは自身の白い髪を右手で掻きながら、
(必要なことだとはいえ、失敗した)
と後悔した。
「話しづらいことを話して貰い、すみません」
素直に謝るルーク。
「・・・いいえ、話しておくべきことでしたから」
イリアがそう言うが明らかに虚勢をはっている。
「ゆ、許せない!自分のものにならないからって誘拐までするなんて!!ルーク!成敗しましょう!!!」
そこで、じっと聞いていたミリーナが怒りをあらわにする。
「いや・・・まだそいつが黒幕だと決まったわけじゃないからな?」
ミリーナの剣幕に、ルークも珍しく歯切れ悪く答える。
(ミリーナにしては珍しいな。何か似た経験でもあるのかもな)
明らかに感情移入しているミリーナにルークは冷静に分析する。
「なら、はっきりさせに行きましょうよ!」
バァン
そう言うとミリーナがテーブルを叩いて立ち上がったのだった。
第二の王都と呼ばれるゼーラの街の領主であるケビン・ゼーラ・ハミリアンの一人娘である。
イリアは子供の時から大層可愛く、両親にとても大切に育てられていた。
それに加えて一人娘ということもあり、大事な娘を何があるかよく分からない家の外に出すことを極力嫌がった両親は教養などは全て家庭教師を雇って済ませ、領主の館から外に出ることがないようにしていた。
幼い時からそういう暮らしをしていたイリアは特段おかしなことだとも思うこともなく、普通に育っていった。
やがて、両親の理想通りに育ったイリアはとても綺麗な女性となり領主の館に訪れる客の話題の的になった。
その話題が街中、ひいては他の領地にまで轟くのは自然な流れであった。
ある時、そのことを耳にした国王が是非とも社交パーティーに参加させよとケビンに伝えた。
流石に国王の言葉に抗うことも出来ず、イリアは始めて領主の舘から離れ、王城で催されたパーティーに参加した。
イリアにとっては王城へ向かう途中の風景、良い匂いのする食べ物屋、自分の家では見たことのない数の老若男女の人々を見て『外の世界』に憧れを強く持つことになる。
パーティーに参加したイリアは噂以上の綺麗な女性だと国王や王族始め、貴族たちの注目の的となった。
だが、イリアにとっても不幸なことにそこに参加していた他の街の領主に見初められ執拗に求愛されたのだ。
その相手がイリアとそこまで歳も離れておらず、未婚の人なら一考の余地はあったかもしれないが、イリアと2周り以上離れている上に、妾としてと言われたため始末に置けない。
その自体に気づいたケビンが事を納めたもののその後頻繁にゼーラの街に顔を出し、イリアを求めて来たのだ。
「・・・というわけですの」
イリアが自分の事を話し終えた。
当時の事を思い出したのか、手が震えている。
ルークは自身の白い髪を右手で掻きながら、
(必要なことだとはいえ、失敗した)
と後悔した。
「話しづらいことを話して貰い、すみません」
素直に謝るルーク。
「・・・いいえ、話しておくべきことでしたから」
イリアがそう言うが明らかに虚勢をはっている。
「ゆ、許せない!自分のものにならないからって誘拐までするなんて!!ルーク!成敗しましょう!!!」
そこで、じっと聞いていたミリーナが怒りをあらわにする。
「いや・・・まだそいつが黒幕だと決まったわけじゃないからな?」
ミリーナの剣幕に、ルークも珍しく歯切れ悪く答える。
(ミリーナにしては珍しいな。何か似た経験でもあるのかもな)
明らかに感情移入しているミリーナにルークは冷静に分析する。
「なら、はっきりさせに行きましょうよ!」
バァン
そう言うとミリーナがテーブルを叩いて立ち上がったのだった。
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