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第84話 事情②

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「こっ、降参だ!悪かった!!勘弁してくれ!」

先程までの威勢はどこへ行ったのか。

粋がっていた男は綺麗な土下座を披露する。

「・・・何故襲ってきた?」

ルークが相手が恐怖を感じるようにどすの聞いた声で問いただす。

「ひ!」

男は体中から冷や汗を出し怯えた声を上げる。

「早く言え」

ルークがこれ見よがしに剣を振り上げる。

「ちょっ・・・」

イリアがルークを止めようと声を出そうとしたがミリーナがそれを止めイリアに向かって首を振る。

「た、頼まれたんだ!あんたたちを襲えって!女たちは好きにして良いって言われて」

「ほう。それで誰にだ?」

「し、知らねぇ。顔を隠していたからな、前金で金は貰ったし、俺たちの世界ではわざわざ詮索しねぇから!!」

「そうか」

ルークがそう言うと剣を振り下ろした。

ドン

男に当たる瞬間に剣の腹に切り替え、男の意識が遠のく。

「な、何も殺さなくてもよろしいのでは!?」

イリアがルークを責めるがまたもやミリーナがイリアを止める。

「イリア様、死んでませんよ」

「え・・・でも、今剣を振り下ろしたじゃありませんか?」

「ルークは当たる瞬間に剣の腹に切り替えて相手を叩いただけです」

「うそ・・・本当ですわ。。。信じられない」

イリアが倒れている男の状態を確認し、驚きの声を上げる。

「見えたのか?」

ルークがミリーナに聞くがミリーナは首を振り、

「はっきりとは見えなかったわ。でも、それだけで充分。わざわざルークが斬るとは思えなかったから」

「・・・そうか」

(朧げには見えたんだな)

ルークは剣を鞘に納めながらそう呟く。

「さて、ミリーナ」

「はい!」

「こいつらをこのままにしてはおけない。この街の騎士を呼んでくれないか?」

「分かったわ。ちょっと行ってくるわね」

「まて」

ミリーナが走り出そうとするのをルークが止める。

「え?どうして?騎士を呼びに行くのでしょ?」

ミリーナは何故止められたか分からない。

「俺も詳しくは知らないが今朝見せていた紋章は呼び笛にもなっているのではないか?」

「え?」

ルークに言われて慌てて紋章を確認するミリーナ。

「本当だわ」

ミリーナが知らないのは無理もない。騎士学校でそのことを習うのは卒業年のときであるし、騎士団員も基本的にはそれを認識しているものと考えて接するからだ。

まさにミリーナのような特例の場合には伝えられない盲点である。

ピィィィィィ!

早速ミリーナが呼び笛を鳴らすと数分後にはこの街の騎士が駆けつけてきたのであった。
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