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番外 ナツキその後(夏樹)
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※史の施設時代の親友ナツキの話
中学を卒業したばかりのナツキを雇ってくれたラウンジには感謝している。
悪質ではあったけれど極悪ではなかったし。
搾取し続けたオーナーも、暗黙の了解で表に出し接客させた店長も、潰れるほど酒を飲ませ喜んでいた客も、陰険なベテランも、痺れるみたいな朝焼けの色も……とにかく全部が大嫌いだったけど。
今の高級店、男性Ωのみがキャストの店にやってきてからは、こんなホワイトな店もあったのかと驚いた。
何しろナツキにはソフトドリンクしか飲ませてくれない。退店時間も一人だけ早く盛り上がっている所で帰されてしまう時もある。金が貯まり始めたのはここに勤務してからだ。
ナツキがこのクラブで働き始めて一年が経っている。
ここにいるのは、自分自身を安売りせず価値をつけてきた結果だと思っている。これ以上のあがりとなると、このビルの系列店に行く位の事しか思いつかない。
時にはあざとく色を匂わせ、同じキャストに恨まれるような事もした。それとは逆に騙され痛い目にあったこともある。
ただ裏引きや売春のような店外行為をしていない事だけには胸を張れる。
でもそんな事を続ける気力は日々減っていた。
まだ十九ではあるが、随分この世界に浸りすぎた気がする。
指名とか目標とか重い。店のキラキラも客のギラギラもきつい。着飾ってメイクすると呼吸が浅くなる。もうここにいるのは無理だと思った。ならここが潮時と言うことだろう。
引退して、しばらくは休む……じゃなくて結婚もいいのかもな。
そう思ったのは十五も年上のαから結婚前提で交際をしたいと打診されていたからだ。
潔くここで決断するべきだと思いつつ、返事は引き延ばしている。
男は資産家で両親は既に亡くなっている。しかも一人っ子。離婚歴はあるが子供はない。つまり結婚に煩く口を出すのは親戚だけ。
ちょっと冴えない感じのおじさんαではあるけれど、会話していて笑える時もあるし、一緒にいても嫌にならない。
毎日刺激が欲しいわけじゃないし、ちょうどいいよな。
この男と一緒にご飯を食べて、寝て、買い物に行って、旅行に行って。そんな普通な生活を試してみようか。
今後ナツキにこれ以上の条件をもってプロポーズするαは現れないだろう。
けれど、人生は何が起こるかわからない。
ナツキが関心を奪われたのは、常連さんと一緒に店にやってきた、静かで毒のない二十七歳無職のαだった。
男に持った印象は犬。洋犬。細くてしゅっとしたホルゾイ。
そいつはいつも誰かのおまけ。連れてきてくれた人たちに特に感謝することもなく、タダで飲み食いしているようにしか見えなかった。それなのに特別楽しそうでもない。
だけど男が誰かの近くに置かれる理由が、ナツキにもちょっとだけわかってきた。
上手く説明できないけれど、この男には独特の雰囲気がある。
昔は大学の理系学部に所属しながら、畑違いの服飾デザインの勉強を熱心にしていたらしい。
そこから新卒でその世界へ足をつっこんだ後、IT業界のスタートアップに加わり、なぜか今は無職。
ナツキの耳にたくさんあるピアスを見て『痛そうだ』と、今まさに自分が痛みを感じているかのように顔をゆがめる男。
捉えどころのない男。
気に入らないから、気になる男だった。
ある時、店のお客さんから飲食店のプレオープンに招待された。
その人は食品製造会社の二代目。製造だけでなく外食のフランチャイズグループを作った人だと聞いている。
同僚と花をもって駆けつけたら、なぜだかそこに犬なαもいた。
犬はナツキを見つけると、すぐに真横に陣取ってきた。
この時初めてわかったのは、この男には夜の店の照明が合わなかったってこと。昼の自然光を受ける男は健康的な肌艶だった。
犬は、彼にしては頑張って喋っていた印象がある。
人に誘われる度に店についていったのは、ナツキに会うためだったと告白めいた事をしてきた。
ナツキの存在に一瞬で心が奪われた。でもどうアプローチしていいか分からない。ナツキのすべてに引き付けられる。
でもピアスにだけは萎えるらしい。その分部だけはションボリして言う。
あー、マズイだろうよ。
そうぼやいた時点でナツキの負けだ。
考えてやってもいい。
そんな高飛車発言に対してパパっと顔を明るくされると、喉の奥に準備していた文句が出せなくなる。
これはもう、とことんまで付き合うしかないのか、自分の気持ちに。
これまで良い関係を築いていた資産家の男をふり、店を辞め、ナツキは恋に走ってしまった。
とはいえαはα。森山春馬は希少なαだ。
きっと立派な実家を意見の相違から飛び出して、今だけ無職貧乏生活をしているのだろうと、何となくそんな感じを期待していた。
何しろホルゾイで貴族っぽいし。こっちも冴えないαを養うまでの気概はないし。
ところがハルマは、β同士の両親からたまたま生まれてしまった庶民αだった。
彼の両親は人の好さから他人の借金を負わされ返済で苦労している真っ最中。会ってみれば二人とも大雑把で裏表のない性格なのが救いだった。
騙されやすいのは遺伝なのか、ハルマが無職な上に金がないのも、それと似たような話だった。
そこそこの金を手に入れサイドFIREしていたのに、山で魚の養殖という投資詐欺にあって預金を失った。知り合いだからと気を抜いてしまったらしい。
恨みを水に流すハルマ。お人よしにも程がある。
かろうじて祖母が店のオーナーであると言う言葉に一縷の望みをかけてみたのだが、その店というのは寂れた商店街にある婦人用品店だった。
パジャマや綿の下着、入院に必要な小物を置いているレトロぼろい店だ。
祖母の引退とともに店を継ぐ事になったのはハルマだった。
晴れて就職決定、これで結婚できるね! だと? 晴れてなのか? と思いつつ入籍し、その洋品店の二階の住居部分が新婚二人の住まいとなった。
交際期間二か月のスピード婚だった。
あれこやこれやと期待したこっちにも非はある。だけどちょっとは気まずそうな顔でもしてみせろ。
ナツキが睨んでみせてもハルマはどこ吹く風。
何とかするよ、何とかなるし、そう笑った。
洋品店の面積は減らし、半分以上を古着店に改装した。
資金はナツキからハルマに貸し付けた。もちろん金がかからないDIYで改装したし、ハルマの友達のお布施にも頼った。
半分はお年寄り向け洋品店、半分は若者向けの店。店長はハルマで、売り子はハルマによってスタイリングされたナツキだ。
開店最初は知り合いの客で賑わい、その勢いを保ったまま営業を続ける事ができた。
口コミやフリーペーパーの恩恵もあっただろうが、初期にナツキと言う美しいアイコンが大いに貢献したのは間違いない。
ハルマの仕入れだけでは追い付かず、既成品を入荷した。オリジナルプリントのシャツ、小物も売り出す事になった。
ハルマと二人で、そして仲間の助けを借りて、アイデアを出し合い働く事がこれほど楽しいとは知らなかった。
大儲けとは言わないけれど、満足できる売り上げにナツキの心は踊った。それは生まれて初めての体験だった。
とある定休日。
ナツキは二階のサッシに肘をのせ、窓から店の前をぼおっと見下ろしていた。風が少しだけ通って心地よい。
二階から商店街のアーケードは近い。少し体を乗り出して手をあげれば届いてしまいそうだ。真横には壁にくっついている照明看板。「モリヤマ 婦人専用」と見たことのない書体で書かれている
ナツキの足元ではハルマがすやすやと眠っている。
子供のような寝顔はとても愛しい。
今ナツキの耳にはピアスが一つもついていない。何だかすーすーする。
ハルマはいつもその数を確かめるみたいに一つ一つ丁寧に外していき、最後はそこに慰めるようなキスをする。
目に見えるナツキの自傷をそっとハルマが癒す。それは発情前に行う特別な行為だった。
だから発情期が明けると、本当に何も身に着けていない自分を恥ずかしく感じる時がある。そんな時に火照った頬を冷やすのにここは丁度いい。
畳に布団、砂壁。こんな所まで登ってきたアリんこ。ここのどこにも過去のナツキが望んでいた物はない。
なのに、おかしいだろ……
この幸福感はなんだ。
ナツキがふわふわと思考していると、人のいない通りを一台の自転車が疾走してきて店の前で強いブレーキを踏む。
こんなに騒がしい人なんてナツキは一人しか知らない。ハルマの母だ。
「ナツキちゃーん。ご飯、店の方に置いとくから、しっかり食べるのよ!」
「うん。お母さんありがと」
「いいのいいの、気にしないで」
「まじで助かる」
「おっけー。こっちは好きで世話してるのよ」
発情期の息子たちにと、食事の差し入れをもってきてくれたようだ。
実家は自転車で二十分の距離にある。遠いようで近いようで遠い。
ナツキは自転車に乗れないから無理な移動方法だ。乗れたとしてもそんな距離は無理。その距離を彼女はいつも身軽に疾走する。
その後母は午後のパートがあるのだと嵐のように去っていった。
明るくてお喋りが面白い人。小ぎれいにすれば夜の高級店に立てそうな面差し。
そっちの道を選べば早く返済できて楽になるのに、そうナツキは思う。でも母にも父にもその発想は頭にないようだ。
そっか。
自分はもう昼の健全な世界にいるのだなあと、ナツキは思った。
中学を卒業したばかりのナツキを雇ってくれたラウンジには感謝している。
悪質ではあったけれど極悪ではなかったし。
搾取し続けたオーナーも、暗黙の了解で表に出し接客させた店長も、潰れるほど酒を飲ませ喜んでいた客も、陰険なベテランも、痺れるみたいな朝焼けの色も……とにかく全部が大嫌いだったけど。
今の高級店、男性Ωのみがキャストの店にやってきてからは、こんなホワイトな店もあったのかと驚いた。
何しろナツキにはソフトドリンクしか飲ませてくれない。退店時間も一人だけ早く盛り上がっている所で帰されてしまう時もある。金が貯まり始めたのはここに勤務してからだ。
ナツキがこのクラブで働き始めて一年が経っている。
ここにいるのは、自分自身を安売りせず価値をつけてきた結果だと思っている。これ以上のあがりとなると、このビルの系列店に行く位の事しか思いつかない。
時にはあざとく色を匂わせ、同じキャストに恨まれるような事もした。それとは逆に騙され痛い目にあったこともある。
ただ裏引きや売春のような店外行為をしていない事だけには胸を張れる。
でもそんな事を続ける気力は日々減っていた。
まだ十九ではあるが、随分この世界に浸りすぎた気がする。
指名とか目標とか重い。店のキラキラも客のギラギラもきつい。着飾ってメイクすると呼吸が浅くなる。もうここにいるのは無理だと思った。ならここが潮時と言うことだろう。
引退して、しばらくは休む……じゃなくて結婚もいいのかもな。
そう思ったのは十五も年上のαから結婚前提で交際をしたいと打診されていたからだ。
潔くここで決断するべきだと思いつつ、返事は引き延ばしている。
男は資産家で両親は既に亡くなっている。しかも一人っ子。離婚歴はあるが子供はない。つまり結婚に煩く口を出すのは親戚だけ。
ちょっと冴えない感じのおじさんαではあるけれど、会話していて笑える時もあるし、一緒にいても嫌にならない。
毎日刺激が欲しいわけじゃないし、ちょうどいいよな。
この男と一緒にご飯を食べて、寝て、買い物に行って、旅行に行って。そんな普通な生活を試してみようか。
今後ナツキにこれ以上の条件をもってプロポーズするαは現れないだろう。
けれど、人生は何が起こるかわからない。
ナツキが関心を奪われたのは、常連さんと一緒に店にやってきた、静かで毒のない二十七歳無職のαだった。
男に持った印象は犬。洋犬。細くてしゅっとしたホルゾイ。
そいつはいつも誰かのおまけ。連れてきてくれた人たちに特に感謝することもなく、タダで飲み食いしているようにしか見えなかった。それなのに特別楽しそうでもない。
だけど男が誰かの近くに置かれる理由が、ナツキにもちょっとだけわかってきた。
上手く説明できないけれど、この男には独特の雰囲気がある。
昔は大学の理系学部に所属しながら、畑違いの服飾デザインの勉強を熱心にしていたらしい。
そこから新卒でその世界へ足をつっこんだ後、IT業界のスタートアップに加わり、なぜか今は無職。
ナツキの耳にたくさんあるピアスを見て『痛そうだ』と、今まさに自分が痛みを感じているかのように顔をゆがめる男。
捉えどころのない男。
気に入らないから、気になる男だった。
ある時、店のお客さんから飲食店のプレオープンに招待された。
その人は食品製造会社の二代目。製造だけでなく外食のフランチャイズグループを作った人だと聞いている。
同僚と花をもって駆けつけたら、なぜだかそこに犬なαもいた。
犬はナツキを見つけると、すぐに真横に陣取ってきた。
この時初めてわかったのは、この男には夜の店の照明が合わなかったってこと。昼の自然光を受ける男は健康的な肌艶だった。
犬は、彼にしては頑張って喋っていた印象がある。
人に誘われる度に店についていったのは、ナツキに会うためだったと告白めいた事をしてきた。
ナツキの存在に一瞬で心が奪われた。でもどうアプローチしていいか分からない。ナツキのすべてに引き付けられる。
でもピアスにだけは萎えるらしい。その分部だけはションボリして言う。
あー、マズイだろうよ。
そうぼやいた時点でナツキの負けだ。
考えてやってもいい。
そんな高飛車発言に対してパパっと顔を明るくされると、喉の奥に準備していた文句が出せなくなる。
これはもう、とことんまで付き合うしかないのか、自分の気持ちに。
これまで良い関係を築いていた資産家の男をふり、店を辞め、ナツキは恋に走ってしまった。
とはいえαはα。森山春馬は希少なαだ。
きっと立派な実家を意見の相違から飛び出して、今だけ無職貧乏生活をしているのだろうと、何となくそんな感じを期待していた。
何しろホルゾイで貴族っぽいし。こっちも冴えないαを養うまでの気概はないし。
ところがハルマは、β同士の両親からたまたま生まれてしまった庶民αだった。
彼の両親は人の好さから他人の借金を負わされ返済で苦労している真っ最中。会ってみれば二人とも大雑把で裏表のない性格なのが救いだった。
騙されやすいのは遺伝なのか、ハルマが無職な上に金がないのも、それと似たような話だった。
そこそこの金を手に入れサイドFIREしていたのに、山で魚の養殖という投資詐欺にあって預金を失った。知り合いだからと気を抜いてしまったらしい。
恨みを水に流すハルマ。お人よしにも程がある。
かろうじて祖母が店のオーナーであると言う言葉に一縷の望みをかけてみたのだが、その店というのは寂れた商店街にある婦人用品店だった。
パジャマや綿の下着、入院に必要な小物を置いているレトロぼろい店だ。
祖母の引退とともに店を継ぐ事になったのはハルマだった。
晴れて就職決定、これで結婚できるね! だと? 晴れてなのか? と思いつつ入籍し、その洋品店の二階の住居部分が新婚二人の住まいとなった。
交際期間二か月のスピード婚だった。
あれこやこれやと期待したこっちにも非はある。だけどちょっとは気まずそうな顔でもしてみせろ。
ナツキが睨んでみせてもハルマはどこ吹く風。
何とかするよ、何とかなるし、そう笑った。
洋品店の面積は減らし、半分以上を古着店に改装した。
資金はナツキからハルマに貸し付けた。もちろん金がかからないDIYで改装したし、ハルマの友達のお布施にも頼った。
半分はお年寄り向け洋品店、半分は若者向けの店。店長はハルマで、売り子はハルマによってスタイリングされたナツキだ。
開店最初は知り合いの客で賑わい、その勢いを保ったまま営業を続ける事ができた。
口コミやフリーペーパーの恩恵もあっただろうが、初期にナツキと言う美しいアイコンが大いに貢献したのは間違いない。
ハルマの仕入れだけでは追い付かず、既成品を入荷した。オリジナルプリントのシャツ、小物も売り出す事になった。
ハルマと二人で、そして仲間の助けを借りて、アイデアを出し合い働く事がこれほど楽しいとは知らなかった。
大儲けとは言わないけれど、満足できる売り上げにナツキの心は踊った。それは生まれて初めての体験だった。
とある定休日。
ナツキは二階のサッシに肘をのせ、窓から店の前をぼおっと見下ろしていた。風が少しだけ通って心地よい。
二階から商店街のアーケードは近い。少し体を乗り出して手をあげれば届いてしまいそうだ。真横には壁にくっついている照明看板。「モリヤマ 婦人専用」と見たことのない書体で書かれている
ナツキの足元ではハルマがすやすやと眠っている。
子供のような寝顔はとても愛しい。
今ナツキの耳にはピアスが一つもついていない。何だかすーすーする。
ハルマはいつもその数を確かめるみたいに一つ一つ丁寧に外していき、最後はそこに慰めるようなキスをする。
目に見えるナツキの自傷をそっとハルマが癒す。それは発情前に行う特別な行為だった。
だから発情期が明けると、本当に何も身に着けていない自分を恥ずかしく感じる時がある。そんな時に火照った頬を冷やすのにここは丁度いい。
畳に布団、砂壁。こんな所まで登ってきたアリんこ。ここのどこにも過去のナツキが望んでいた物はない。
なのに、おかしいだろ……
この幸福感はなんだ。
ナツキがふわふわと思考していると、人のいない通りを一台の自転車が疾走してきて店の前で強いブレーキを踏む。
こんなに騒がしい人なんてナツキは一人しか知らない。ハルマの母だ。
「ナツキちゃーん。ご飯、店の方に置いとくから、しっかり食べるのよ!」
「うん。お母さんありがと」
「いいのいいの、気にしないで」
「まじで助かる」
「おっけー。こっちは好きで世話してるのよ」
発情期の息子たちにと、食事の差し入れをもってきてくれたようだ。
実家は自転車で二十分の距離にある。遠いようで近いようで遠い。
ナツキは自転車に乗れないから無理な移動方法だ。乗れたとしてもそんな距離は無理。その距離を彼女はいつも身軽に疾走する。
その後母は午後のパートがあるのだと嵐のように去っていった。
明るくてお喋りが面白い人。小ぎれいにすれば夜の高級店に立てそうな面差し。
そっちの道を選べば早く返済できて楽になるのに、そうナツキは思う。でも母にも父にもその発想は頭にないようだ。
そっか。
自分はもう昼の健全な世界にいるのだなあと、ナツキは思った。
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