19 / 35
第19話 王子はプレイヤーの記憶を取り戻す
しおりを挟む
サムネイルには、赤と黄色の袋文字が踊っていた。
『トラウマ粉砕! ドSメラルダを2分11秒49でボコボコにします! 「未来視の魔眼(笑笑笑)」には意外にも○○○○○○○が超有効!?【エーデルワイス編】』
「……は?」
ノエルの死闘にはあまりにもふさわしくないタイトルに、俺は間の抜けた声を漏らす。
だが、「それ」が必要な情報であることは確信できた。
記憶の中の俺の手がマウスを動かし、再生ボタンをクリックする。
画面の中央、少し離れた場所に、エスメラルダが映っていた。
ノエルと戦っている「現実」のエスメラルダじゃない。
Carnageのゲーム内のエスメラルダだ。
そして、プレイヤーキャラクターがその手前に立っている。
二十歳くらいの金髪縦ロールの貴族令嬢然とした、息を呑むほどの美女。
プレイヤーが主人公として選択可能なキャラクターの一人、「エーデルワイス」だ。
最弱主人公として名高いエーデルワイスは、右手にソードウィップを持っていた。
鞭形態のソードウィップを、プレイヤーは片手で縄跳びのように振り回している。
まるで手持ち無沙汰だから遊んでいるような――いや、実際にその通りなんだろう。
エーデルワイスはエスメラルダから一定距離を置いた地点に立っている。
そこより少しでも近づくと、エスメラルダとの戦闘が始まるギリギリのラインだ。
エーデルワイスがこちらを向き、にっこり笑って話を始める。
『みなさんこんにちは。ショコラです。今日は、エスメラルダの攻略のほう、やっていきたいと思います! 参考になりましたら、高評価、チャンネル登録よろしくおねがいしますね!』
エーデルワイスがスカートをつまんで淑女の礼をする。
エーデルワイスの声は、ゲーム内のキャラクターボイスとはちがっていた。
同じく女性の声だが、やや線の細い、しかし、かなり通りのいい声である。
おそらくは、プレイヤー自身の声なのだろう。
もっとも、地球では声をコンピューターで変換するくらいのことは簡単だ。
音声入力して文字に起こしたテキストを、テキスト読み上げソフトに代読させる……といった、手の込んだこともできるらしい。
だから、この声が本当にプレイヤーの生の声なのかはわからない。
敵に背を向け「前説」するエーデルワイスを、ゲームの中のエスメラルダは、体重を預ける足をたまに変えながら、何をするでもなく待っている。
「現実」では異常な光景だが、Carnageでは日常だ。
『エスメラルダ、強いですよね! 斬打射三属性のソードウィップ! 魔法による攻撃と防御! 「未来視の魔眼」による予測回避! 隙のない強さで、まさに中盤の関門、中級者キラーといった相手です! みんな苦労させられたと思うんですけど、わたしが独自に考案したやり方で世界記録を出せたので紹介します! 「未来視の魔眼」のタネさえわかればそんなに難しくないので、ぜひ試してみてくださいね! まずは――』
実に軽い、親しみやすい口調で、エーデルワイスが解説を始めた。
その明るい口ぶりに激しい違和感を覚えたが、語りが進むうちに、そのあまりの内容に全身に鳥肌が立っていた。
「や、ば……マジ、かよ」
『言葉だけだとわかりにくいので実演しながら解説しますね! 記録出した時のアーカイブは概要欄に貼っておきます! 併せてご覧いただければさいわいです!』
エーデルワイス――いや、それを操る「ショコラ」が、エスメラルダへと一歩を踏み出した――
「……すげえ」
すべてを見終えた俺の声はかすれていた。
Carnageは、ただのゲームのはずだ。
ゲーム――この世界でいえば、将棋のような遊戯の延長だ。
そのただのゲームに、おそろしいほどの時間とエネルギーをかけて、プレイヤーたちはすべての疑問を解き明かしていた。
その解答は地球の技術的な知識を前提にしてるせいで俺にとっては難解だったが、この動画を見たことで、すべての情報が整理された。
「ショコラ」さんが編み出した方法を実行するにはいくつもの準備が必要だが、さいわいなことにトラキリア城内にあるものとテント設備を使えばなんとかなりそうだ。
「これなら、勝てる可能性がぐっと上がる……!」
俺は、全身から血を流しながらエスメラルダと戦っているノエルに叫ぶ。
「――ノエル! 必要なことはすべてわかった! もう十分だ!」
その声を聞いたノエルが、エスメラルダから大きく跳びのいた。
「何っ!?」
虚を突かれたエスメラルダが追撃できないでいるうちに、ノエルは反転し、急加速した。
目標は、縛られたアリシアを拘束している敵兵だ。
「なっ……!」
「――死ねっ!」
ノエルが投げ放った戦斧が、その敵兵の頭を肉塊に変えた。
ノエルは縛られたままのアリシアをもぎ取ると、今度は俺のほうへ向かってくる。
「このっ!?」
俺を拘束していた敵兵が、俺を地面に転がして、手にした剣を振りかぶる。
ノエルはそれを肩で受けた。
ノエルはそのまま敵兵につっこみ、アリシアごと俺に倒れ込むように迫ってくる。
俺とアリシア、ノエルがひとかたまりになってその場に倒れた。
隙だらけの完全な死に体だ。敵はこっちの意図が読めないだろう。
俺は血にまみれたノエルに言う。
「よくやってくれた、ノエル」
「アリシア様のためにやったことです」
「必ず仇を討つからな」
俺の言葉にノエルがうなずき目を閉じる。
縄で縛られたままのアリシアが言った。
「お兄様。『次』のわたしによろしく言ってくださいね」
「わかったよ」
俺はなるべく二人に身を寄せて、心のなかで「自爆」を使う!と強く念じた。
直後、俺の身体が爆発して――
GAME OVER
俺はタイトル画面に戻された。
†
「ノエル……ありがとう。おまえのおかげで目が覚めた」
血色のタイトルロゴが涙に滲む。
セーブ&ロードをすれば、アリシアとノエルの犠牲はなかったことになる。
だが、あの状況でノエルが見せてくれた献身がなければ、俺は答えにたどり着けなかったはずだ。
俺は何度も深呼吸を繰り返し、やっとのことで気持ちを落ち着ける。
「……さて、準備をしないとな」
ここからは、俺の孤独な戦いだ。
†
俺は、スロット1のセーブデータから再開する。
「人間に生まれたことを呪――」
「……黙れ」
俺は手にしたソードウィップを振るって、追っ手の首を刎ね飛ばす。
最初の敵兵のあとから通路を抜けてこようとしていた残りの敵兵には、「フレイムストーム」をお見舞いする。
狭い通路に範囲魔法を撃たれ、敵は炎の中で悶えて死んだ。
……これだけのことができるようになるまでに、俺は何回やり直したことだろう。
やり直した回数など、いちいち数えてはいなかった。
タイトル画面やテントでは時間が経過しないため、スロット1から再開すれば、「現実」の時間は常に「942年双子座の月4日 05:03」のままだ。
俺がどれくらいの「時間」、セーブ&ロードを繰り返したかを計測する客観的な方法は存在しない。
十回や二十回ならなんとなくでわかるが、百回を超えたはずのあたりから、時間の感覚が麻痺してきた。
200、300ではきかないはずだから、たぶん1000回は超えただろう。
3000、4000回ではない気がするから、おそらく10000回に達したはずだ。
そんな当て推量で振り返るくらいで、正確なところはわからない。
「ショコラ」さんの動画に示されていた戦法には、いくつもの前提条件を満たす必要がある。
必要な道具とスキルを揃えるだけでも、相当な回数の繰り返しが必要だった。
その後、エスメラルダを相手に「ショコラ」さんの戦法を試してみたが、もちろん一発でクリアできるはずもない。
「ショコラ」さんが使っていた「エーデルワイス」は、Carnageでは最弱の主人公キャラかもしれないが、それでも主人公の一人であることに変わりはない。
凡才の第三王子がそこに並ぶには、愚直に回数を重ね、スキルを育て、戦法を身に染み込ませる必要があった。
俺は追っ手を秒で屠ると、すぐにファストトラベルで謁見の間へと転移した。
この時点の謁見の間にはまだ敵兵がいる。
「……邪魔だ」
俺は剣のままのソードウィップで敵兵を片っ端から斬り伏せた。
謁見の間に入り、両親を貫く黒い剣を引き抜いた。
少し離れたところに転がっていた兜を持ち上げ、
「グレゴール兄さん。ひさしぶり」
「えっ、ええっ? ひ、ひさしぶりってどういうことだい? そ、それに、今の戦いは? ものすごい強さに見えたけど!?」
兜に隠れていたシマリスが、戸惑った声を上げた。
「話はこれからするよ」
「なんだか雰囲気が変わってるけど……本当にユリウスなのかい?」
「俺は俺だよ」
謁見の間下のセーブポイントからキャンプに入り、テント内でグレゴール兄さんに事情を説明する。
テントの中には、何度も重複して回収した黒い剣が山のように積み重なっている。
両親を殺した仇のような剣ではあるが、優秀な素材なので念のために集めている。
セーブデータ間進行状況引き継ぎバグは、「現実」ではテント内の物資にまで有効らしかった。
剣を回収してテントに放り込んだ上でロードし直すと、何本でも同じ剣を回収することができるのだ。
「ううむ……すさまじい話だ。ユリウス、君は大変な試練を引き受けたものだね」
「今さらだよ。もう何年も前のことのように思える。時間は一分たりとも経ってないのにね」
「ユリウス……。僕は君のことを兄として誇りに思うよ。君の作戦に僕も協力しよう」
「ありがとう、兄さん」
実は、この会話も何度目になるかわからない。
あまりに説明を繰り返したせいで、動画の「ショコラ」さん並みにわかりやすい解説になってるかもしれない。
グレゴール兄さんが質問することもすべてわかってるので、先回りで説明することができるのだ。
俺は念のためにテントでひと眠りすると、テントを出て、セーブポイントに手をかざす。
【セーブ】
・
・
スロット19:
ユリウス・ヴィスト・トラキリア
トラキリア城・地下隠し通路入口(北)
942年双子座の月4日 05:09
「エスメラルダ戦準備完了」
・
・
・
これで、準備はすべて整った。
「さあ、行こうか」
俺はファストトラベルで星見の尖塔へと転移する。
『トラウマ粉砕! ドSメラルダを2分11秒49でボコボコにします! 「未来視の魔眼(笑笑笑)」には意外にも○○○○○○○が超有効!?【エーデルワイス編】』
「……は?」
ノエルの死闘にはあまりにもふさわしくないタイトルに、俺は間の抜けた声を漏らす。
だが、「それ」が必要な情報であることは確信できた。
記憶の中の俺の手がマウスを動かし、再生ボタンをクリックする。
画面の中央、少し離れた場所に、エスメラルダが映っていた。
ノエルと戦っている「現実」のエスメラルダじゃない。
Carnageのゲーム内のエスメラルダだ。
そして、プレイヤーキャラクターがその手前に立っている。
二十歳くらいの金髪縦ロールの貴族令嬢然とした、息を呑むほどの美女。
プレイヤーが主人公として選択可能なキャラクターの一人、「エーデルワイス」だ。
最弱主人公として名高いエーデルワイスは、右手にソードウィップを持っていた。
鞭形態のソードウィップを、プレイヤーは片手で縄跳びのように振り回している。
まるで手持ち無沙汰だから遊んでいるような――いや、実際にその通りなんだろう。
エーデルワイスはエスメラルダから一定距離を置いた地点に立っている。
そこより少しでも近づくと、エスメラルダとの戦闘が始まるギリギリのラインだ。
エーデルワイスがこちらを向き、にっこり笑って話を始める。
『みなさんこんにちは。ショコラです。今日は、エスメラルダの攻略のほう、やっていきたいと思います! 参考になりましたら、高評価、チャンネル登録よろしくおねがいしますね!』
エーデルワイスがスカートをつまんで淑女の礼をする。
エーデルワイスの声は、ゲーム内のキャラクターボイスとはちがっていた。
同じく女性の声だが、やや線の細い、しかし、かなり通りのいい声である。
おそらくは、プレイヤー自身の声なのだろう。
もっとも、地球では声をコンピューターで変換するくらいのことは簡単だ。
音声入力して文字に起こしたテキストを、テキスト読み上げソフトに代読させる……といった、手の込んだこともできるらしい。
だから、この声が本当にプレイヤーの生の声なのかはわからない。
敵に背を向け「前説」するエーデルワイスを、ゲームの中のエスメラルダは、体重を預ける足をたまに変えながら、何をするでもなく待っている。
「現実」では異常な光景だが、Carnageでは日常だ。
『エスメラルダ、強いですよね! 斬打射三属性のソードウィップ! 魔法による攻撃と防御! 「未来視の魔眼」による予測回避! 隙のない強さで、まさに中盤の関門、中級者キラーといった相手です! みんな苦労させられたと思うんですけど、わたしが独自に考案したやり方で世界記録を出せたので紹介します! 「未来視の魔眼」のタネさえわかればそんなに難しくないので、ぜひ試してみてくださいね! まずは――』
実に軽い、親しみやすい口調で、エーデルワイスが解説を始めた。
その明るい口ぶりに激しい違和感を覚えたが、語りが進むうちに、そのあまりの内容に全身に鳥肌が立っていた。
「や、ば……マジ、かよ」
『言葉だけだとわかりにくいので実演しながら解説しますね! 記録出した時のアーカイブは概要欄に貼っておきます! 併せてご覧いただければさいわいです!』
エーデルワイス――いや、それを操る「ショコラ」が、エスメラルダへと一歩を踏み出した――
「……すげえ」
すべてを見終えた俺の声はかすれていた。
Carnageは、ただのゲームのはずだ。
ゲーム――この世界でいえば、将棋のような遊戯の延長だ。
そのただのゲームに、おそろしいほどの時間とエネルギーをかけて、プレイヤーたちはすべての疑問を解き明かしていた。
その解答は地球の技術的な知識を前提にしてるせいで俺にとっては難解だったが、この動画を見たことで、すべての情報が整理された。
「ショコラ」さんが編み出した方法を実行するにはいくつもの準備が必要だが、さいわいなことにトラキリア城内にあるものとテント設備を使えばなんとかなりそうだ。
「これなら、勝てる可能性がぐっと上がる……!」
俺は、全身から血を流しながらエスメラルダと戦っているノエルに叫ぶ。
「――ノエル! 必要なことはすべてわかった! もう十分だ!」
その声を聞いたノエルが、エスメラルダから大きく跳びのいた。
「何っ!?」
虚を突かれたエスメラルダが追撃できないでいるうちに、ノエルは反転し、急加速した。
目標は、縛られたアリシアを拘束している敵兵だ。
「なっ……!」
「――死ねっ!」
ノエルが投げ放った戦斧が、その敵兵の頭を肉塊に変えた。
ノエルは縛られたままのアリシアをもぎ取ると、今度は俺のほうへ向かってくる。
「このっ!?」
俺を拘束していた敵兵が、俺を地面に転がして、手にした剣を振りかぶる。
ノエルはそれを肩で受けた。
ノエルはそのまま敵兵につっこみ、アリシアごと俺に倒れ込むように迫ってくる。
俺とアリシア、ノエルがひとかたまりになってその場に倒れた。
隙だらけの完全な死に体だ。敵はこっちの意図が読めないだろう。
俺は血にまみれたノエルに言う。
「よくやってくれた、ノエル」
「アリシア様のためにやったことです」
「必ず仇を討つからな」
俺の言葉にノエルがうなずき目を閉じる。
縄で縛られたままのアリシアが言った。
「お兄様。『次』のわたしによろしく言ってくださいね」
「わかったよ」
俺はなるべく二人に身を寄せて、心のなかで「自爆」を使う!と強く念じた。
直後、俺の身体が爆発して――
GAME OVER
俺はタイトル画面に戻された。
†
「ノエル……ありがとう。おまえのおかげで目が覚めた」
血色のタイトルロゴが涙に滲む。
セーブ&ロードをすれば、アリシアとノエルの犠牲はなかったことになる。
だが、あの状況でノエルが見せてくれた献身がなければ、俺は答えにたどり着けなかったはずだ。
俺は何度も深呼吸を繰り返し、やっとのことで気持ちを落ち着ける。
「……さて、準備をしないとな」
ここからは、俺の孤独な戦いだ。
†
俺は、スロット1のセーブデータから再開する。
「人間に生まれたことを呪――」
「……黙れ」
俺は手にしたソードウィップを振るって、追っ手の首を刎ね飛ばす。
最初の敵兵のあとから通路を抜けてこようとしていた残りの敵兵には、「フレイムストーム」をお見舞いする。
狭い通路に範囲魔法を撃たれ、敵は炎の中で悶えて死んだ。
……これだけのことができるようになるまでに、俺は何回やり直したことだろう。
やり直した回数など、いちいち数えてはいなかった。
タイトル画面やテントでは時間が経過しないため、スロット1から再開すれば、「現実」の時間は常に「942年双子座の月4日 05:03」のままだ。
俺がどれくらいの「時間」、セーブ&ロードを繰り返したかを計測する客観的な方法は存在しない。
十回や二十回ならなんとなくでわかるが、百回を超えたはずのあたりから、時間の感覚が麻痺してきた。
200、300ではきかないはずだから、たぶん1000回は超えただろう。
3000、4000回ではない気がするから、おそらく10000回に達したはずだ。
そんな当て推量で振り返るくらいで、正確なところはわからない。
「ショコラ」さんの動画に示されていた戦法には、いくつもの前提条件を満たす必要がある。
必要な道具とスキルを揃えるだけでも、相当な回数の繰り返しが必要だった。
その後、エスメラルダを相手に「ショコラ」さんの戦法を試してみたが、もちろん一発でクリアできるはずもない。
「ショコラ」さんが使っていた「エーデルワイス」は、Carnageでは最弱の主人公キャラかもしれないが、それでも主人公の一人であることに変わりはない。
凡才の第三王子がそこに並ぶには、愚直に回数を重ね、スキルを育て、戦法を身に染み込ませる必要があった。
俺は追っ手を秒で屠ると、すぐにファストトラベルで謁見の間へと転移した。
この時点の謁見の間にはまだ敵兵がいる。
「……邪魔だ」
俺は剣のままのソードウィップで敵兵を片っ端から斬り伏せた。
謁見の間に入り、両親を貫く黒い剣を引き抜いた。
少し離れたところに転がっていた兜を持ち上げ、
「グレゴール兄さん。ひさしぶり」
「えっ、ええっ? ひ、ひさしぶりってどういうことだい? そ、それに、今の戦いは? ものすごい強さに見えたけど!?」
兜に隠れていたシマリスが、戸惑った声を上げた。
「話はこれからするよ」
「なんだか雰囲気が変わってるけど……本当にユリウスなのかい?」
「俺は俺だよ」
謁見の間下のセーブポイントからキャンプに入り、テント内でグレゴール兄さんに事情を説明する。
テントの中には、何度も重複して回収した黒い剣が山のように積み重なっている。
両親を殺した仇のような剣ではあるが、優秀な素材なので念のために集めている。
セーブデータ間進行状況引き継ぎバグは、「現実」ではテント内の物資にまで有効らしかった。
剣を回収してテントに放り込んだ上でロードし直すと、何本でも同じ剣を回収することができるのだ。
「ううむ……すさまじい話だ。ユリウス、君は大変な試練を引き受けたものだね」
「今さらだよ。もう何年も前のことのように思える。時間は一分たりとも経ってないのにね」
「ユリウス……。僕は君のことを兄として誇りに思うよ。君の作戦に僕も協力しよう」
「ありがとう、兄さん」
実は、この会話も何度目になるかわからない。
あまりに説明を繰り返したせいで、動画の「ショコラ」さん並みにわかりやすい解説になってるかもしれない。
グレゴール兄さんが質問することもすべてわかってるので、先回りで説明することができるのだ。
俺は念のためにテントでひと眠りすると、テントを出て、セーブポイントに手をかざす。
【セーブ】
・
・
スロット19:
ユリウス・ヴィスト・トラキリア
トラキリア城・地下隠し通路入口(北)
942年双子座の月4日 05:09
「エスメラルダ戦準備完了」
・
・
・
これで、準備はすべて整った。
「さあ、行こうか」
俺はファストトラベルで星見の尖塔へと転移する。
0
お気に入りに追加
457
あなたにおすすめの小説
傭兵アルバの放浪記
有馬円
ファンタジー
変わり者の傭兵アルバ、誰も詳しくはこの人間のことを知りません。
アルバはずーっと傭兵で生きてきました。
あんまり考えたこともありません。
でも何をしても何をされても生き残ることが人生の目標です。
ただそれだけですがアルバはそれなりに必死に生きています。
そんな人生の一幕
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる