戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石

文字の大きさ
上 下
51 / 354

第51話 勲章授与式

しおりを挟む
「さて・・・」

あたしは、あり得ないくらいふかふかなソファに座り体が沈むのを感じながら考えをまとめる。

(普段より少ない参列者。王城の隔離。武器の回収。校長先生の言葉を聞いていなかったら何の疑問にも思わなかったはず。何かあるとすればこれから始まる授与式に違いない)

あたしは控え室の中を見回す。

(見張られているわね)

上手く気配を隠しているが誰かがこの部屋を見張っているのを感じる。

疑念が段々と深まっていく。

(どうしたらいいの?・・・く、武器になりそうなものもない。。。)

有事に備えておこうにも、打つ手がないまま時間ばかりが過ぎていく。

コンコンコン

そうしている間に扉が叩かれる音が響く、

「ミリーナ様、勲章授与式の準備が整いましたのでこちらにいらっしゃってください」

とうとう授与式が始まる。

(できるだけのことをするしかない。何があっても対応できるように気持ちを高めるんだ)

あたしは自分に言い聞かせる。

腹をくくるしかない。

あたしは迎えにきた騎士に連れられて勲章授与式の場・・・謁見の間へと向かうのだった。





「どうぞ、こちらになります」

案内役の騎士に言われて謁見の間へと入場すると、

パチパチパチパチ!!!

参列者全員からの拍手で迎えられた。

あたしはその中をゆっくり歩きながら冷静に観察する。

まず、一番近くにはヤムイ村で一緒に戦ったヤマトさんとカミヤさんの2人の先輩騎士は頭を垂れて控えている。

そして、玉座に座る国王・・・エドガード・マイヤー・セインツ様、隣に控える1人の色付きの騎士・・・近衛騎士所属第一部隊隊長。散見される参列者とその周りに控える他の4人の色付きの騎士。そして、帯剣した数十人の近衛騎士。

何故かメリッサ様の姿が見えない。この時点であたしは確信した。謀反だ。

あたしは、このことをどう伝えるか先輩騎士達の側に歩きながらの短時間で頭をフル稼働して必死に考える。

(ええい、どうとでもなれ)

あたしは控える場所にたどり着く瞬間に声を張り上げた。

「国王様!!お逃げください!!!」

あたしの言葉に色付きの騎士が反応し始めるが、それよりも早く、

「「「がぁ」」」

完全に虚を突かれた色付きの騎士の内4人と参列者たちの何人かが血を流して倒れる。数人の近衛騎士の剣が血で濡れる。

「きゃぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁ」

無事な参列者が周りの状況を見て、悲鳴を上げながら近衛騎士のいない部屋の角に向かって走り出す。

騒然となる謁見の間、

「!?何事だ!!」

国王様が突然の事態に玉座から立上り声を上げる。

すかさず、国王様を守るように赤色の騎士・・・レギアス・バドラー隊長が前に立つ。

それを見たあたしはすぐさま近くにいた近衛騎士を蹴り飛ばし、剣を奪うと参列者が逃げた方に向かい、守るように剣を構えた。

「大変なことが起きちまったな」

「まったくだ、君といると波乱が起きるな」

聞きなれた声がしてので脇を見るとヤマトさんとカミヤさんがあたしと同じく剣を奪った状態で参列者たちを守るように立ち、相手を刺激しないように小声で軽口を叩く。

「私は関係ないですよ」

一人で何とかしないといけないと思っていたので、先輩騎士達の存在はありがたく、思わずあたしも軽口を返す。

「はーはっはっは」

そうして一種の膠着状態になったときに一人の男が高笑いを上げたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...