39 / 354
第39話 国重剣
しおりを挟む
「そうか、お主がルーク・スターリンか」
「俺をご存知で?」
ゲインの言葉にルークが聞き返す。
一般人にはルークの通り名は伝わっていても名前は伝わっていないはずだからだ。
「もちろんだ。『剣鬼』ルークよ、お主に直接会って礼がしたいと以前から思っておった。本当にありがとう」
そういうとゲインがルークに向かって深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。礼を言うのは俺の方です。あなたのお蔭で仲間を国を守ることができました。ありがとうございました」
今度は逆にルークが頭を下げる。
「・・・そう思ってくれて嬉しいわい。もし時間があればこの年寄りの話を聞いてくれないか?」
「ええ、もちろんです」
「ありがとう。立ち話もなんじゃし、中に入ってくれ。茶でも出そう」
「分かりました。御言葉に甘えさせて貰います」
ルークの話を聞いたゲインはさっさと店の入口のプレートを閉店中に変え、鍵をしめる。
そしてルークとともに中に入り、ゲインが話した内容は以下のようなことだった。
三十年前、ゲインが一流の鍛冶師と認められてしばらく経っていた頃、国より最高の一振りを納めるという大変名誉である勅命があった。
当時のゲインは悩みに悩んだ。
剣として最も必要な事は何なのか。
何でも全てを切断するとてつもない切れ味の剣か?
剣という常識を超えた間合いに左右されない広範囲でも攻撃できる剣か?
使い手の動きを制限しない羽毛のような軽い剣か?
ゲインは試行錯誤を繰り返し様々な剣を作成した。
だがどれもしっくり来なかった。
その時初めて気がついた。あらゆる剣を作ってきたゲインだったが、自分が本当に作りたい剣は何なのかを忘れていたのだった。
そんなときだった。事件が起きたのは。
自分が今持ちうる技術の粋を集めて作成した何者をも
切れる剣を持った親友の騎士が戦いの最中で剣が折れてしまい、守ろうとしたものも含めて全員死んでしまったのだ。
ゲインは自らを責めた。
どうしてあんな剣を作ってしまったのだろうと。
そしてようやく気づいた。
自分が本当に作れたかった件はどんなものでも斬る最強の剣ではなく、どんなときでも折れず、自分だけではなく味方を守り続けることができる最硬の剣だと。
それからあらゆる技法を学び直し、新しい技法も取り入れできた剣が国の重さを背負うに足る剣という意味を込め『国重剣』と名付たけのだ。
「しかし、最硬の剣は最重の剣でもあった。当時の国王様は儂の思想を気に入ってくださり我が国を象徴する剣として受け取ってくださったが、使い手のいない剣などただの飾りだ。十数年間使われることも無くただ眠っていた剣のことを考えると儂はずっと苦しかった。自分の考えは間違っていたのかと。そんなときだ、国重剣を使う人間が現れたのは。そうだ、お主のことだルーク。お主は、儂の思想をそのまま体現してくれたばかりだけではなく、それ以上の成果を上げ続けてくれた。最終的には、世界最大強国のジークムント王国をして『絶対に手を出してはならぬ敵』と言わしめ、10年の不可侵条約を結ぶというとんでもない偉業を成し遂げてくれた。正直儂は魂が震えた。そして、お主に直接礼を言いたいとずっと思っておった。本当にありがとう、ルーク」
ゲインは最後にもう一度深く頭を下げルークに礼を言ったのだった。
「俺をご存知で?」
ゲインの言葉にルークが聞き返す。
一般人にはルークの通り名は伝わっていても名前は伝わっていないはずだからだ。
「もちろんだ。『剣鬼』ルークよ、お主に直接会って礼がしたいと以前から思っておった。本当にありがとう」
そういうとゲインがルークに向かって深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。礼を言うのは俺の方です。あなたのお蔭で仲間を国を守ることができました。ありがとうございました」
今度は逆にルークが頭を下げる。
「・・・そう思ってくれて嬉しいわい。もし時間があればこの年寄りの話を聞いてくれないか?」
「ええ、もちろんです」
「ありがとう。立ち話もなんじゃし、中に入ってくれ。茶でも出そう」
「分かりました。御言葉に甘えさせて貰います」
ルークの話を聞いたゲインはさっさと店の入口のプレートを閉店中に変え、鍵をしめる。
そしてルークとともに中に入り、ゲインが話した内容は以下のようなことだった。
三十年前、ゲインが一流の鍛冶師と認められてしばらく経っていた頃、国より最高の一振りを納めるという大変名誉である勅命があった。
当時のゲインは悩みに悩んだ。
剣として最も必要な事は何なのか。
何でも全てを切断するとてつもない切れ味の剣か?
剣という常識を超えた間合いに左右されない広範囲でも攻撃できる剣か?
使い手の動きを制限しない羽毛のような軽い剣か?
ゲインは試行錯誤を繰り返し様々な剣を作成した。
だがどれもしっくり来なかった。
その時初めて気がついた。あらゆる剣を作ってきたゲインだったが、自分が本当に作りたい剣は何なのかを忘れていたのだった。
そんなときだった。事件が起きたのは。
自分が今持ちうる技術の粋を集めて作成した何者をも
切れる剣を持った親友の騎士が戦いの最中で剣が折れてしまい、守ろうとしたものも含めて全員死んでしまったのだ。
ゲインは自らを責めた。
どうしてあんな剣を作ってしまったのだろうと。
そしてようやく気づいた。
自分が本当に作れたかった件はどんなものでも斬る最強の剣ではなく、どんなときでも折れず、自分だけではなく味方を守り続けることができる最硬の剣だと。
それからあらゆる技法を学び直し、新しい技法も取り入れできた剣が国の重さを背負うに足る剣という意味を込め『国重剣』と名付たけのだ。
「しかし、最硬の剣は最重の剣でもあった。当時の国王様は儂の思想を気に入ってくださり我が国を象徴する剣として受け取ってくださったが、使い手のいない剣などただの飾りだ。十数年間使われることも無くただ眠っていた剣のことを考えると儂はずっと苦しかった。自分の考えは間違っていたのかと。そんなときだ、国重剣を使う人間が現れたのは。そうだ、お主のことだルーク。お主は、儂の思想をそのまま体現してくれたばかりだけではなく、それ以上の成果を上げ続けてくれた。最終的には、世界最大強国のジークムント王国をして『絶対に手を出してはならぬ敵』と言わしめ、10年の不可侵条約を結ぶというとんでもない偉業を成し遂げてくれた。正直儂は魂が震えた。そして、お主に直接礼を言いたいとずっと思っておった。本当にありがとう、ルーク」
ゲインは最後にもう一度深く頭を下げルークに礼を言ったのだった。
11
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
スーパー忍者・タカシの大冒険
Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる