戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石

文字の大きさ
上 下
28 / 354

第28話 退院

しおりを挟む
「よし。やっと退院だわ!」

入院してから八日目、漸く退院する日がやってきた。

荷造りも終え、病室に忘れ物がないかを確認していたころちょうどアリスが訪れてくれる。

「ミリーナちゃん、退院おめでとう!」

あたしに会うやいなや祝福の言葉とともに花束を渡してくれた。

流石気遣いのできる親友ね。

「わぁ、綺麗なお花ね!ありがとう!!」

あたしは素直に感謝の気持ちを伝える。

「いえいえ~。さあ、寮に帰りましょ」

そう言ってアリスがあたしの荷物を持ってくれた。

「ありがとう」

あたしたちが通っている王都の騎士学校は全寮制だ。

二人で一部屋を使っており、あたしとアリスは同じ部屋のよしみでもある。

あたし達は退院の手続きを終え、病院の外に出ると、

「わあ、馬車まで用意してくれたんだ」

あたしたちを馬車が待っていた。

「気にしないで!そのくらい朝ごはん前よ」

アリスが胸をはって答える。

そういう仕草をすると普段意識しないようにしている胸の大きさの差が強調されてしまうのでやめて欲しい。

・・・だ、大丈夫。お母様もあたしぐらいの歳のときはまだ今のあたしと同じくらいの大きさだって言ってたし。。。

うん・・・きっと。

「ミリーナ様おはよう御座います」

あたしが現実逃避をしていると馬車の御者席から見事な白髪の男性が降りてきた。

高齢なはずなのだが、背筋はぴんと伸び、全くそうは見えない。

「おはよう御座います。ロイドさん」

彼はアリスの家の執事でもある。

「アリス様、お荷物は私めが」

「ありがとう。ロイド」

ロイドが早速アリスが運んでくれたあたしの荷物を馬車の荷物入れに収納してくれる。

「お二人共どうぞお入りください」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

ロイドさんの言葉にあたしたちは馬車に乗り込んだ。

「では、出発します」

ロイドさんの合図で馬車がゆっくりと、動き出した。





馬車での移動は早く、十数分ほどで騎士学校に到着した。

「ロイドさん、ありがとうございました。アリスもありがとう」

あたしは荷物を受け取り、ロイドさんとアリスにお礼を言う。

「いえいえ、とんでもないことでございます。アリス様、ミリーナ様、私めはここで失礼致します」

「じゃあ、ロイドまたね!」

ロイドさんは優雅な御辞儀をしてから騎士学校から去っていった。

「さて、部屋にいきましょうか?」

「うん!行こう!!ミリーナちゃんがいなかったからずっと寂しかったんだよね」

そんな会話をアリスとしながら騎士学校の守衛さんに会釈して入ると、あたしたち、正確にはあたしを待っていた人物がいた。

「ミリーナ・インスパイア騎士見習、よくぞ戻った!」

「ルイーダ先生!?どうしてここに?」

ルイーダ先生はあたしたちのクラスの担任だ。

思いもかけない急な登場にアリスは呆然としている。

「校長先生がミリーナ・インスパイア騎士見習にお会いしたいとのことで私はその使いだ。病院から戻ったばかりで申し訳ないがついてきて貰えないだろうか?」

「校長先生が!?」

あたしは思いもかけない言葉に驚きを隠すことが出来なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...