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77 ウンディーネ

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「う、うおおおっ!?」
「うわあああっ!」

 シェリーさんと騎士が、泡の中で悲鳴をあげる。

 私の作った魔法の泡は無事三人を包みこんでたが、激流の勢いには逆らえない。
 泡は激しく揺さぶられ、回転しながら流される。

(このままだとマズいな)

 泡は破れないと思うが、水流に乗りっぱなしでは森の外の搬出口まで流されかねない。

「岩よ、大地に根を張り聳え立て!」

 私はとっさに、泡の後方に魔法で巨岩を生み出した。
 泡はその巨岩にぶつかり、動きを止める。
 しかしその分、泡の前面にかかる水流の圧力が高くなり、私はエーテルを振り絞って泡をなんとか維持し続ける。

 水流は徐々に弱まり、最後には膝くらいの高さにまで水位が下がった。

 私はそこで、泡を解除し、前に向かってダッシュをかける。

「ミナト!?」

 後ろでシェリーさんが叫ぶがいまは無視。

 膝までの水に苦労しながら通路を進み、水のやってきたほうに近づいていく。

 通路の先に、青い何かがいるのがわかった。

「ま、まずいでち! 流されなかったみたいでち!」

「に、逃げるのでち!」

 青い人型の何かが二人、声をかけ合って逃げようとする。

「エーテルショット!」

 私はその「二人」の先の天井をエーテルショットで打ち砕く。
 降り注ぐ瓦礫に、「二人」はびくっと足を止める。

「待って!」

「に、人間でち!」

「怒ってるでち!」

 改めて「二人」を観察する。
 形は、一応人間の形をしているが、人間じゃないのは見ればあきらかだ。
 なにせ、肌は水色に透き通り、その奥には内臓も見えない。
 全体が、水色のゲルのようなものでできていて、目にあたる部分には白目のないアクアマリンの瞳がふたつある。
 身長は、私の腰よりは高いくらい。

 私のゲーム脳で言うなら、

「ええっと、ウンディーネ、みたいなものかな」

「ウンディーネを知ってるのでち?」

 二人のうち、フォルムが女の子っぽいほうが言った。

(でも、人語をしゃべってるね)

 信頼を得るために、オプションから精霊語を選んでみる。

「あなたたちはどうしてここにいるの?」

 そう言うと、二人はびっくりした顔をする。

「ウンディーネの言葉がわかるでちか」

「うん、ノームに会ったことがあって」

「ああ、あいつらでちか。穴ばっか掘ってその中にひきこもってばかりの根暗な連中でち」

「そ、そう」

 けっこう明るかった印象あるけどな。

「それで、さっきの水流はあなたたちのしわざなの?」

 そう聞くと、二人はバツの悪そうな顔をした。

「に、人間をこの奥に入れるわけにはいかないでち。ここはウンディーネの聖域なんでち」

「私は、べつに聖域を荒らしたいわけじゃないんだ。夢法師ってやつを追ってて……」

 私が出した名前に、ウンディーネ二人がぎくりとした。
 二人は顔を見合わせてから言った。

「そ、そんな人は知らないでち」

「そ、そうでち。知ってても教えないでち」

「あ、余計なことを言うなでち!」

 二人目のウンディーネが口を押さえた。

 そのあいだに、後ろからシェリーさんたちも追いついてくる。

「ええと、どういうことか、教えてくれる?」

 私の言葉に、ウンディーネ二人がうつむいた。
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