いじめ物語 美花学園

よう

文字の大きさ
上 下
2 / 19

不気味な微笑み

しおりを挟む
入学式の日

ちさと『行ってきまーす!』
母『行ってらっしゃい。気をつけてね』
ちさとは鞄を持つと勢いよく家を飛び出した。走って駅まで行って電車で30分。電車から降りるともうそこは別世界だった。ちさとの目に、立ち並ぶ豪邸の奥でもひときわ目立つ1つの学園がうつる。
(あれが...私立美花学園...)
遠くからでもよくわかる豪華さ。ちさとの胸が高鳴った。
(私...こんなすごい学校に通えるんだ...!)
ちさとは足早に学園へ向かった。

ー校門前ー
ちさと『うわあ.......』
ちさとはしばらくきらびやかな校門に目を奪われていた。
宝石のような物が埋め込まれたキラキラしたアーチ型の校門をテレビでしか見たことないような高級車がとぎれることなくくぐっていく。
ゆめ『ちさと!』
いきなり声をかけられ、ビクッとして振り返る。
1台の高級車の窓から見覚えのある女の子が手を振っていた。
彼女の名は金沢ゆめ。ちさととは絶対に縁がないような金持ちだが幼なじみで小中と一緒の学校だったのだ。ちさとにとって唯一無二の親友である。
ちさと『ゆめ!なんでここに?』
ゆめ『私もここに入学したんだっ。ちさともいるなんて超嬉しい!』
ちさと『私もだよっ。よかったぁゆめがいるなんてすごく心強いよ』
ゆめは車から降りるとちさとと手をつないだ。
ゆめ『私高校は決められてたからちさとと一緒の学校には行けないと思ってたんだ。でもちさとがいるってことは、受験トップだったってことだよね!すごいじゃん!』
ちさと『えへへ....この学校憧れてたんだ。』
ゆめ『ほんと、すごいなあ。ちさとは』
ちさと『そんなことないよ』
ゆめ『じゃあ行こっか!』
ゆめはちさとの手を引いて走り出した。

ー昇降口ー
2人が昇降口についた時にはもう人が溢れかえっていた。その中をすり抜け、なんとかクラスを確認する。
だがちさとがクラスを確認し終わる前にゆめが抱きついてきた。
ゆめ『ちさと!やったあ!私達一緒のクラスだよ!』
ちさと『ほんと?!やったね!』
2人は飛び跳ねて喜んだ。
(ゆめと一緒のクラスなら楽しく過ごせそう♪)
ちさとは期待に胸をふくらませていた。

ー教室ー
入学式も終わり、教室に入ると、またもそこはきらびやかな世界だった。女子達はいかにも高価そうなアクセサリーを自慢しあっている。
ちさと『わあ.....』
ゆめ『なんかすごいね...』
そんななか一番キラキラしている美少年がいた。周りを数人の女子に囲まれている。そのなかでも隣にいる同じくらいキラキラした女の子とは一番仲が良さそうだ。恋人のように手をつないでいる。まさにラブラブだ。
女子達『金本さんと神川さんすごくお似合いよねっ』
女子達『ラブラブだし羨ましいー』
周りの女子達はそれを見てきゃあきゃあ騒いでいた。
ゆめ『あっ!あの人神川ゆうすけじゃない?』
ちさと『え?誰?』
ゆめ『えっ!ちさと知らないの?!超有名なアイドルだよっ毎日のようにテレビに出てるじゃんっめっちゃかっこよくない?』
ちさと『うーん...まあまあかなぁ...』
ちさとは申し訳なさそうに言った。
ゆめ『えーっ』
そのまま、2人は教室の後ろの方に行った。
なんだか前の方にいると眩しくて押しつぶされそうだったからだ。
ゆめ『ちさと、5☆(ファイブスター)って知ってる?』
ちさと『5☆?』
ゆめは周りを見渡し声を潜めてちさとに話し始めた。
ゆめ『絶対に逆らっちゃいけない五人よ。お姉ちゃんが言っていたの。リーダーの金本さな、美城れいか、篠崎めい、愛森みう、榊原あこの五人。今までこの五人の気にさわった者が何人いじめられてきたか分からないんだって。5☆を敵に回すと、全校生徒からいじめられるの。そして実はこのクラス、その5☆が全員集まってるの。』
ちさと『なんで皆5☆に従うの?』
ゆめ『あの五人はね、学校への寄付金がトップクラスなの。教師も誰1人逆らわない。皆自分がいじめられるのが怖いから従うってこと。でもね、お姉ちゃんが言うには...』
ゆめはちさとの耳元でこそっと囁く。
ゆめ『リーダーのさなと付き合っている神川ゆうすけが実は本当のリーダーなんじゃないかって。しかも神川ゆうすけは寄付金がトップなの。』
ちさと『ええっ』
ゆめ『だからこの6人には要注意!逆に言ったらこの6人にさえ気をつければ大丈夫だよっ』
ゆめは親指をぐっと立てた。
ちさと『分かった』
(絶対に、この6人とは関わらないようにしよう)
ちさとはそう、深く心に決めた。
だがそんな二人の様子を眺めている者がいた。
ゆうすけ『ちさとちゃん...か。あのこにしよーっと☆』
ゆうすけが小声でそう呟き、小さく微笑んだ事に誰も気づかなかった。

ー放課後の教室ー
ちさとは忘れ物をして、走って教室に戻ってきていた。
ちさと『はあ...はあ...どこ?あ、あった!』
(何でこんな所に...)
その時、突然肩を誰かに触られた。
ちさと『きゃあっ』
思わず振り向くとそこにいたのは予想だにしなかった人物だった。
神川ゆうすけがニコニコしながら立っていたのである。
ゆうすけ『ちさと...ちゃん?』
ちさと『は、はい...そうです...けど...』
ちさとがあとずさろうとすると、ゆうすけが突然ちさとの手を引っ張った。
ちさとはその力でゆうすけに引き寄せられる。しかもそのままよろけて、あろうことかゆうすけに抱きついてしまったのだ。
ちさと『あっご、ごめんなさっ.......っ!!』
慌てて謝ろうとしたその瞬間...
(な、な、なんで!うそっ)
ちさとが驚くのも無理はない。なんと、ゆうすけがちさとにKissしたのだ。
驚きのあまり、その直後、廊下を走り去ってゆく人がいたのにちさとは気づきさえもしなかった。
ちさと『な、何で...』
ゆうすけ『初Kissだった?ふふっ♪...じゃあね』
ちさとは真っ赤になってその場にへなへなと座り込んだ。
ゆうすけはその様子を見てニコッと微笑み、夕日に照らされた教室を去っていった。その微笑みは普段とは違って、とても不気味に見えた...
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

先生と私

伊原てん
青春
掌編小説(約1200文字)。とある書道部でのお話。

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

切ない片想い

くみ
青春
小・中学校時代、陰口など精神的につらいいじめを体験した主人公マリ。 そんな状況から逃れるために嫌いな勉強と向き合い、家から遠くそして、中堅校の上位層に位置する高校に晴れて入学。 知り合いが極小数しかいないことを機に高校デビューを決意。 友達といえる存在が出来たこと、楽しい学校生活を送れていることに感動、感激する日々を送る中、ついに気になる人が現れる。 好きの気持ちがまだよくわからないマリだったが… 切ない気持ち溢れる作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...