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第75話

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「へっ?」

始まりはレベンの間の抜けた声だった。

いきなり怪物が元いた場所から掻き消え、レベンの背後に出現したのだ。

「あぶない!」

あたしの呼び掛けが届いたのか、レベンが振り向かずに身体を横に捻った。

ブシュウ

そんな音が聞こえたような気がした。

レベンの右脇腹から勢いよく血が吹き出したのだ。

「ぐぅっ」

レベンが呻き声を上げながらも、何とかあたしのいる場所まで下がってきた。

「大丈夫!?」

「だ・・・大丈夫だよ。擦っただけだから」

そういってはくるもののレベンの傷口を押さえている手からは血がどんどん滴れている。

「しょうがないわね。あたし一人で何とかしてみせるから、あなたは隅の方で休んでいなさい」

「・・・わかったよ」

ごまかしは無駄と思ったのか渋々といった感じで戦線を離脱した。

「さてと・・・どうするかな」

レベンが下がったのを確認してから、あたしはボソリとつぶやいた。

(気付いたか?マーヘン)

前触れもなく『審査するもの』が話し掛けてきた。

(・・・あの怪物のこと?)

ひょっとしたらと思うことはあったが、確信が持てないので曖昧に尋ねかえす。

(そうだ・・・あの怪物は姿形は違うが昨日おまえが戦った男・・・たしかキート・バグラスといったか・・・と同じ雰囲気を纏っている)

「なんですって!間違いないの!?」

まさか自分の想像が当たっていたとは思いもよらず、思わず声を出して聞き返してしまった。

(間違いない)

『審査するもの』には、はっきりとわかるのだろう。

すんなりと肯定した。

(・・・そう。それで何かあいつらについて他に気付いたこととかない?)

もしかしたら、あたしの知らないことがわかるかもしれないと思い聞いてみたのだが・・・

(いや・・・残念ながらさっぱりわからぬ)

やっぱりそう上手くいくわけないわね・・・

(わかったわ、何とかしてみる)

「ちょっとそこの怪物!」

今の姿形はどうあれ、元が人間なら言葉が通じるはず。

案の定、少しだけではあったが反応があった。

「何が目的かわからないけど、これ以上やるっていうなら倒すわよ!」

殺気を込めて言葉にのせた。

あきらめてくれればいいけど・・・。

「・・・」

怪物は黙して動かない。

と、不意に消えた。

「チィ・・・」

あたしの横に出現した怪物の攻撃を後ろに跳躍して避けた。

「そう、それが答えなのね。仕方ない、あんたを斬る」

あたしは抜き身の剣を真横に持ち、そして目を瞑る。

ブォン

右後方から感じた殺気に対応し、怪物の繰り出す拳をギリギリでかわす。

そのまま右腕の尖った部分の一つを斬り落とした。

怪物は構わず、手を開きあたしを掴もうとしてくる。

「あまいわ!」

うまく剣で受け流し、再び尖った部分を切り落とす。

それから何度か同じ行動を繰り返して少しずつ怪物の刺を減らしていった。
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