こうもりのねがいごと

宇井

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 開いていた頁に服がすれ、一枚二枚とめくれる。
 裸になるのも恥ずかしいけれど、半端に脱がされ動きが制限されるとそれが加速する。下半身にもう布はなく、上半身のシャツは肩が抜かれコウの腕に絡みついている。
 コウが体をよじると下にあったシーツには皺が寄り、こすれる度に緑の湿気が濃くなり匂いが強くなる。
 キスには種類があるのだと教えてもらっていたけれど、これもそれになるのだろうか。コウは体中に受ける唇の愛撫に息も絶え絶えになっていた。
 唇で表面をかすめるものもあれば、舌先まで器用に使い吸い上げてくるものもある。どれであってもコウの体は簡単に跳ね、まるで岸に上げられた魚みたいだと思う。
 それなのにアスランはもっともっとと強く反応する場所を巧みに見分けて仕掛けてくるから、コウの口はずっと閉まらず、言葉にならない声を上げるはめになる。
 
「んっ!」

 特にいけないのは胸の先にある二つの粒だ。
 そこだけ色が違っているのは意味があるのだと教えるように、アスランは執拗にねぶってくる。
 だったらコウも同じことを返したいのだが力では敵わない。それにアスランは自分の着衣は乱さずにいるのだからいやになる。
 きっちりと衣服を身に着けたアスランに対し、自分はほぼ丸裸。
 
「……んあっ……はぁ……」

 じわりとかいた汗で髪が額にはりついて、乱れたコウを更に淫靡に見せる。
 顔に当たる光が眩しくて目を閉じる。そうでなくてもアスランの顔が近くにあると、つい期待して目を閉じてしまう。そうすれば優しいキスを必ずくれるから。
 
「……アスラン、さまぁ……」

 息遣いが激しくなり、体力のないコウの限界が近いとみたアスランは動きを止め、コウの上半身を支えながらその場に起こす。
 そこで終了となるわけもなく、コウの腕に引っかかるシャツを脱がせた。

 果実水を手に取りコウの口元に運び飲むように促す。渇きを覚えていたコウは素直にコクコクと喉を動かすのだが、幾筋かが端から垂れてしまう。
 アスランはそれを下から上へと舐めとる。
 もうしばらくコウに休憩を取らせるつもりだったが、またそこで理性がプチリと切れ、光の弱い木陰にコウを運び寝かせた。
 しかしコウは起き上ろうとしているのか、木の幹に手をかけ上半身をおこし、でもやはり力尽きて幹に抱き付いてしまう。

 ひんやりしてきもちい……

 足をそろえて斜め座りになったコウは、体温より温度が低い幹に頬と胸をくっつける。それでもアスランに与えられた熱はなかなか冷めない。
 お腹は果実水で満たされ、熱に溺れそうになったさっきより、普通に息ができて助かった感じだ。
 それよりアスランはどこへ行ったのか。
 コウが顔を小屋の方へ向けると、アスランはすぐ近くに来ていた。

「コウ、そのままもたれていていい」
「はい……」
「この先も、怖いことは何もない」

 もちろんアスランに怖いことをされるとは思っていない。食糧的な意味で命の危機を感じる時もあるけれど、それだってコウへの愛ゆえ我慢してくれているのはわかっている。
 アスランはぺたんとしたコウのお腹をさする。
 ここに来た当初コウの腹はガスが溜まりぽこんとふくれていた。栄養失調、そして内臓まで弱っていたせいだ。それがたった数日でここまで回復したのだ。
 コウにはその自覚がないから、アスランがなぜ度々お腹をさするのかわかっていない。だけどその意味がわからなくても、キスとはまたちがった愛を感じていた。だからお腹をすりすりされると安心してしまう。
 優しい手がはなれ、衣擦れの音がしてアスランも衣服を脱いだのだとわかる。すっかり忘れていたが、行為は終わりではないのだ。
 
「森でも天然由来の物が手に入るが、最初だから慎重にしよう」

 コウの薄く開いた目に映るのは、アスランが小瓶から粘度のある液体を手の平に垂らしている所だった。

 蜂蜜みたい。

 食の心配ばかりして育ったコウには、その薄茶色が美味しそうな蜜にしか見えない。
 それは実際蜂蜜を主成分とした潤滑液で、甘ったるい香りがアスランの手の平で温められ強くなる。
 コウも馬鹿ではない。これが愛の行為を先に勧めるための準備だとわかる。それの行先はきっと自分の体で、それが塗り付けられたらどれほど心地よいのか。そう思うと下半身が反応してしまう。
 とうとうこの時が、アスランと本当に繋がる時がきたのだ。

 何となく予感はあった。泉で戯れていると必ずアスランの指はコウの中に入ってきていた。苦しいだけだったその行為に耐えるだけだったが、今朝はすんなりと入り異物感があるだけだった。そして力の抜き方が上手くなったと褒められていたのだ。
 ぷるんと起き上ったものはコウの気持ちのままに、何かを期待するように天辺に液の塊を作っている。
 アスランの蜜をたたえた手に触れられてしまえば、それは即座に押し上げられ、幹を辿ってコウの体を濡らすだろう。アスランの手によってコウは感じる身体になっていた。

「コウ、楽にして」

 やわやわとお尻のまろみに蜜がのばさされる。
 べたりとした不快感はなくて、アスランの手の平の温もりがあんぽうのようだ。アスランもこういったことをされた経験があるのだろうか、だからこれほど上手なのだろうか。
 やがてアスランの手は尻の溝へと進む。

「ん……!」

 反射的に力が入ってしまうけれど、怖くないのだと撫で慰められる。
 蜜は何度か足されているようで、指や肌がつっぱることはなく、滑らかに窄まりに辿り着き、そこにある皺を丹念にのばすように塗り込められた。
 最初にアスランと泉で抱き合ったことを思い出してしまう。
 あの時、コウの体はアスランに密着して、お尻はアスランのもので支えられていた。それがぴったりお尻にはまって、そこが滑るたびにじんわりとした快感で震えた。
 アスランは酷いことしない。その通り、力は徐々に抜けていく。
 朝褒められた時のようにすればいい。簡単だ……

 んあっ……

 つぷんとアスランの指先が入ってくるが、最初にひっかかりを感じただけで、その後はスムーズだった。

 アスラン様は気持ちいいのかな。

 施されているのは自分なのに、アスランの息遣いが荒くなっている。でも恥ずかしくてそちらは見られない。
 キスをして体を重ねる、その心地よさはわかった。しかしその先は本当にキスよりも気持ちいいのだろうか。
 アスランのペニスがコウの尻の奥に入るのが繋がることだとは言われたが、それもどこか半信半疑でいる。

 そういえば亀様。

 精霊様の亀様が何かこの謎を解くような大事なことを言っていた気がする。

 えっと、奥まで届いて、のどからでそう……のどから出る、何がでるのって……つまりそれは……アスラン様の……ペニス? それが口から出る……?


「……んあっ……アスランさま……のぉどぉ……」
「コウ、ますます声が可愛らしくなってきた」

 何をどうしたら咽から突き出るのか、それを聞きたいけれどお尻のむずむずで声が掠れてしまう。
 お尻に突き刺さっているのは、アスランの優雅で細く長い指のはずなのに、そこを抑えられているだけで全身が言うことをきかなってしまう。
 コウにできるのは必死に木にしがみつくことだけだ。
 ぐじゅぐじゅとお尻をいたぶられているのに、その度にペニスまでぴうぴうと揺れ反応してしまう。
 幹を抱えこんでいた手から力がぬけ、次は地面にしがみつく。生える草を握って背をまるめ、はうはうと息をする。

「コウは身体も柔らかいが、ここも柔軟だ。痛くはないか」

 アスランの問いかけにコクリと頷く。その間も容赦なく指はコウの中をかき混ぜ、自然に流れる涙が地に落ちた。
 違和感はあっても痛みはない。しかし指を四本も受け入れている場所が限界までのびている。
 アスランのものは恐怖を覚えるほど太くなく、亀様が言っていたように長さの方が目立つ。
 アスランであればこの長さも自在に調節できるのだろうか。そうであれば亀様の言っていたことと辻褄があう。

 本当に? ほんとに? 亀様にちゃんと聞いておけばよかった……あ……うあ……きもちい……

 コウがおかしなことを考えている間に、アスランは黙々とコウの穴を可愛がっていた。
 これならコウを傷つけることもないだろうと、納得いくまで広げた所で、アスランはコウの腰を引き寄せ、尻を高く足げる四つん這いの姿勢にさせた。
 コウは半分夢の中にいるようにされるがままだ。
 
「コウ、ひとつになる、繋がる」
「ほんとうに……繋がることができるんですか」
「ああ」

 窄まりにあてがわれている。コウはその熱に身震いした。
 触れた部分が火傷するほどにチリチリと焼けるようで、思わずそこに力が入る。でも次に緩めた時を狙ったかのように、ずいーっと長い物が入れ込まれた。
 目の中に火花が散る。

「……んっ……ううっ」

 入ってくる。
 だけど、まだ、まだ、入ってくる。

 いつまでもいつまでも時間をかけて、拓きながら先端の熱が移動していく。体の中心に向かって杭を打たれているようだ。

 苦し……っ……

 焼けるようだった入り口。コウを拓いてどこまでも先を目指す肉。 
 もう無理だ、コウがそう思った所で、アスランの全長の半分以上を受け入れていた。それでもコウの細く小さな体にそれだけ埋まっているのが不思議なくらいだ。
 コウの蕾はみっちりとアスランを咥え込んでいる。その光景を目の当たりにしているアスランはさらに血を滾らせ、その瞳を赤に変えていた。爪は黒く色を変え、根元には青を持つ鱗が生えている。しかし皮膚との境界は曖昧で、鱗は見た目と違い柔らかい。
 
「うあっ……」

 内側から押されたコウは思わず声を上げる。興奮したアスランが一回り大きくしたのだ。
 コウの蕾は桃色で、そこにアスランの色をかえた凶暴な物が突き刺さっている。その対比は麻薬のようにアスランをくらくらとさせる。
 
「コウ、いつかでいい。いずれ私のすべてを受け入れてくれ」
「僕が……アスランさまを拒むことは……ありません。アスラン様のためなら、いつだって……」
「コウ! 私を最初から受けれてくれると言うのか。ならば進めるぞ、もっとだ」
「えっ……ええっ」

 今なの……?

 手は草をつかみ縋っていたのに、アスランが肩と腰に腕を回して、コウの上体を抱え上げる。

「うっ……ああっ……あっ!」
 
 それに抵抗できず、あぐらをかいたアスランの上にコウは沈んでいく。逃げ出したくてもお尻は串刺しになっていて、できることと言えば手足をばたつかせるだけだ。
 その細やかな抵抗、そして自重と相まってアスランの見えていたペニスの根元の部分をゆっくりと隠していってしまう。
 今だって精一杯なのに、拒めば拒むほど入ってくる。

 ちょっと、まって……やだ、やだぁ……むりぃ……

 突き出した胸の先は強い刺激にぴんと張り出している。

「やっやっ……やぁ……」
 
 首を振っていやだと伝えるのだが、アスランには甘えているようにしか見えない。そうしていてもコウのペニスはずっと膨らんだままなのだ。
 あり得ない部分を、裂かれているようだった。
 このまま進めば、アスランのものはコウのお腹の真ん中まで、もっと先まで届くのかもしれない。
 亀様の言っていたことは大げさだけど、まったくの嘘じゃなかった。
 コウは腰に回っていたアスランの手にしがみつき爪を立て、じりじりした時を耐える。

「んきゃ……」

 背中をぺろりと舐められた。
 お尻がきゅっとしてぶるっと震えたあとに力が抜ける。
 そして完全に二人は繋がった。
 その時にお尻の中にある何かをゴリっとすられ、コウの張りつめていた可愛らしい穴からだらだらと液が溢れた。勢いよく飛び出すのではなく、堪えかねて溢れてしまったのだ。
 
「コウ、こちらもいいだろう」
「ふぇ……こっち……まえ?」

 見下ろせば自分の小さな穴から液があふれ腿までを濡らしている。
 表面をはう血管は盛り上がり、期待するようにぷるぷると震えている。いつもコウが見ている自分のペニスとは大違いでぱんぱんに膨れている。

「あ……」

 二つの玉がアスランの手の平におさまりやわやわと揉まれる。それは懸命に保って来た体の芯を蕩けさせる。コウの体がぐにゃりとなる。
 アスランは続けてコウのペニスに手をかける。優しく、時には乱暴に。

「……あっ……いく……いきます……いっちゃいます……ああっ……!」

 コウは射精していた。
 勢いよく飛び出た白はコウの目の前まで上がり、緩い曲線を描い木の幹にぴゅっぴゅっとかかる。
 恥ずかしいほどによく飛んでしまった白濁。それが自然を穢しているようでとても見ていられない。目をぎゅっと閉じると、アスランがコウの奥を擦りつぶすように腰を動かす。これで終わりではなかったのだ。

「……あっ……」

 誰も、何も、届かないはずのコウの奥をアスランの先が舐めまわすように動く。それはいつもコウの口内をねぶるアスランの舌先に似ていた。
 熱い。だけど熱いだけではない。
 しばらくその動きでコウの様子を見たあと、アスランの突き上げが唐突に始まった。
 
「あっ、あっ、あっ、あああああっ」

 最初は緩やかに、そこからは我慢できないのだと言うように激しく小突かれる。
 腰と肩は支えられていても、コウの体は踊るように揺れる。コウのお尻からはアスランの根元が見えては隠れ、見えては隠れする。
 お尻の中はアスランで一杯で、お腹の中まで愛されている。痺れが脳まで突き抜けてくる。
 満たされている。
 空っぽだった自分の奥まで満たされている。
 アスランが繋がりたいのだと言った意味がようやくわかった気がして、コウは涙が止まらなくなっていた。
 アスランのペニスの段差が、コウの奥にあるいい場所をつつく。普通ならば届かないはずの場所でもアスランなら容易く届いてしまう。そこはなぜだが触れるだけで気持ちがよくなってしまう。

「んあっ……そこ、そこはっ……」

 ずっとそこばかり狙われては自分はばかになってしまう。だけどアスランが出ていってしまうのは嫌だ。
辛い、けれど気持ちいい。

「あすらん……あすらん、さま……」
「コウ、いくぞ」

 アスランがスパートかけてくる。汗が飛び散りコウの肩に落ちる。

「ひゃうっ……おしりが、おくが……こわれます……んあっ……!」
 
 そう声をあげると同時にお尻の奥が熱くなり、そこから全身へと熱が広がっていった。
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