上 下
77 / 83

第77話

しおりを挟む
「!?」

何が起きたのかわからず、一瞬思考が止まった。

目の前をゆっくりとレベンが通過する

ドサァ

「へっ・・・平気!?」

レベンが地面に叩きつけられる音を聞いてようやく我に返った。

「・・・ごほっ」

レベンは一度だけ口から血を吐きだし、そのまま動かなくなった。

あたしは駆け寄りたい衝動を必死に押さえ、怪物に背を向けないようにする。

「少し待ってなさい・・・すぐに片をつけるから」

レベンに向かって言いつつ、考える。

一体こいつは何をしたのかしら?いくら油断していたとはいえ、レベンが手傷を負うなんて考えられないわ。

そんなことを考えているうちに今までじっとしていた怪物に変化がおとずれた。

「嘘・・・でしょう」

思わず口から言葉が出ていた。

信じられないことにやっとの思いで斬った腕が、再生したのだ。

ご丁寧に刺まで再生している。

しかもより一層数が増していた。

気になって横を向くと先程斬った腕は普通に地面の上にあった。

・・・気味悪いわね。トカゲの尻尾みたい・・・。

オオオオオ!

突然、完全に身体が再生した怪物が声を上げた。

・・・すごい気迫だわ。

「はぁぁぁぁっ!」

あたしも負けじと声を上げる。

気負ったら、死ぬ。

あたしはかつてなく緊張し、怒っていた。

声を上げたあと、互いに睨み合った

。数秒後、急に怪物が掻き消える。

と、同時に後ろから気配があらわれる。

ワンパターンね。

振り向きざまに剣を一閃させた。

しかし、あたしの攻撃は虚しく空を斬る。

「!?」

根拠はなかったが、とっさに後ろに跳躍した。

ブシュウ

勢い良く血が吹き出る。

左肩をやられた!でも一体どうやって・・・。あたしは愕然とした。

幸い傷はそこまで深くなさそうね。

「・・・通りでレベンが簡単に攻撃を食らうわけだわ」

ポツリと呟く。

(平気か!?)

緊迫した『審査するもの』の“声”。

(平気、傷は浅いわ。それよりもあいつがあたしに何やったのかわかった?)

(ああ。あいつはあの時、二回空間を移動したのだ)

(・・・なるほど。わかったわ、ありがとう)

厄介なことになったわ。

どうやらあの技の一番上手い使い方に気づいちゃったみたいね。

これであいつの攻撃パターンは無限に等しくなっちゃったわね。

しかも、装甲も復活しちゃったし・・・これはマジでやばいかも。

そういえばスターリンの方はどうなのかしら。

そう思い、目をやるとありえない光景が目に入った。

・・・普通に殴りあっているわ。

そうなのだ。

スターリンは怪物の刺のことなど気にせずに打撃を重ねていた。

不思議なことに殴っても殴られていても血が一滴も出ていないのだ。

恐ろしいものを見ちゃった・・・。

首を激しく振り、今見た光景を忘れようとする。

いけない、今はこいつに集中しないと。

怪物は攻撃の段取りを考えているのか、じっとしている。

「レベン!」

「・・・」

急に後ろから声が聞こえた。あの声は。

「リリヤなの!?」

まだじっとしているとはいえ、さすがにこいつに背を向けるわけにもいかず、声だけをあげる。

「ええ、そうよ!」

「助かったわ。緊急事態なの、何も聞かずにレベンを医者の所へ」

「・・・わかったわ」

さすがリリヤ、すぐにあたしの言うことを聞いてくれた。

後ろでリリヤとレベンが遠ざかるのが気配でわかる。

「これで思う存分あんたを倒せるわ。覚悟しなさいよ」

あたしが睨み付けると怪物が2、3歩下がった。

しかし、あたしはかまわず進む。

そうすると

うぉぉぉーん

自分を鼓舞するかのように咆喉し、空間を移動した。

来たわね。突然後ろに気配が出現する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...