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第91話 護衛③

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「さあ、遠慮なくお入りになってくださいな」

領主の館に一人残ったあたしはご機嫌なイリア様に連れられ部屋に案内された。

「わぁ、素敵なお部屋ですね!」

これぞまさに貴族!といった感じの豪華な部屋にあたしは思わず声を上げた。

「あら、ありがとうミリーナさん!ですが、あなたのお部屋も似たような感じなのではなくて?インスパイア家といえば貴族でも有名な家系ですもの」

「いえ、そのようなことは無いです。少なくとも私の部屋は私がそういうのに疎くて殺風景でした」

あたしも一応貴族ではあるけど、あんまり部屋に物を置くとか興味なかったので殺風景なのよね。

お父様もお母様も妹もあたし程ではないが、そこまで豪華なものを部屋に置く感じではない。

流石に商談で使う部屋は相手に舐められないように整えてはいたけど。

というか、イリア様もあたしがインスパイア家の人間だということを認識してらしたんだ。

名前は名乗ったが家の事は全く触れていなかったので気づいていないかと思ってたわ。

「あら、そうなんですの?意外ですわね」

イリア様が不思議そうにおっしゃる。

「あはははは、よく言われます」

あたしは笑いながら答える。

そうなのだ。騎士学校に通っていた時も商人として有名な家だったので似たようなことはよく言われたのだ。

幸いにもいじめとかは無かったが、自分とは関係のないところで一目を置かれてしまっていたので慣れるまで大変だったのを覚えている。

「さて、お茶でもお飲みになってお話でもしましょうか」

イリア様があたしが余り触れてほしく無いことを感じ取ったのか話題を変えてくださる。

そういうとイリア様がメイドを呼び、お茶とお茶うけをお願いした。

「ありがとうございます。はい、私などでよろしければ是非」

イリア様のご配慮に感謝の言葉を述べるあたし。

できることなら少し仮眠を取りたかったけど、護衛なので仕方がないと割り切る。

ゼーラの街に来るまでの間は野宿だったし、久々の宿でも今回の件で少ししか寝れなかったので眠いと感じてしまうのは仕方がないわよね。

「ミリーナさんはどのようにして勲章を受けるに至ったのですか?」

イリア様が一番話題にしやすい内容をお聞きになった。

「はい。あれは騎士学校の授業の一環で先輩騎士とヤムイ村に行く時のことでした・・・」

流石に王城での話は出来ないが、ヤムイ村の話ならしても良いだろう。

あたしはまだ1ヶ月位しか経っていないはずなのにもう随分と前のことに感じながらイリア様にその時の話をし始めたのだった。
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