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23 子供達の確信
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箸を置いた光流が佐保と目を合わせ、躊躇うように口を開く。
「ずっと聞きたかったんですが……佐保さんは、うちの母と結婚する気があるんでしょうか?」
「……ん、結婚。史君と私が……」
「ええ、母との事は遊びなのかどうなのか、ずっと確認したいと思っていたんです」
「結婚……それは幾らなんでも……なんと言うか」
佐保は明らかに慌て始めて、水の入ったグラスを取る。
何か言いたげにたっぷりと間を取った後に飛び出した結婚という単語がよほど強烈だったようだ。
いつか郁也に言われた時も焦ったものだが、その時よりも重く受け止めたのは当然だった。
佐保とは対照的に空と怜は面白そうにクスクスと笑い始める。あまり大きな声では失礼だろうと、少しは遠慮して我慢しているようだ。
「……なんて、冗談ですよ。さすがにいくら何でも無理。実の親子が結婚することはできませんよね」
光流の発言に佐保は一瞬だけ顔の表情をなくし、またすぐに元に戻した。
「光流君、空君、怜君。君たちは、わかっているんだね?」
佐保はこれまで史に対しては、それとなく探りを入れていた。自分が親である事に気付いているのか、いないのかと。しかしこの子供達の前ではしないように注意してきたはずだった。
「最初は違いました。随分年上のαが母さんを誘惑するんだなって、何かよくない理由があるんじゃないかって、要注意人物として監視させてもらっていました」
「そうか、私はそんな目で見られていたのか。しかし史君は少し心配なところがあるから、息子がしっかりしてしまうのも無理もない」
確かに史には抜けた所がある。
史は夫と離婚した時点で宗賀と縁が切れたと思っていたようだが、周りがそう思うかどうかはまた別の話だ。しかしそこまで考えが及ばない。
セキュリティがないアパートに住む元宗賀の家族に、宗賀に恨みを持つ者の手が伸びることも考えられた。宗賀と関係なくても、弱ったΩにつけこみ食い物にしようとするαだっているかもしれない。
光流は子供ながら新しい家族の危うさを感じていた。その思いは兄弟に共通の思いで、できるだけ三兄弟の誰かは家にいて、二人のΩを守るようにしていた。
中でも頑張ってきたのは一番大人に近かった光流だ。
学校が終わればすぐに家に帰り、一階のポスト周りに異変がないか調べ、部屋に至るまでに他のαの痕跡がないかを確かめた。
母親である史は確かに特徴という特徴がない顔立ちをしている。けれど宗賀の父を見ればわかるように、一部のαを強烈に引き寄せる何かを持っている人だった。
離婚後にあった担任教師との三者懇談では、Ωの頼りない母親がやってきたと、あからさまに光流と二人で話を進めていた教師。だが、途中から流れは変わった。光流もそれがわかってきた。担任が明らかに母を意識し見つめていることに気付いたのだ。
母に関してはそれだけではない。
アパートへ引っ越してから二ヵ月ほどは、どこかのαが母親を狙っているふしが見受けられた。姿をみたことはないが、光流の嗅覚はそれを捕えた。
その頃の史はがむしゃらに働いている頃で、外へ出ている時間は多かった。その時に誰かに目をつけられたのだろう。
親が恋人を作ることに複雑ではあるが反対するつもりはない。それでも酷く疲れ離婚で傷ついたままの史にその余裕があるわけもなく、そんな史が乱暴なαによって傷つけられることがないように神経を使った。
ところがその、どこかの危険なαの気配はパタリとやんでしまった。他の相手を見つけたのかもしれないが、光流の心には小さな違和感が残っていた。
他にも奇妙に思うことは幾つかあった。
光流たちが住む二階には他の複数の世帯が入っていて、引っ越してきた時には挨拶に出向いて言葉を交わしてもいる。
しかし、その家族の気配はいつしかなくなり、入れ替わるように見かけるようになったのは、子供のいない夫婦だけ。
その夫婦も引っ越してきたと挨拶に来てからは滅多に見かけない。二度ほど廊下で会って一言挨拶をしただけだ。
光流以外の家族が気付いているかわからないが、自分達の住むアパートに自分達家族の気配しかない事を奇妙に感じていた。
その矢先にあったのがオーナーチェンジ。多美がやってきた。
異常なほど親切すぎる多美の行動を、史は疑問に思いながらもすぐに受け入れた。
こんな人がいてこんな幸運が巡ってくる事もあると信じ、そこに作為的なものがあるとは疑いもせずにいる母。
実際に多美の優しさは作り物ではなく、史へ向ける愛情も偽物とは思えなかった。
ではどうして? 自分達家族にここまで献身して、いったい彼女に何の得がある。
すぐに始まった大胆な部屋のリフォームは、常識の範囲を逸脱している。
母親の仕事が決まった。仕事場には男性がおらず母のストレスの少ない場所だった。収入も格段に上がった。
わかりやすい起点は、やはり多美が関わってからなのだ。
親が離婚して名前がかわり、住む場所が変わった当初は何もかもが違っていた。
古いアパートに皆の気持ちが下がり、加えて母親は仕事の為に家を空けるようになり、末の郁也が情緒不安定になり、母が体を壊し始めた。
順に不幸が訪れ、さすがの光流もまだ中学生で、この先に不安を感じていた。
暗い雰囲気が家庭に沈殿し、皆が病気になってもおかしくない状態だった。
それが多美の登場で何もかもが、バタバタとひっくり返り始め、すべての悪が見事に消えていった。
誰かが手を回し、自分達家族を見守り支えている。はっきりとそれがわかった。そしてそれは、決して宗賀ではない。
「全部、佐保さんがしてきた事だとわかりました。あなたと多美さんが母の縁者だとわかったから、僕達は安心して母を職場に送り出せたし、好意に甘えてあのアパートで暮らせたんです」
光流が水で喉を潤していると、続きを怜が引き受ける。
「やっぱり決定的なのは多美さんの存在かな。あのあからさまなリフォームだけならともかく、誰よりも母さんが気になって可愛がっている姿、あれを見たら、あまり家にいない空だって何かしら感じるよね?」
「ああ、精神のいかれたやばい人間かと、普通は思うんじゃないか。実際最初はそう思った」
空が同意すると、佐保が苦笑いする。
「いや、そこまで大袈裟にするつもりはなかったんだが、多美がやいやいと攻撃して煩いから、途中から全てを任せてしまったんだ。あれは本当に多美が自分で出資した多美の持ち物でね。設備面はともかくとして、まさか大家になったり畑を作ったり、料理を差し入れたりするとは。そこまで接近するとは私も計算外でね」
しかも多美がしたリフォームは元の建物を維持したまま行っているので、更地にして建て替えるより高い費用が掛かっている。
困ったものだと言いながら満更でもなく微笑む。
「佐保さんは母さんの父親。では多美さんって何者ですか? 佐保さんのお母様ではないでしょうし、やはり親戚という間柄が、一番理解できる気がしますが」
「私と多美の間には血縁関係がないんだ。多美は私が子供の頃の『ねえや』だった。ねえやと言うのは、遊び相手であり、マナーを教える人であり、悪い事をしたら叱るような、とても近しい役割を持つ人の事だ。多美は結婚して日本から離れてしまったけれど、何かの折には電話や手紙をくれる人でね、そのおかげで長く繋がれていたんだ。旦那さんを亡くされてから日本へ戻ってきて、また身の回りを世話してくれるようになったんだよ」
多美は身内同然だと言う佐保に、なるほどと三人は頷いた。
根っからの世話好きで、根っからの佐保好きが多美なのだ。
多美はそもそも世間的にはお嬢様と言われる家柄で、明るい性格と好奇心から、近所に住む佐保のねえや役を喜んで引き受けた。
その後、親に決められた結婚も素直に受け入れ、夫の仕事に帯同し世界中を飛び回った。その夫が亡くなるまで仲睦まじく暮らしてきて、一人になってからは日本に戻り、ずっと心配だった佐保の世話をする事にした。何しろ時間は有り余っているし、夫からの相続もあるので、古アパート付きの土地などぽんと買って面倒みる事ができる。
「多美はずっと、史の存在を知ってからずっと、会いたがっていた。誕生日が来るたびに史の年を数えていたらしい。多美には子供がいないし、私の息子である史には特別な思い入れがあるんだろう。史は……まだ戻りそうにないね。だったらもう少し話を聞いてもらおうかな」
佐保は記憶を巻き戻すように、個室の天井の隅に視線をやった。
「ずっと聞きたかったんですが……佐保さんは、うちの母と結婚する気があるんでしょうか?」
「……ん、結婚。史君と私が……」
「ええ、母との事は遊びなのかどうなのか、ずっと確認したいと思っていたんです」
「結婚……それは幾らなんでも……なんと言うか」
佐保は明らかに慌て始めて、水の入ったグラスを取る。
何か言いたげにたっぷりと間を取った後に飛び出した結婚という単語がよほど強烈だったようだ。
いつか郁也に言われた時も焦ったものだが、その時よりも重く受け止めたのは当然だった。
佐保とは対照的に空と怜は面白そうにクスクスと笑い始める。あまり大きな声では失礼だろうと、少しは遠慮して我慢しているようだ。
「……なんて、冗談ですよ。さすがにいくら何でも無理。実の親子が結婚することはできませんよね」
光流の発言に佐保は一瞬だけ顔の表情をなくし、またすぐに元に戻した。
「光流君、空君、怜君。君たちは、わかっているんだね?」
佐保はこれまで史に対しては、それとなく探りを入れていた。自分が親である事に気付いているのか、いないのかと。しかしこの子供達の前ではしないように注意してきたはずだった。
「最初は違いました。随分年上のαが母さんを誘惑するんだなって、何かよくない理由があるんじゃないかって、要注意人物として監視させてもらっていました」
「そうか、私はそんな目で見られていたのか。しかし史君は少し心配なところがあるから、息子がしっかりしてしまうのも無理もない」
確かに史には抜けた所がある。
史は夫と離婚した時点で宗賀と縁が切れたと思っていたようだが、周りがそう思うかどうかはまた別の話だ。しかしそこまで考えが及ばない。
セキュリティがないアパートに住む元宗賀の家族に、宗賀に恨みを持つ者の手が伸びることも考えられた。宗賀と関係なくても、弱ったΩにつけこみ食い物にしようとするαだっているかもしれない。
光流は子供ながら新しい家族の危うさを感じていた。その思いは兄弟に共通の思いで、できるだけ三兄弟の誰かは家にいて、二人のΩを守るようにしていた。
中でも頑張ってきたのは一番大人に近かった光流だ。
学校が終わればすぐに家に帰り、一階のポスト周りに異変がないか調べ、部屋に至るまでに他のαの痕跡がないかを確かめた。
母親である史は確かに特徴という特徴がない顔立ちをしている。けれど宗賀の父を見ればわかるように、一部のαを強烈に引き寄せる何かを持っている人だった。
離婚後にあった担任教師との三者懇談では、Ωの頼りない母親がやってきたと、あからさまに光流と二人で話を進めていた教師。だが、途中から流れは変わった。光流もそれがわかってきた。担任が明らかに母を意識し見つめていることに気付いたのだ。
母に関してはそれだけではない。
アパートへ引っ越してから二ヵ月ほどは、どこかのαが母親を狙っているふしが見受けられた。姿をみたことはないが、光流の嗅覚はそれを捕えた。
その頃の史はがむしゃらに働いている頃で、外へ出ている時間は多かった。その時に誰かに目をつけられたのだろう。
親が恋人を作ることに複雑ではあるが反対するつもりはない。それでも酷く疲れ離婚で傷ついたままの史にその余裕があるわけもなく、そんな史が乱暴なαによって傷つけられることがないように神経を使った。
ところがその、どこかの危険なαの気配はパタリとやんでしまった。他の相手を見つけたのかもしれないが、光流の心には小さな違和感が残っていた。
他にも奇妙に思うことは幾つかあった。
光流たちが住む二階には他の複数の世帯が入っていて、引っ越してきた時には挨拶に出向いて言葉を交わしてもいる。
しかし、その家族の気配はいつしかなくなり、入れ替わるように見かけるようになったのは、子供のいない夫婦だけ。
その夫婦も引っ越してきたと挨拶に来てからは滅多に見かけない。二度ほど廊下で会って一言挨拶をしただけだ。
光流以外の家族が気付いているかわからないが、自分達の住むアパートに自分達家族の気配しかない事を奇妙に感じていた。
その矢先にあったのがオーナーチェンジ。多美がやってきた。
異常なほど親切すぎる多美の行動を、史は疑問に思いながらもすぐに受け入れた。
こんな人がいてこんな幸運が巡ってくる事もあると信じ、そこに作為的なものがあるとは疑いもせずにいる母。
実際に多美の優しさは作り物ではなく、史へ向ける愛情も偽物とは思えなかった。
ではどうして? 自分達家族にここまで献身して、いったい彼女に何の得がある。
すぐに始まった大胆な部屋のリフォームは、常識の範囲を逸脱している。
母親の仕事が決まった。仕事場には男性がおらず母のストレスの少ない場所だった。収入も格段に上がった。
わかりやすい起点は、やはり多美が関わってからなのだ。
親が離婚して名前がかわり、住む場所が変わった当初は何もかもが違っていた。
古いアパートに皆の気持ちが下がり、加えて母親は仕事の為に家を空けるようになり、末の郁也が情緒不安定になり、母が体を壊し始めた。
順に不幸が訪れ、さすがの光流もまだ中学生で、この先に不安を感じていた。
暗い雰囲気が家庭に沈殿し、皆が病気になってもおかしくない状態だった。
それが多美の登場で何もかもが、バタバタとひっくり返り始め、すべての悪が見事に消えていった。
誰かが手を回し、自分達家族を見守り支えている。はっきりとそれがわかった。そしてそれは、決して宗賀ではない。
「全部、佐保さんがしてきた事だとわかりました。あなたと多美さんが母の縁者だとわかったから、僕達は安心して母を職場に送り出せたし、好意に甘えてあのアパートで暮らせたんです」
光流が水で喉を潤していると、続きを怜が引き受ける。
「やっぱり決定的なのは多美さんの存在かな。あのあからさまなリフォームだけならともかく、誰よりも母さんが気になって可愛がっている姿、あれを見たら、あまり家にいない空だって何かしら感じるよね?」
「ああ、精神のいかれたやばい人間かと、普通は思うんじゃないか。実際最初はそう思った」
空が同意すると、佐保が苦笑いする。
「いや、そこまで大袈裟にするつもりはなかったんだが、多美がやいやいと攻撃して煩いから、途中から全てを任せてしまったんだ。あれは本当に多美が自分で出資した多美の持ち物でね。設備面はともかくとして、まさか大家になったり畑を作ったり、料理を差し入れたりするとは。そこまで接近するとは私も計算外でね」
しかも多美がしたリフォームは元の建物を維持したまま行っているので、更地にして建て替えるより高い費用が掛かっている。
困ったものだと言いながら満更でもなく微笑む。
「佐保さんは母さんの父親。では多美さんって何者ですか? 佐保さんのお母様ではないでしょうし、やはり親戚という間柄が、一番理解できる気がしますが」
「私と多美の間には血縁関係がないんだ。多美は私が子供の頃の『ねえや』だった。ねえやと言うのは、遊び相手であり、マナーを教える人であり、悪い事をしたら叱るような、とても近しい役割を持つ人の事だ。多美は結婚して日本から離れてしまったけれど、何かの折には電話や手紙をくれる人でね、そのおかげで長く繋がれていたんだ。旦那さんを亡くされてから日本へ戻ってきて、また身の回りを世話してくれるようになったんだよ」
多美は身内同然だと言う佐保に、なるほどと三人は頷いた。
根っからの世話好きで、根っからの佐保好きが多美なのだ。
多美はそもそも世間的にはお嬢様と言われる家柄で、明るい性格と好奇心から、近所に住む佐保のねえや役を喜んで引き受けた。
その後、親に決められた結婚も素直に受け入れ、夫の仕事に帯同し世界中を飛び回った。その夫が亡くなるまで仲睦まじく暮らしてきて、一人になってからは日本に戻り、ずっと心配だった佐保の世話をする事にした。何しろ時間は有り余っているし、夫からの相続もあるので、古アパート付きの土地などぽんと買って面倒みる事ができる。
「多美はずっと、史の存在を知ってからずっと、会いたがっていた。誕生日が来るたびに史の年を数えていたらしい。多美には子供がいないし、私の息子である史には特別な思い入れがあるんだろう。史は……まだ戻りそうにないね。だったらもう少し話を聞いてもらおうかな」
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