いじめ物語 美花学園

よう

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不気味な微笑み

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入学式の日

ちさと『行ってきまーす!』
母『行ってらっしゃい。気をつけてね』
ちさとは鞄を持つと勢いよく家を飛び出した。走って駅まで行って電車で30分。電車から降りるともうそこは別世界だった。ちさとの目に、立ち並ぶ豪邸の奥でもひときわ目立つ1つの学園がうつる。
(あれが...私立美花学園...)
遠くからでもよくわかる豪華さ。ちさとの胸が高鳴った。
(私...こんなすごい学校に通えるんだ...!)
ちさとは足早に学園へ向かった。

ー校門前ー
ちさと『うわあ.......』
ちさとはしばらくきらびやかな校門に目を奪われていた。
宝石のような物が埋め込まれたキラキラしたアーチ型の校門をテレビでしか見たことないような高級車がとぎれることなくくぐっていく。
ゆめ『ちさと!』
いきなり声をかけられ、ビクッとして振り返る。
1台の高級車の窓から見覚えのある女の子が手を振っていた。
彼女の名は金沢ゆめ。ちさととは絶対に縁がないような金持ちだが幼なじみで小中と一緒の学校だったのだ。ちさとにとって唯一無二の親友である。
ちさと『ゆめ!なんでここに?』
ゆめ『私もここに入学したんだっ。ちさともいるなんて超嬉しい!』
ちさと『私もだよっ。よかったぁゆめがいるなんてすごく心強いよ』
ゆめは車から降りるとちさとと手をつないだ。
ゆめ『私高校は決められてたからちさとと一緒の学校には行けないと思ってたんだ。でもちさとがいるってことは、受験トップだったってことだよね!すごいじゃん!』
ちさと『えへへ....この学校憧れてたんだ。』
ゆめ『ほんと、すごいなあ。ちさとは』
ちさと『そんなことないよ』
ゆめ『じゃあ行こっか!』
ゆめはちさとの手を引いて走り出した。

ー昇降口ー
2人が昇降口についた時にはもう人が溢れかえっていた。その中をすり抜け、なんとかクラスを確認する。
だがちさとがクラスを確認し終わる前にゆめが抱きついてきた。
ゆめ『ちさと!やったあ!私達一緒のクラスだよ!』
ちさと『ほんと?!やったね!』
2人は飛び跳ねて喜んだ。
(ゆめと一緒のクラスなら楽しく過ごせそう♪)
ちさとは期待に胸をふくらませていた。

ー教室ー
入学式も終わり、教室に入ると、またもそこはきらびやかな世界だった。女子達はいかにも高価そうなアクセサリーを自慢しあっている。
ちさと『わあ.....』
ゆめ『なんかすごいね...』
そんななか一番キラキラしている美少年がいた。周りを数人の女子に囲まれている。そのなかでも隣にいる同じくらいキラキラした女の子とは一番仲が良さそうだ。恋人のように手をつないでいる。まさにラブラブだ。
女子達『金本さんと神川さんすごくお似合いよねっ』
女子達『ラブラブだし羨ましいー』
周りの女子達はそれを見てきゃあきゃあ騒いでいた。
ゆめ『あっ!あの人神川ゆうすけじゃない?』
ちさと『え?誰?』
ゆめ『えっ!ちさと知らないの?!超有名なアイドルだよっ毎日のようにテレビに出てるじゃんっめっちゃかっこよくない?』
ちさと『うーん...まあまあかなぁ...』
ちさとは申し訳なさそうに言った。
ゆめ『えーっ』
そのまま、2人は教室の後ろの方に行った。
なんだか前の方にいると眩しくて押しつぶされそうだったからだ。
ゆめ『ちさと、5☆(ファイブスター)って知ってる?』
ちさと『5☆?』
ゆめは周りを見渡し声を潜めてちさとに話し始めた。
ゆめ『絶対に逆らっちゃいけない五人よ。お姉ちゃんが言っていたの。リーダーの金本さな、美城れいか、篠崎めい、愛森みう、榊原あこの五人。今までこの五人の気にさわった者が何人いじめられてきたか分からないんだって。5☆を敵に回すと、全校生徒からいじめられるの。そして実はこのクラス、その5☆が全員集まってるの。』
ちさと『なんで皆5☆に従うの?』
ゆめ『あの五人はね、学校への寄付金がトップクラスなの。教師も誰1人逆らわない。皆自分がいじめられるのが怖いから従うってこと。でもね、お姉ちゃんが言うには...』
ゆめはちさとの耳元でこそっと囁く。
ゆめ『リーダーのさなと付き合っている神川ゆうすけが実は本当のリーダーなんじゃないかって。しかも神川ゆうすけは寄付金がトップなの。』
ちさと『ええっ』
ゆめ『だからこの6人には要注意!逆に言ったらこの6人にさえ気をつければ大丈夫だよっ』
ゆめは親指をぐっと立てた。
ちさと『分かった』
(絶対に、この6人とは関わらないようにしよう)
ちさとはそう、深く心に決めた。
だがそんな二人の様子を眺めている者がいた。
ゆうすけ『ちさとちゃん...か。あのこにしよーっと☆』
ゆうすけが小声でそう呟き、小さく微笑んだ事に誰も気づかなかった。

ー放課後の教室ー
ちさとは忘れ物をして、走って教室に戻ってきていた。
ちさと『はあ...はあ...どこ?あ、あった!』
(何でこんな所に...)
その時、突然肩を誰かに触られた。
ちさと『きゃあっ』
思わず振り向くとそこにいたのは予想だにしなかった人物だった。
神川ゆうすけがニコニコしながら立っていたのである。
ゆうすけ『ちさと...ちゃん?』
ちさと『は、はい...そうです...けど...』
ちさとがあとずさろうとすると、ゆうすけが突然ちさとの手を引っ張った。
ちさとはその力でゆうすけに引き寄せられる。しかもそのままよろけて、あろうことかゆうすけに抱きついてしまったのだ。
ちさと『あっご、ごめんなさっ.......っ!!』
慌てて謝ろうとしたその瞬間...
(な、な、なんで!うそっ)
ちさとが驚くのも無理はない。なんと、ゆうすけがちさとにKissしたのだ。
驚きのあまり、その直後、廊下を走り去ってゆく人がいたのにちさとは気づきさえもしなかった。
ちさと『な、何で...』
ゆうすけ『初Kissだった?ふふっ♪...じゃあね』
ちさとは真っ赤になってその場にへなへなと座り込んだ。
ゆうすけはその様子を見てニコッと微笑み、夕日に照らされた教室を去っていった。その微笑みは普段とは違って、とても不気味に見えた...
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