甘いのどっち?

宇井

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プティングぷるぷる

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 僕はどんな顔を見せればいいのかって、もじもじと戻ったのに、マイカは部屋で涼しい顔をして本を読んでいた。
 でもトイレであった事は現実だし、またあんな事されたらトラウマになっちゃうだろうから、ヒューゴさんに緩衝になってもらって、マイカにはその後のトイレの同伴を遠慮してもらった。
 それでもやっぱり何もでない。
 一日の終わりを迎えても何も出ない。

 犬も猫も鳥も、きっと何も考えずにやっているに違いないし、前世の僕だってごく当たり前にしていたはずだ。
 今世では食事がマイカに会うまで未経験で、排泄だって未経験。トイレ一つにも鍛練が必要なのかって思ったけど、僕が最後に出した結論は一つ。
 魔獣の僕は人型でも排泄しない。だ。

 前世の僕だったら大歓迎だった機能だな。手術前の浣腸と下剤のプレイは強烈で、一人きりで悶えていてもつまらなかったんだ………って、下ネタばっかり思い出しているし。本当、どうかしてる。

 最初に感じたちんこむずむずは、僕の魂との調和がずれて不調を起こしてたのだろう。問題は至極単純だったのだ。そして齟齬を起こした場所がなぜだかそこで、事が複雑になったんだ。

「汗や涙は出るんだ。怪我したら血もでると思う」
「先走りの液もだ」
「……お願いだからマイカ……もう勘弁して」

 ヒューゴさんもいるのにそれは言わないで。
 ドアの近くで控えているヒューゴさんとは距離があるけれど、声はやっぱり聞こえてるはず。

「きっとノアの体はエネルギーを無駄なく吸収して使い切るんだろう」
「エコって事だね。えっと、つまり燃費がいい。あ、これも通じないか……」
「ノア。ゆっくり慌てなくていいから、順に教えて、ね?」
 
  僕の事を知りたいと、マイカは正面から見つめてくる。長い前髪の間から見える青が綺麗で心臓がぎゅってなった。

 

 契約から四日が経過していた。
 でも洋服だけはどれだけ時間がたとうが慣れない。
 今まで何も身に着けていなかったから余計だ。体を締め付けて苦しいのに、人前に出る時も一人の時もそれを脱いではいけないと言いつけられて、ちょっとブルー。いや人としては当たり前の事なんだけど。
 前世の自分はなぜ疑問に思わずこんな窮屈な思いをしていたのか不思議。
 ボタンは一番上まできちんととめる、サスペンダーを外してブラブラさせない、下着をはく靴下を履く。どれも面倒くさい。
 それから解放されるのは、鳥型に戻る時、お風呂に入る時と眠る時だけ。今は裸族が一番だと胸を張って言える。

 人間っていうのは、鳥型だった僕にとっては何事も手間がかかるように感じる。でも鳥の時には感じたことのない空腹感っていうのを、僕は少し楽しんでいた。
 足蹴にしていたスープだって、人型を取った僕にとっては、とっても心を惹きつけられる食べ物だった。
 野菜はマズイ。でもスープになると美味い。肉も美味しいけれど付け合わせは皿の隅に寄せる。デザートは一番の好物で、別腹でおかわり。

 食べて、寝て、たまに空を飛んで、遊んで。相変わらず僕の生活はそれで全部説明できる。僕は子供に近いからそれでいいんだって言うマイカの言葉に甘えている。
 とにかくとっても優しい。
 初日のトイレは衝撃だったけど、あれ以来いじめられる事はなかった。でも思い出すと瞼が下がって来て、顎があがって息が荒くなって、あそこがじんじんしちゃう事は内緒。
 やっぱり僕の体も精神も流されやすくて、正真正銘、発展途上ってことなんだろう。

 僕用の個室をマイカの部屋の隣に与えられたのは今日の朝の事。マイカの部屋の方が大きくて、入っているベッドも大きいけれど、僕の部屋はマイカの部屋のミニチュアみたいな感じで、家具も置いてある位置も同じ。お揃いみたいで楽しい。
 初日からマイカのベッドで一緒に眠っていたから、今晩から一人になるものだと思い込んでいたのに、これからも一緒に寝ようと誘ってくれていた。きっと何に対しても不慣れな僕を気遣っての事だろうと思う。
 
 夕食後、満腹になった僕の瞼はどうしても重くなる。
 それを見越したヒューゴさんには食事後すぐにお風呂に入るよう勧められていた。パジャマを着て、乾いていない髪のままでマイカの部屋に移動する。
 
「いいですか、嫌だと感じる事があったら例え相手がマイカ様でも、ノア様には断る権利があるのですよ」

 ヒューゴさんは初日から何度も僕に同じ言葉を掛け、窮屈で開けてあったパジャマの一番上のボタンをきっちり閉める。
 よほど僕の足下がおぼつかなかったのか、早々にベッドへと追い立てられて、素直に眠る事にした。
 マイカはまだ戻っていないから顔を見られていないけれど、さっきのデザートのプリンが滑らかで最高過ぎて、今日をいう日に思い残す事はないのだ。

 マイカのベッドは大きくて、ふかふかで、とってもいい匂いがする。
 布団に頭から潜り込んで全身を隠し、眠りに片足を突っ込んだ僕は一旦は着たパンジャマを脱いでは、隙間から床に落としていく。ここは人のベッドだってわかっているけれど、頭の命令を体がどうしても聞いてくれない。
 僕は丸く身を縮めて、優しい夢を見る……



「ノア……ノア……」
 マイカの声が耳に熱い。近いよ。

「ノア……名前呼んで……」
「うん、と?……ノア……?」
「違うよ。私の名前を呼んで」

 私のだよと、クスクスと笑う声は閉ざされた布団の中にだけ籠る。
 僕の名前はノア、で、その名前をくれたのは、優しい人。

「そっか……マイカ。マイカだ……」
「そう。いい子だねノアは」

 髪の中に埋まっていたマイカの手が輪郭を辿るように下へ下へと滑り降りる。
 手を繋いで眠るだけだった昨日とは、少し、違う……
 身体の真ん中、急所をぎゅっと包まれても、まだ夢と行ったり来たりしている僕は怖くなかった。

「まいか……」

 ふわふわして、気持ちいいよ。
 そこ、気持いい。
 ゆっくりゆっくり身体の真ん中から熱くなって、どろどろに溶けだしそう。これって夢?

 うっ……
 夢じゃない、みたい。
 浅いところで漂っていたせいか、覚醒は早かった。
 布団の中の闇。気が付いたらマイカは上にて見下ろす格好にいる。

 慣れていない場所に侵入してくる異物感。僕がビクッとする度に、慰めるように前を上下にしごいてきて、ちょっとずつ先を目指して進んでくる。それがどれだけ奥まで入って来るのかわからなくて、少し怖くて、マイカに抱き付いていてしまう。
 ぎゅってしてから気付いたけど、マイカも裸だ。
 素肌同士が触れ合っただけなのに、僕の体はもう一時も離れたくないって言いだした。
 
「大丈夫だよ、まだ馴らしているだけだ。力を抜いて。まだ一本、途中までしか入ってない。こうやって少しずつ受け入れる準備を進めていくんだよ」

 布団の中は真っ暗で、マイカの顔がどんなだかわからない。けれど、ちょっとだけ笑っているんじゃないかって気がした。

 一本?……ってのは、まだ指が一本って事だ。
 そうは言われても力を抜くのが難しい事は、初日のトイレ騒動で実感している。自覚はないけど、いくら元気な前を触ってもらっても、後ろはがちがちみたい。

 諦めたのだろうか、奥へと前進しか目指していなかった指が、少しだけ後退して蕾の入り口部分だけを往復する。それでも僕の緊張は解けない。前は気持ちいいのに、後ろの引き攣れた感覚がそれを邪魔して帳消しにしてしまう。

「僕、後ろはだめみたい……」
「しょうがないな。でも、次は止めないからね」

 前だけ可愛がってって僕の願いが通じて、僕の後ろから圧迫感が消えた。ようやく体の力が抜ける。
 脱力して小さく息を吐いてしまった時だった。思いもせず、唇に感触があった。

 一瞬で終わってしまった柔らかさ。
 これって何て言うんだっけ。
 もう一度触れて来て、次はチロチロと唇を舐める感触。
 知っている、これは口付け、これはキス。初めてのキス、ファーストキスだ。

「……本当は、初めて繋がる時にしたかったけど……しょうがない。ノアが、かわいすぎるから……」
 
 耳を甘噛みしながら囁く。そして頬を伝い、やっと唇に戻って来た。
 僕も真似をして、マイカの下唇を食んで舌でちゅうちゅう吸った。飴を舐める時みたいに転がしてみる。

 ふうっ……

 マイカの我慢できずに思わず出たって感じの吐息に僕はいい気になる。
 ぺろぺろ。
 味はないのに柔らかくて美味しくて、何かこれ癖になりそう。キスってこんなに美味しいんだ。
 舌で包んで、つついて、吸って……
 零れるマイカの吐息に僕まで蕩けそうになる。

 僕に塗り込められていたぬるぬるが、マイカの肌の上で滑って、はちきれそうな場所同士がぶつかる。マイカの物は僕より大きくて固い。目で確認できない分だけ、僕の肌がそれを感じ取ろうと敏感になる。
 僕たちのが今、くっ付いてる。
 粘度のある液体の正体は、ただの香油だけじゃなくて、僕自身の物も混じっている。それがマイカに触れるなんて、頭が沸騰しそう。
 恥ずかしいのに、体は勝手に快感を拾おうと腰を揺らす。
 
「ノア、早く大人になって、そうしたら、きちんと最後まで……」

 ちゃんと……僕にでもできるのかな。
 切れても壊れてもいいから誰かに挿入して奥まで突いて欲しいって、そんな憧れを持っていた前世の自分は馬鹿だと思ってた。でも今ならそれを純粋って言い換えたい。
 だって現実は指の先っちょだけで、あんなに痛い。お尻で気持ち良くなるなんてとても想像できない。

 だけど、本当はもっと欲しい。欲しいよ。マイカと行けるもっと先があるのなら一緒に見てみたい。
 キスだけでこんなに頭が空っぽになってしまうなら、その先には一体なにがあるんだろうって。

「ああ、ノア……!」

 マイカが僕の腰をぐっと抱いて、ぐるんぐるんと、お腹の上に円を描くように腰を回し始める。
 そんな事されたら、もうだめだよ。
 僕は信じられないスピードで絶頂を迎えて、その急激な高まりに上げそうになっていた声は喉で止まってのけ反っていた。僕に遅れてマイカも達したみたいで、僕の上で弛緩している。
 僕の体はまだ痙攣しているのに、マイカは僕らの白濁を混ぜ合うみたいに腰を擦り付けた。だから終わっているというのに、甘い息がとまらない。

「んっ……はぁ……」

 マイカは僕の息を逃す気がないのか、声が出るタイミングで唇を重ねてくる。
 徐々に火照りが落ち着いてきて、マイカを通り越した向こうへ行ってしまっていた視線が、目の前に戻って来た。
 
 僕ちょっと飛んでたかも。
 射精の解放感のあとは、全身がだるい。
 でもマイカにずっと抱いていて欲しくて、それを口にするかわりに、唇をもっとって強請った。
 僕はマイカの下唇をはむはむしながら、徐々にまどろみ始める。

 外は寒い冬の夜、灯りを落とした室内。
 そこにあるのは、シーツの擦れる音と、僕とマイカの吐息だけ。それ以外は何もなかった。
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