79 / 80
第五章 15歳
77 鬼か蛇か
しおりを挟む
俺とロゼは、「影渡り」を使ってウルヴルスラの外を行く。
山がちの森の中を潜り抜け、帝国兵の本陣へと近づいた。
帝国兵は、ウルヴルスラから数キロ距離を取った地点に簡単な陣を敷いていた。
吸魔煌殻兵――たぶん、黄装槍兵だろう――を中心に、一般兵も多くいる。
数は、千くらいだろう。
その中心には、黒地に赤い逆三角の旗が立った天幕がある。
その周囲には、吸魔煌殻兵ではなく、赤い甲冑姿の騎士たちが立っていた。
気配からして吸魔煌殻ではなく、そのレプリカを着けてるようだ。
「もしかして……」
木立のあいまから「望遠」の魔法を使って陣地を観察しながら俺はつぶやく。
隣で同じく「望遠」で陣地を見てたロゼが言う。
「ひょっとして、霊威兵装の時の皇女様?」
「だろうな。キロフだけじゃなく、ネルズィエンも出てきてたのか」
キロフとしては、年若い学園の生徒騎士を虐殺する役目をネルズィエンに押し付け、その反応を愉しむつもりだったのだろう。
……あいつの趣味嗜好が読めるようになってきたのは不本意ではあるけどな。
もともと帝国は現在帝国に西隣するヒュルベーンを攻めている最中だ。
主要な戦力は西側に向けられ、反対にあるミルデニア側に差し向けられる戦力は限られてるはずだ。
六年前の戦役以来疎んじられてるネルズィエンはヒュルベーン攻めには動員されておらず、ちょうど身体が空いている。
お鉢が回ってきたのは、何もキロフの趣味のせいだけではないのだろう。
「キロフがやられたって情報は伝わってなさそうだな」
もし伝わってたら、逃げ出す準備でもっと慌ただしくなってるはずだ。
最初にハントの妹の人質を連れてきていた黒装猟兵は、ウルヴルスラに戻る前にロゼとユナが片付けてくれていたらしい。
それでも、まともな軍隊なら黒装猟兵がやられたことに気づくはずだが、そうでないところを見ると、人質関連の動きはキロフの独断専行だったのかもしれない。
キロフは丞相なのだから、自分の判断で動いても、独断専行とは言わないのかもしれないが。
ともあれ、ネルズィエンがキロフの動きを知らないのは事実だろう。
「まさか、会いに行くつもり?」
「さっさと撤退してもらったほうがいいだろ?」
「そんなこと言って……美人に会いたいだけじゃないの?」
「俺にはロゼがいるじゃないか」
「それとこれとは別腹だ! とか言わない?」
「言わないって」
美人、美少女と言っても、たしかにネルズィエンとロゼはタイプが真逆だ。
ネルズィエンは霜降りステーキのような豪奢な美女で、ロゼは砂糖菓子みたいな儚げな雰囲気の美少女である。
別腹というのは言いえて妙な気がしたが、もちろん、そんな地雷を踏むようなことは口にしない。
「気になることもあってな。ネルズィエンがいるならちょうどいい」
「そういうことならいいけど……」
俺とロゼは影に飛び込み、帝国軍の陣地に侵入する。
ネルズィエンが指揮してるせいか、さすがにこれまでの反省を踏まえ、要所に兵を置いて、陰を監視させてるようだった。陰ができないようにか、篝火も多めに置かれてる。
とはいえ、俺とロゼならこんな程度はどうとでもなる。
指揮官の天幕に潜り込む。
天幕の中には、予想通りネルズィエンがいた。
霊威兵装研究所の時と同じぴったりした黒いバトルスーツを着て、その上に将校の証らしい赤いマントを羽織ってる。マントは右肩の前で鷲の形をした金の留め具でまとめられていた。なかなか威厳のある姿である。
ネルズィエンは床机に座り、地図の広げられた卓に肘をついて顎を支え、時折ため息をつきながら、地図や天井を睨んでいた。
俺はとりあえず、ネルズィエンの背後の影から忍び寄り、
「――わっ!」
「うひゃあああああっ!?」
どがしゃああ、と音を立てて、ネルズィエンが卓をひっくり返した。
「き、ききき、貴様、エリアック!」
「や、ひさしぶり」
床に転げて俺を見上げるネルズィエンに、片手を上げて挨拶する。
「ちょっと、エリア……」
俺の後ろに、呆れ顔のロゼが姿を表す。
「お悩みのようだな」
俺がネルズィエンに言うと、
「くっ、貴様がここにいるということは……」
「ああ。キロフは倒した」
「ど、どうやって!?」
「秘密だ」
「そうか……鬼と蛇と、どちらが勝つかとは思ったが、勝ったのは貴様というわけか」
「驚かないんだな? っていうか、鬼と蛇ってどっちがどっちだよ」
「貴様が蛇に決まってる。
いや、そのようなことはどうでもいい。
たしかなのか?」
「たしか……と思うんだけどな」
「なぜ曖昧なのだ? 仕留め損ねたか?」
「いや、現れたキロフは倒したよ。
ただ……なんつーか、手応えが足りないというか、『仕留めた』って感覚が薄くてな」
キロフを倒した時の魔法に手応えはあったが、その手応えは、人を一人仕留めた割には軽かった。
キロフはゼーハイドに存在を喰われていた。
「存在を喰われる」というのは想像しにくいが、ウルヴルスラによれば、存在を喰われると「その人間が存在しているという感じ」が薄くなるのだという。
そのせいかとも思うのだが、妖怪変化みたいな奴のことだ。
そもそもここに現れた「奴」は本当に本物だったのか?
そんな疑問すら浮かんでくる。
実際、闘戯場での決戦では、奴は複数の分身を生み出していた。
あれは相手の意識に浮かんだ自分を具現化させたものだったが、「分身」という発想が奴にあるのなら、別の方法で「予備」、あるいは影武者を用意してる可能性も捨てきれない。
「ひょっとしたら、奴には影武者がいるかもしれない。
ネルズィエン、おまえは以前、自分が人質になって処刑されたとしても、古代宮殿ラ=ミゴレはおまえのクローンを作れると言ってたな?」
「キロフにクローンがいるというのか?
だが、あれを使えるのは皇族だけのはず……」
「皇帝が許可を出せば使える、なんてことはないのか?」
「わからぬ。そこまでは聞かされていない」
「キロフのクローンを宮殿で見たことは?」
「ない。
そもそも、クローンとはいうが、魂は一度にひとつの身体にしか入ることができぬ。
キロフが今の身体で活動している以上、クローンを作ったところで、それはただの肉の器にすぎん。
そんな肉の器でも、時間とともに自我が芽生えるというが、その自我は当然、オリジナルの自我とは別個のものだ。双子のきょうだいのようなものだな」
「じゃあ、ネルズィエンが人質として刑死したとして、新しい『ネルズィエン』を古代宮殿が生み出したとしても……」
「わたしとは別の人間だな。
だが、それは私から見ればの話だ。他の者からすれば、私と同じ血統と能力、精神性を持つ新しい『ネルズィエン』を、今の私と区別する必要がない。まさしく私の代わりというわけだ。事情を知らぬ者なら、入れ替わったことにも気づかないだろう」
ネルズィエンの話はわかりにくいが、こういうことだろう。
もし自分を百パーセント完璧にコピーした分身を生み出したとする。
そのコピーは何から何まで自分そっくりだが、別個の肉体を持ってる以上、そいつはいくら自分に似てても「他人」である。
その状態で自分が死んだとしても、自分の意識がコピーの方に合流するということはない。
自分が死んだ時点で自分の意識は消滅し、自分そっくりの他人が、自分とは別に生きてるだけだ。
もっとも、コピー側から見ると、脳内まで完璧にコピーされているのなら、コピーされる以前からの意識が連続しているので、コピーの主観としては、最初から最後まで自分は生きているということになる。
それを外面的に見れば、自分は死んだが、そのそっくりさんが生きている状態であり、自分が死んだことが知られていなければ、そっくりの人物がそこにいる以上、他人からは「自分」は生きていると思われる。
キロフにそうしたコピーがいたとしたら、俺が倒したキロフはたしかに死んだものの、外面的にはキロフとまったく同じ個体がどこかにいる、ということになってくる。
それをこちら側の視点から見れば、「キロフはまだ生きている」と言っても、「キロフは死んだがキロフ2号が生きている」と言っても、実質的にはほとんど同じことだ。
とはいえ、
「キロフが自分のクローンを作っていたとしても、それは俺が倒したキロフと連続性を持たないってことだよな。
あいつがそんな中途半端な形に満足するか? 自分が死んだら、コピーだけ生きててもしょうがないと思いそうな気もするけどな」
俺が倒した方がコピーだったという可能性もなくはない。
ただ、あれだけはっきりした自我を持ってた以上、たとえコピーであろうとも、自ら死地に赴くようなことをするものだろうか?
あれだけの魔法が使える相手に、暗示をかけるのも難しいだろう。
「わからぬ。自分が死んだ後のことなどどうでもいいと思いそうでもあるし、逆に、自分のコピーを残すことに執着しそうでもある」
「クローンとして用意した肉の器に、現在のキロフを移すことはできないのか?」
「わからぬな。だが、霊威兵装のようなものがあったのだ。キロフが己の魂を別の肉体に移すすべを持っていたとしても驚かぬ」
「霊威兵装か。それもそうだな……」
やっぱり、これはキナ臭い。
闘戯場でキロフの見せた分身は、意識を一部共有しつつも、それぞれ独自の判断で動いているように見えた。
つまりキロフは、魂は一度にひとつの身体にしか入れないという原則を超えている。
ついでにいえば、そもそもキロフは異世界からの転生者だ。
異世界から魂をこっちに運んできて、現在のキロフの身体に入れた者がいるわけだ。
さっき俺に倒されたキロフから魂を抜き取り、別の肉体へと移し替える――そんなこともできるのかもしれない。
手応えが薄かったのは、キロフの一部しか仕留められなかったからだとも考えられる。
(キロフが迂闊に突出して罠にかかったように見えたのもそのせいか?)
キロフにとって現在の肉体が替えの利くものなのだとしたら、こっちの戦力をはかるために、あえて罠にかかったという可能性まで出てくるな。
「俺の気の回しすぎならいいんだけどな……」
「何かひっかかることでもあるのか?」
ネルズィエンが聞いてくる。
俺は、自分の推測をネルズィエンに語る。
もちろん、転生の部分はぼかしてな。
ネルズィエンの顔が青くなった。
「なんだと……。もしそのようなことができるのなら、奴はほとんど不死身ではないか!」
「そうだな」
異世界への転生は、神レベルの存在でないとできないことらしい。
ウルヴルスラにもそれはできず、俺をこの世界に転生させたのは、ウルヴルスラのネトゲ仲間だったという別の世界の女神様だ。
だが、その女神様がキロフを転生させたってことはありえない。
いまだ姿を見せていない別の何者かが、キロフを転生させたはずなのである。
もしその存在が、いまだにキロフに便宜を図っているとしたら……
「だとしたら、わたしは急ぎ国表に帰らねば。キロフ復活まで時間の猶予があるかもしれん。そのあいだに権力を掌握し、お父様を説得できれば、キロフを宮殿から排除できる可能性もある」
「それなら、これを持って行ってくれ」
俺は、制服のポケットから端末を取り出し、ネルズィエンに渡す。
俺の端末ではなく、ウルヴルスラに用意してもらったゲスト用の端末だ。
「これは?」
「ラ=ミゴレにはないのか?」
「初めて見る。ということは、黄昏人の遺産か」
「ああ。魔力を通してみてくれ」
「うおっ!? これは……」
「それを使って離れた相手と連絡を取ることができるんだ。ただ、ウルヴルスラから離れると通じなくなるらしい。どのくらいの距離まで使えるかは……そういえば聞いてなかったな」
『周辺の魔力の布置にも影響されるが、ウルヴルスラから数十キロ程度』
「だそうだ」
ネルズィエンに渡した端末から聞こえたウルヴルスラの声に肩をすくめる。
「ふむ……ミルデニアの国境付近まで近づけば使えるということか」
「緊急時の連絡に使ってくれ」
「いいのか、こんなものを。
それに、わたしは帝国軍人なのだぞ。スパイのような真似はできん」
「キロフを排除したいのは同じだろ?
俺の心配が杞憂ならそれでいい。
だが、もし当たってたらどうする? ネルズィエンだけで対処できる問題じゃないはずだ」
「それは……」
ネルズィエンが眉根を寄せた。
「帰りに、定期的に連絡を入れてみてくれ。そうすれば、どこまでなら通じるかが確かめられる」
「待て、協力するとは言ってない!」
「じゃあ、敵対するつもりか?
言っとくが、今の俺は6年前の俺じゃない。ここにいる帝国兵を全滅させるのは、そんなに難しいことじゃない。ロゼもいるしな」
「くっ……」
ネルズィエンが歯を噛んでうつむいた。
「べつに、スパイになれとは言ってない。ネルズィエンの判断で、渡せる情報と渡せない情報を区別すればいいだけだ」
まあ、定義によっては、それもスパイの範疇に入りそうだけどな。
最初は合法的なことから始めさせて、徐々に非合法な情報窃盗に手を染めさせ、逃げられなくなってから本格的な諜報活動を強制する――
前世のノンフィクションでそんな話を読んだことがある。
もっとも、俺にそこまでやるつもりはない。
ネルズィエンが言った。
「なぜ、わたしに暗示をかけない? 貴様になら、わたしを言いなりにするのは簡単なはずだ」
「そういうのはやめたんだ。人間関係が壊れるからな」
と言って俺は、隣にいるロゼの頭を軽く叩く。
ネルズィエンが苦い顔をした。
「これまで散々わたしを利用しておいて……」
「最初に攻めてきたのはそっちだろ。あの時は他にやりようもなかったからな」
「どうだか。わたしの鎧を脱がせて、わたしの身体を嬉々として検分していたではないか」
「ちょっ、エリア!? それ、どういうこと!?」
いらんことを言うネルズィエンに、ロゼが俺の手を払って言ってくる。
「い、いや、吸魔煌殻を脱がせる必要があったし」
実際にはネルズィエンが当時着用してたのは吸魔煌殻のレプリカだったけどな。
当時のネルズィエンの、豊満で引き締まった肢体を思い出してしまう。
今も当時も、ネルズィエンのスタイルは見事である。
ロゼにはない大人の女性の魅力が詰まってることは否定できない。
「うう~! エリアって、絶対おっぱい好きだよね!?」
「そ、そんなことはないぞ? ていうかロゼだってけっこうあるし」
「わたしのはこう、ふわっとした感じだけど、この人のはむっちり引き締まった感じなんだもん! わたしじゃ鍛えてもこんな風にはならないよ!」
「そりゃそうだろうけど、どっちがいい悪いじゃないだろ。ロゼにはロゼの魅力がある」
「それってネルズィエンさんも同じくらい魅力があるって言ってるよね!? どうして嘘でも『ロゼがいちばんかわいいよ』って言ってくれないの!? わたしたち付き合ってるのに!」
「落ち着けって。俺にとってはロゼがいちばん大切だからさ」
「本当にぃ? 霊威兵装の件の帰りにこの人がキロフに拐われた時、わたしを置いて追いかけたよね?」
「うっ、あれは判断ミスだったと思ってるって」
「それだけじゃないよ! 最近はユナちゃんにもなんか優しいし! ユナちゃんはただでさえエリアに助けられて好意を持ってるんだから、優しくされたらイチコロなんだよ!?」
「ユナは関係ないだろ?」
「メイベル先輩とも仲がいいよね!? 読んだ本の話で盛り上がったりしてるし……」
「バイトの先輩と後輩だって」
「……おまえら、敵陣で痴話喧嘩をしないでくれるか?」
ネルズィエンが、さすがに呆れた顔で突っ込んでくる。
ネルズィエンはため息をついた。
「はぁ……。わかった。キロフの消息については、なるべく連絡を入れるようにしよう。端末の通信範囲に、怪しまれずに入れる機会があれば、だがな」
「頼むぜ。
だが、無理はするなよ? キロフが丞相であり続けるなら、遠からずこっちの耳には入るんだ。早く知りたいことは事実だが、危険を冒してまで急ぐ必要はない。
それよりは、帝国内でネルズィエンの身が危なくなった時の保険とでも思ってくれ」
「そんなことを言うから、その娘が不安になるのだ」
「そうだよ!」
ネルズィエンの言葉に、ロゼが頬を膨らませる。
「ふん。鬼と蛇なら、血が通ってる分だけ蛇の方がマシだろう」
ネルズィエンはそう言うと、天幕を出て、撤退の準備を始めたのだった。
山がちの森の中を潜り抜け、帝国兵の本陣へと近づいた。
帝国兵は、ウルヴルスラから数キロ距離を取った地点に簡単な陣を敷いていた。
吸魔煌殻兵――たぶん、黄装槍兵だろう――を中心に、一般兵も多くいる。
数は、千くらいだろう。
その中心には、黒地に赤い逆三角の旗が立った天幕がある。
その周囲には、吸魔煌殻兵ではなく、赤い甲冑姿の騎士たちが立っていた。
気配からして吸魔煌殻ではなく、そのレプリカを着けてるようだ。
「もしかして……」
木立のあいまから「望遠」の魔法を使って陣地を観察しながら俺はつぶやく。
隣で同じく「望遠」で陣地を見てたロゼが言う。
「ひょっとして、霊威兵装の時の皇女様?」
「だろうな。キロフだけじゃなく、ネルズィエンも出てきてたのか」
キロフとしては、年若い学園の生徒騎士を虐殺する役目をネルズィエンに押し付け、その反応を愉しむつもりだったのだろう。
……あいつの趣味嗜好が読めるようになってきたのは不本意ではあるけどな。
もともと帝国は現在帝国に西隣するヒュルベーンを攻めている最中だ。
主要な戦力は西側に向けられ、反対にあるミルデニア側に差し向けられる戦力は限られてるはずだ。
六年前の戦役以来疎んじられてるネルズィエンはヒュルベーン攻めには動員されておらず、ちょうど身体が空いている。
お鉢が回ってきたのは、何もキロフの趣味のせいだけではないのだろう。
「キロフがやられたって情報は伝わってなさそうだな」
もし伝わってたら、逃げ出す準備でもっと慌ただしくなってるはずだ。
最初にハントの妹の人質を連れてきていた黒装猟兵は、ウルヴルスラに戻る前にロゼとユナが片付けてくれていたらしい。
それでも、まともな軍隊なら黒装猟兵がやられたことに気づくはずだが、そうでないところを見ると、人質関連の動きはキロフの独断専行だったのかもしれない。
キロフは丞相なのだから、自分の判断で動いても、独断専行とは言わないのかもしれないが。
ともあれ、ネルズィエンがキロフの動きを知らないのは事実だろう。
「まさか、会いに行くつもり?」
「さっさと撤退してもらったほうがいいだろ?」
「そんなこと言って……美人に会いたいだけじゃないの?」
「俺にはロゼがいるじゃないか」
「それとこれとは別腹だ! とか言わない?」
「言わないって」
美人、美少女と言っても、たしかにネルズィエンとロゼはタイプが真逆だ。
ネルズィエンは霜降りステーキのような豪奢な美女で、ロゼは砂糖菓子みたいな儚げな雰囲気の美少女である。
別腹というのは言いえて妙な気がしたが、もちろん、そんな地雷を踏むようなことは口にしない。
「気になることもあってな。ネルズィエンがいるならちょうどいい」
「そういうことならいいけど……」
俺とロゼは影に飛び込み、帝国軍の陣地に侵入する。
ネルズィエンが指揮してるせいか、さすがにこれまでの反省を踏まえ、要所に兵を置いて、陰を監視させてるようだった。陰ができないようにか、篝火も多めに置かれてる。
とはいえ、俺とロゼならこんな程度はどうとでもなる。
指揮官の天幕に潜り込む。
天幕の中には、予想通りネルズィエンがいた。
霊威兵装研究所の時と同じぴったりした黒いバトルスーツを着て、その上に将校の証らしい赤いマントを羽織ってる。マントは右肩の前で鷲の形をした金の留め具でまとめられていた。なかなか威厳のある姿である。
ネルズィエンは床机に座り、地図の広げられた卓に肘をついて顎を支え、時折ため息をつきながら、地図や天井を睨んでいた。
俺はとりあえず、ネルズィエンの背後の影から忍び寄り、
「――わっ!」
「うひゃあああああっ!?」
どがしゃああ、と音を立てて、ネルズィエンが卓をひっくり返した。
「き、ききき、貴様、エリアック!」
「や、ひさしぶり」
床に転げて俺を見上げるネルズィエンに、片手を上げて挨拶する。
「ちょっと、エリア……」
俺の後ろに、呆れ顔のロゼが姿を表す。
「お悩みのようだな」
俺がネルズィエンに言うと、
「くっ、貴様がここにいるということは……」
「ああ。キロフは倒した」
「ど、どうやって!?」
「秘密だ」
「そうか……鬼と蛇と、どちらが勝つかとは思ったが、勝ったのは貴様というわけか」
「驚かないんだな? っていうか、鬼と蛇ってどっちがどっちだよ」
「貴様が蛇に決まってる。
いや、そのようなことはどうでもいい。
たしかなのか?」
「たしか……と思うんだけどな」
「なぜ曖昧なのだ? 仕留め損ねたか?」
「いや、現れたキロフは倒したよ。
ただ……なんつーか、手応えが足りないというか、『仕留めた』って感覚が薄くてな」
キロフを倒した時の魔法に手応えはあったが、その手応えは、人を一人仕留めた割には軽かった。
キロフはゼーハイドに存在を喰われていた。
「存在を喰われる」というのは想像しにくいが、ウルヴルスラによれば、存在を喰われると「その人間が存在しているという感じ」が薄くなるのだという。
そのせいかとも思うのだが、妖怪変化みたいな奴のことだ。
そもそもここに現れた「奴」は本当に本物だったのか?
そんな疑問すら浮かんでくる。
実際、闘戯場での決戦では、奴は複数の分身を生み出していた。
あれは相手の意識に浮かんだ自分を具現化させたものだったが、「分身」という発想が奴にあるのなら、別の方法で「予備」、あるいは影武者を用意してる可能性も捨てきれない。
「ひょっとしたら、奴には影武者がいるかもしれない。
ネルズィエン、おまえは以前、自分が人質になって処刑されたとしても、古代宮殿ラ=ミゴレはおまえのクローンを作れると言ってたな?」
「キロフにクローンがいるというのか?
だが、あれを使えるのは皇族だけのはず……」
「皇帝が許可を出せば使える、なんてことはないのか?」
「わからぬ。そこまでは聞かされていない」
「キロフのクローンを宮殿で見たことは?」
「ない。
そもそも、クローンとはいうが、魂は一度にひとつの身体にしか入ることができぬ。
キロフが今の身体で活動している以上、クローンを作ったところで、それはただの肉の器にすぎん。
そんな肉の器でも、時間とともに自我が芽生えるというが、その自我は当然、オリジナルの自我とは別個のものだ。双子のきょうだいのようなものだな」
「じゃあ、ネルズィエンが人質として刑死したとして、新しい『ネルズィエン』を古代宮殿が生み出したとしても……」
「わたしとは別の人間だな。
だが、それは私から見ればの話だ。他の者からすれば、私と同じ血統と能力、精神性を持つ新しい『ネルズィエン』を、今の私と区別する必要がない。まさしく私の代わりというわけだ。事情を知らぬ者なら、入れ替わったことにも気づかないだろう」
ネルズィエンの話はわかりにくいが、こういうことだろう。
もし自分を百パーセント完璧にコピーした分身を生み出したとする。
そのコピーは何から何まで自分そっくりだが、別個の肉体を持ってる以上、そいつはいくら自分に似てても「他人」である。
その状態で自分が死んだとしても、自分の意識がコピーの方に合流するということはない。
自分が死んだ時点で自分の意識は消滅し、自分そっくりの他人が、自分とは別に生きてるだけだ。
もっとも、コピー側から見ると、脳内まで完璧にコピーされているのなら、コピーされる以前からの意識が連続しているので、コピーの主観としては、最初から最後まで自分は生きているということになる。
それを外面的に見れば、自分は死んだが、そのそっくりさんが生きている状態であり、自分が死んだことが知られていなければ、そっくりの人物がそこにいる以上、他人からは「自分」は生きていると思われる。
キロフにそうしたコピーがいたとしたら、俺が倒したキロフはたしかに死んだものの、外面的にはキロフとまったく同じ個体がどこかにいる、ということになってくる。
それをこちら側の視点から見れば、「キロフはまだ生きている」と言っても、「キロフは死んだがキロフ2号が生きている」と言っても、実質的にはほとんど同じことだ。
とはいえ、
「キロフが自分のクローンを作っていたとしても、それは俺が倒したキロフと連続性を持たないってことだよな。
あいつがそんな中途半端な形に満足するか? 自分が死んだら、コピーだけ生きててもしょうがないと思いそうな気もするけどな」
俺が倒した方がコピーだったという可能性もなくはない。
ただ、あれだけはっきりした自我を持ってた以上、たとえコピーであろうとも、自ら死地に赴くようなことをするものだろうか?
あれだけの魔法が使える相手に、暗示をかけるのも難しいだろう。
「わからぬ。自分が死んだ後のことなどどうでもいいと思いそうでもあるし、逆に、自分のコピーを残すことに執着しそうでもある」
「クローンとして用意した肉の器に、現在のキロフを移すことはできないのか?」
「わからぬな。だが、霊威兵装のようなものがあったのだ。キロフが己の魂を別の肉体に移すすべを持っていたとしても驚かぬ」
「霊威兵装か。それもそうだな……」
やっぱり、これはキナ臭い。
闘戯場でキロフの見せた分身は、意識を一部共有しつつも、それぞれ独自の判断で動いているように見えた。
つまりキロフは、魂は一度にひとつの身体にしか入れないという原則を超えている。
ついでにいえば、そもそもキロフは異世界からの転生者だ。
異世界から魂をこっちに運んできて、現在のキロフの身体に入れた者がいるわけだ。
さっき俺に倒されたキロフから魂を抜き取り、別の肉体へと移し替える――そんなこともできるのかもしれない。
手応えが薄かったのは、キロフの一部しか仕留められなかったからだとも考えられる。
(キロフが迂闊に突出して罠にかかったように見えたのもそのせいか?)
キロフにとって現在の肉体が替えの利くものなのだとしたら、こっちの戦力をはかるために、あえて罠にかかったという可能性まで出てくるな。
「俺の気の回しすぎならいいんだけどな……」
「何かひっかかることでもあるのか?」
ネルズィエンが聞いてくる。
俺は、自分の推測をネルズィエンに語る。
もちろん、転生の部分はぼかしてな。
ネルズィエンの顔が青くなった。
「なんだと……。もしそのようなことができるのなら、奴はほとんど不死身ではないか!」
「そうだな」
異世界への転生は、神レベルの存在でないとできないことらしい。
ウルヴルスラにもそれはできず、俺をこの世界に転生させたのは、ウルヴルスラのネトゲ仲間だったという別の世界の女神様だ。
だが、その女神様がキロフを転生させたってことはありえない。
いまだ姿を見せていない別の何者かが、キロフを転生させたはずなのである。
もしその存在が、いまだにキロフに便宜を図っているとしたら……
「だとしたら、わたしは急ぎ国表に帰らねば。キロフ復活まで時間の猶予があるかもしれん。そのあいだに権力を掌握し、お父様を説得できれば、キロフを宮殿から排除できる可能性もある」
「それなら、これを持って行ってくれ」
俺は、制服のポケットから端末を取り出し、ネルズィエンに渡す。
俺の端末ではなく、ウルヴルスラに用意してもらったゲスト用の端末だ。
「これは?」
「ラ=ミゴレにはないのか?」
「初めて見る。ということは、黄昏人の遺産か」
「ああ。魔力を通してみてくれ」
「うおっ!? これは……」
「それを使って離れた相手と連絡を取ることができるんだ。ただ、ウルヴルスラから離れると通じなくなるらしい。どのくらいの距離まで使えるかは……そういえば聞いてなかったな」
『周辺の魔力の布置にも影響されるが、ウルヴルスラから数十キロ程度』
「だそうだ」
ネルズィエンに渡した端末から聞こえたウルヴルスラの声に肩をすくめる。
「ふむ……ミルデニアの国境付近まで近づけば使えるということか」
「緊急時の連絡に使ってくれ」
「いいのか、こんなものを。
それに、わたしは帝国軍人なのだぞ。スパイのような真似はできん」
「キロフを排除したいのは同じだろ?
俺の心配が杞憂ならそれでいい。
だが、もし当たってたらどうする? ネルズィエンだけで対処できる問題じゃないはずだ」
「それは……」
ネルズィエンが眉根を寄せた。
「帰りに、定期的に連絡を入れてみてくれ。そうすれば、どこまでなら通じるかが確かめられる」
「待て、協力するとは言ってない!」
「じゃあ、敵対するつもりか?
言っとくが、今の俺は6年前の俺じゃない。ここにいる帝国兵を全滅させるのは、そんなに難しいことじゃない。ロゼもいるしな」
「くっ……」
ネルズィエンが歯を噛んでうつむいた。
「べつに、スパイになれとは言ってない。ネルズィエンの判断で、渡せる情報と渡せない情報を区別すればいいだけだ」
まあ、定義によっては、それもスパイの範疇に入りそうだけどな。
最初は合法的なことから始めさせて、徐々に非合法な情報窃盗に手を染めさせ、逃げられなくなってから本格的な諜報活動を強制する――
前世のノンフィクションでそんな話を読んだことがある。
もっとも、俺にそこまでやるつもりはない。
ネルズィエンが言った。
「なぜ、わたしに暗示をかけない? 貴様になら、わたしを言いなりにするのは簡単なはずだ」
「そういうのはやめたんだ。人間関係が壊れるからな」
と言って俺は、隣にいるロゼの頭を軽く叩く。
ネルズィエンが苦い顔をした。
「これまで散々わたしを利用しておいて……」
「最初に攻めてきたのはそっちだろ。あの時は他にやりようもなかったからな」
「どうだか。わたしの鎧を脱がせて、わたしの身体を嬉々として検分していたではないか」
「ちょっ、エリア!? それ、どういうこと!?」
いらんことを言うネルズィエンに、ロゼが俺の手を払って言ってくる。
「い、いや、吸魔煌殻を脱がせる必要があったし」
実際にはネルズィエンが当時着用してたのは吸魔煌殻のレプリカだったけどな。
当時のネルズィエンの、豊満で引き締まった肢体を思い出してしまう。
今も当時も、ネルズィエンのスタイルは見事である。
ロゼにはない大人の女性の魅力が詰まってることは否定できない。
「うう~! エリアって、絶対おっぱい好きだよね!?」
「そ、そんなことはないぞ? ていうかロゼだってけっこうあるし」
「わたしのはこう、ふわっとした感じだけど、この人のはむっちり引き締まった感じなんだもん! わたしじゃ鍛えてもこんな風にはならないよ!」
「そりゃそうだろうけど、どっちがいい悪いじゃないだろ。ロゼにはロゼの魅力がある」
「それってネルズィエンさんも同じくらい魅力があるって言ってるよね!? どうして嘘でも『ロゼがいちばんかわいいよ』って言ってくれないの!? わたしたち付き合ってるのに!」
「落ち着けって。俺にとってはロゼがいちばん大切だからさ」
「本当にぃ? 霊威兵装の件の帰りにこの人がキロフに拐われた時、わたしを置いて追いかけたよね?」
「うっ、あれは判断ミスだったと思ってるって」
「それだけじゃないよ! 最近はユナちゃんにもなんか優しいし! ユナちゃんはただでさえエリアに助けられて好意を持ってるんだから、優しくされたらイチコロなんだよ!?」
「ユナは関係ないだろ?」
「メイベル先輩とも仲がいいよね!? 読んだ本の話で盛り上がったりしてるし……」
「バイトの先輩と後輩だって」
「……おまえら、敵陣で痴話喧嘩をしないでくれるか?」
ネルズィエンが、さすがに呆れた顔で突っ込んでくる。
ネルズィエンはため息をついた。
「はぁ……。わかった。キロフの消息については、なるべく連絡を入れるようにしよう。端末の通信範囲に、怪しまれずに入れる機会があれば、だがな」
「頼むぜ。
だが、無理はするなよ? キロフが丞相であり続けるなら、遠からずこっちの耳には入るんだ。早く知りたいことは事実だが、危険を冒してまで急ぐ必要はない。
それよりは、帝国内でネルズィエンの身が危なくなった時の保険とでも思ってくれ」
「そんなことを言うから、その娘が不安になるのだ」
「そうだよ!」
ネルズィエンの言葉に、ロゼが頬を膨らませる。
「ふん。鬼と蛇なら、血が通ってる分だけ蛇の方がマシだろう」
ネルズィエンはそう言うと、天幕を出て、撤退の準備を始めたのだった。
0
お気に入りに追加
900
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる