真価を認められず勇者パーティから追放された俺は、魔物固有のぶっ壊れスキルを駆使して勇者たちに復讐する。

天宮暁

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23 ♣

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「ふぅ……なんとかなったか」

 首から上がなくなったルシアスの死体を見下ろし、俺は手の甲で額をぬぐっていた。
 ぬぐった手に、べっとりと血がついた。
 俺の血じゃない。ルシアスの返り血だ。

 あの時俺は、異常なSTRで放たれた攻撃を「屠竜の構え」で反射した。
 倍加された反射攻撃は、ルシアスの頭部を、一瞬にして消し飛ばしてしまった。

 ルシアスの攻撃の速さは、「屠竜の構え」を使う上では、むしろいい方向に働いた。
 「屠竜の構え」の受付時間はごく短い。
 だが、さっきの攻防の中では話は別だ。
 たとえば、グリーンジャイアントの大ぶりな攻撃を「屠竜の構え」で反射するには、ギリギリまで攻撃を引きつける必要がある。
 しかし、目にも止まらないほどに速いルシアスの攻撃を反射するには、攻撃の来そうなタイミングで「屠竜の構え」を使っておくだけで十分だ。受付時間が終わるまでのあいだに、ルシアスの攻撃は確実にヒットする。
 DEXが1880のルシアスと、盗用した勇者魔法で加速した俺。
 高速の応酬の中では、「屠竜の構え」の受付時間は、いつもより長く感じられる。

 ルシアスの頭は、原型をまったく留めていない。
 首から先に、血と肉と脳漿と砕け散った頭蓋骨、その他、いちいち数え上げたくないようなグロいものが、かなりの範囲に飛び散っていた。
 すぐ目の前にいた俺にも、その飛沫がこれでもかとばかりにかかってる。

「ちゃんと浄化しておかねえと、変な病気にかかるかもな」

 俺が今どんな状態か、正直言って見たくもない。

 俺は、顔をしかめてため息を漏らす。
 そこで不意に、激しい吐き気が襲ってきた。

「ぐぅっ!?」

 頭痛、めまい、耳鳴り……脳内を直接かきまぜられるような不快感。
 視界が、ちかちかと極彩色に瞬きながら、渦潮のように回転する。

 この感覚は初めてじゃない。
 むしろ、これまでに何度となく経験してきたものだ。
 反動、と俺は呼んでいる。
 「ぬすむ☆」でスキルを盗んだ後に襲ってくる、強烈な副作用のようなものだった。

「ぐ……くそっ。いつもより酷えな……」

 「勇者魔法♣」なんていうわけのわからんものを取り込んだせいだろう。
 頭が割れるように痛む。
 俺はその場に片膝をついた。

「キリク!? 大丈夫か!?」

 ダーナが俺のすぐそばに降り立ち、しゃがみこんで俺の肩を支えてくれる。
 ダーナは、俺がトロール洞のワイトキングから「物理無効」を盗んだ時にも、反動で苦しむ様子を見てるからな。

「あ、ああ……なんとかな」

 「ぬすむ☆」の副作用は、長くてもせいぜい数秒だ。
 今回はいつもより長かったが、既に収まりはじめてはいた。
 もっとヤバいことになるかと覚悟してたから拍子抜けだ。
 この「ぬすむ☆」も、「勇者魔法♣」に負けず劣らず謎が多い。

 すこし落ち着いた俺に、ダーナが聞いてくる。

「キリク。おまえは奴を、いったいどうやって倒したのだ?」

「『ぬすむ☆』であいつの『勇者魔法♣』を盗んで無効化した。その上で、あいつの攻撃を、『屠竜の構え』で反射したんだ」

 正直、運が良かったとしか言いようがない。
 俺のDEXがもしあと少しでも低かったら、俺がルシアスに触れる前に、奴の「勇者魔法♣」が発動していた。

「なんとまあ……。
 だが、逃げようとしても逃げ切れたとは思えんな。
 キリクの判断は正しかったのだろう」

「そうだな。あいつのステータスを見たら、全パラメーターが一律十倍になってたよ」

「じ、十倍だと!?」

 驚くダーナ。

 盗んだことで俺には「勇者魔法♣」の詳細がわかるようになったのだが、洒落にならない魔法ばかりが揃ってる。
 INTが十倍に爆上げされたルシアスがこんな魔法を放っていたら……。
 屋上にいた俺はおろか、上空にいたダーナすら、塵ひとつ残さず消滅してたことだろう。

 俺は、ルシアスの死体の前に屈み込む。
 右手の甲を見ると、そこには不気味に明滅する金色の烙印が残っていた。

「これだよ。あの黄金色の光がルシアスに焼き付けた烙印だ」

「うむ……。このような現象は聞いたことがない」

「煌めきの神の仕業だと思うか?」

 魔族と戦い、窮地に陥った勇者に力を与える。
 煌めきの神以外に、そんなことのできそうな存在は思いつかない。

「ルシアスには何かが聞こえてたみたいだったけどな。俺にはさっぱりだ」

「私にも何も聞こえなかった」

 ダーナが首を横に振った。

 俺は、シルヴィアを振り返って聞いてみる。

「シルヴィア。おまえには何か聞こえたか?」

「えっ? は、はい。『絶望せし勇者よ。我に全てを捧げよ、さすれば逸脱者を屠る力を与えよう』、と」

 期待せずに聞いたのだが、思わぬ当たりを引いた。

「そうか、勇者とパーティメンバーには聞こえたってことか。
 どんな声だった?」

「えっと……わかりません。内容だけが直接頭に響いたような、そんな感じでした」

 その言葉以外に、ヒントはないってことだな。

 それにしても、シルヴィアは俺の質問にあっさり答えているが、敵だってことを忘れてないか?

 ダーナが言った。

「それで、この娘はどうするのだ? よもや生かして帰すつもりではないだろうな?」

「そうだな。もう後戻りはできねえんだ。シルヴィアには死んでもらう」

 過去の自分に別れを告げる意味でも、な。
 シルヴィアにとってはたまったものではないだろうが。

 シルヴィアの顔色が変わった。
 血の気の引いた表情で、俺を震える指でさしてくる。

「あ、あの……」

「なんだ、命乞いか? 安心しろ、楽に殺してやる」

「ち、違います! 後ろ――後ろを見てください!」

「……何っ?」

 切羽詰まった様子のシルヴィアに、俺は弾かれたように振り返る。

 そっちには、ルシアスの首なし死体しかないはずだった。

 そして実際、ルシアスの首なし死体しか見当たらない。

 ただし、その首なし死体が、ゆらりと、人にはありえない動きで立ち上がっていた。
 ♣の刻まれた右手の甲が宙高く上がり、それに引っ張られて身体の他の部分が持ち上がる。
 まるで、烙印が、ルシアスの死体をパペットとして操ってるかのようだ。
 地面に落ちていたルシアスの剣も、烙印のある手に吸い寄せられた。
 もはや動かない手は剣の柄を握らなかったが、柄は手のひらに張り付いたように動かない。

「なっ……!?」
「なんだ!?」

 身構える俺とダーナの前で、

 ――ヲヲォォオ゛オ゛ォンンッッ!!

 口などないはずの死体から、甲高く、同時に重苦しい声が放たれた。
 ルシアスの死体が、金色の光に包まれる。
 しかし同時に、ルシアスの死体から、強烈な瘴気が噴き出してきた。
 瘴気は通常は不可視だが、あまりに濃い瘴気は、黒く濁った泥水のように見える。

「くっ……『瘴気結界』」

 「瘴気結界」で、俺とダーナを包み込む。
 シルヴィアも、なんとか神聖結界が間に合ったようだ。
 魔族であるダーナとその眷属となった俺には瘴気への耐性があるのだが、こんな不気味なものから発せられた瘴気なんて浴びたくはない。
 そもそも、魔物でも魔族でもなく、神の加護を持つはずの勇者が瘴気を発するなど、見たことも聞いたこともない現象だ。

「くそっ。なんだ、あれは……」

 「瘴気結界」を使ってすら、正体不明のプレッシャーが、俺の心と身体にのしかかる。
 俺は、ルシアスだったモノに対して、「盟神探湯くかたち」のスキルを使用する。




勇者♣
レベル740
HP 1/3440
MP 2544/2570
STR 2190
INT 1970
DEX 1880
JOB SKILL 「勇者魔法♣」「勇#魔Φ/* error!!このスキルは崩壊しています*/」



「んだよこれは……!?」

 まるで意味がわからなかった。
 煌めきの神から力を与えられたルシアスは死んだ。
 だが、その「力」のみが復活した。
 そうとでも言うしかない状況だ。

 それでも、わかったことはある。

「HPはもうねえってことだ! 速攻で倒しきるっ! 『アポカリプス・エッジ』!」

 俺は、入手したばかりの「勇者魔法♣」の一つを発動する。
 手を天にかざすと、天と手の間に、黒い稲妻の尖塔が現れた。
 天を衝く黒い稲妻は、俺の腕にもまとわりつき、俺の腕にビリビリとした感覚が走る。「感電」の状態異常によく似た感覚だ。
 俺は、黒い稲妻と一体化した腕を、ルシアスだったモノへと振り下ろす。

「てめえの力を食らって死ねッ!」

 黒い雷の尖塔が、俺の動きに従って、ルシアスだったモノへと向かって倒れ込む。
 黒い雷は、床に衝突すると、無数の小さな稲妻となって、四方八方に飛び散った。
 破滅の塔屋上の、俺とは反対側のほぼすべてが、黒い稲光に席巻された。

「こ、これはっ……!」

「なんて威力……っ!」

 俺の背後で、ダーナとシルヴィアが、あまりの光景に驚いている。

 「盟神探湯」で確認した時、奴のHPは1しかなかった。
 こんな大技を使わずとも、何かが当たりさえすれば倒せるはずだが、相手が相手だけに油断はできない。
 盗んだばかりの「勇者魔法♣」を早速使って、奴を確実に殺しきることにしたのだ。

 盗んだ後にざっと確認した限りでは、「勇者魔法♣」には、「勇者魔法」同様、複数の魔法のセットが用意されていた。

 だが、おどろおどろしい名前の並ぶスキルの大半は、文字がグレーに潰れて使用不可となっていた。

 その理由は単純だ。
 消費MPが、現在の俺のMPを超えてるからだ。

 たとえば、さっきルシアスが使おうとしていた魔法「ディヴァイン・アニヒレーション」の消費MPは2400。
 最大MPが164しかない俺では、どうあがいても使えない。
 いや、魔法職の中で特にMPに恵まれた者であっても、最大MPは400を超えていればいい方だ。
 消費MP 2400なんていうのは、強力というより、ほとんど冗談にしか思えない。
 要するに、「勇者魔法♣」は、普通の人間に使えるような魔法じゃないってことだ。
 烙印によってパワーアップしたルシアスが使えていたのは、MPも十倍になっていたせいである。

 とはいえ、ギリギリMPの足りる魔法もあった。
 今使った「アポカリプス・エッジ」は、「勇者魔法♣」の中では、消費MPが少ないほうだ。
 それでも、120ものMPを持っていかれる。
 消費MPが100を超える魔法なんて、残りMPを全て使って大ダメージを与える賢者の自爆魔法くらいしかないはずだけどな。

 なお、俺が「ぬすむ☆」で手に入れた大半のスキルはMPを消費しない。
 「ドロースペル」で相手の魔法を盗用して発動する場合にも、消費するのは自分のMPではなく相手のMPだ。
 ただし、「ドロースペル」の成功率は、相手とのDEXの差で決まってくる。
 もともとのルシアスなら、DEXが俺より低いので成功したが、DEXが十倍になった烙印ルシアスや、目の前にいる「ルシアスだったモノ」相手には、「ドロースペル」は成功しない。

(これで倒せてくれよ……!)

 烙印ルシアスでさえ、薄氷を踏むような勝利だった。
 こんな得体のしれない奴と、まともに戦いたいとは思えない。

 だが、俺の願いは叶わなかった。
 黒い稲妻が消え去った時、そこにはさっきと変わらない姿の「ルシアス」がいた。
 光り輝く烙印のある手に張り付いた剣を高々と掲げ、それ以外の部位はだらりと重みのままに垂れ下がっている。
 その全身を、淡く黄金色の光の膜のようなものが覆っていた。

「『インビンシブル』、か」

 「勇者魔法♣」の中に、そんな魔法があった。
 高い消費MPと引き換えに、短時間「無敵」状態になるという魔法である。
 「無敵」なんてバフは聞いたことがないが、無敵というからには、どんな攻撃も効かないんだろう。
 めちゃくちゃなスキルだ。

「くっ、『サンダーストーム』!」

 ダーナが仕掛けた。
 だが、雷の嵐の中で、「ルシアス」は平然と立っている。
 その身体がダーナの方を向く。

「ダーナ! 空に逃げろっ!」

「わ、わかった!」

 俺の言葉に、ダーナが空へと舞い上がる。
 その一瞬後に、いきなり加速した「ルシアス」が、手にした剣を振り下ろす。
 「ルシアス」はダーナのいた場所へと瞬時に距離を詰め、同時に剣を斬りおろしたのだ。

 だが、その動作は、それまでのルシアスのものとはまるで違った。
 走る動作すらなく、床の上を滑るように移動し、肘から先だけをありえない方向に折り曲げて、剣を高速で振り下ろしたのだ。
 技も何もない、非人間的な動きだが、速さと威力だけは元のルシアスと変わらない。
 なんとかその動きが見えたのは、狙われたのが俺じゃなかったからだ。

「『ルシアス』は『無敵』状態になる魔法を使ってる! 効果は残り17秒! クールダウンは30秒だ!」

 「ルシアス」を睨んだままそう注意した俺に、ダーナが空中から叫び返してくる。

「なにっ!? むちゃくちゃではないか!」

「ああ、むちゃくちゃだよ!
 ただし、『ルシアス』の残りHPは1で、今の『ルシアス』に回復手段はない!
 それから、『インビンシブル』の効果が持続してるあいだ、他の魔法は使えない!」

「17秒耐え、次の30秒で倒せということか!?」

「一撃も食らうなよ! 一発で死ぬぞ!」

 「ルシアス」は、肘から先だけで剣を斬りおろした奇妙な姿勢のままで、首――はないが、肩を横に傾けている。
 自分の望んだ結果が出なかった、おかしい、って感じだな。

「『粘着網』!」

 俺の放った蜘蛛の糸が、「ルシアス」をからめとる。
 が、ルシアスの肘から先が高速で回転し、振り回された剣が、蜘蛛の網を斬り裂いた。

「『コールドブレス』!」

 俺の呼気が、「凍結」をもたらす旋風と化して「ルシアス」を包む。

 だが、次の瞬間、「ルシアス」は俺の眼前にいた。
 「物理見切り」のおかげで、かろうじて剣を避けられた。
 「ルシアス」の握る剣には、黄金色の光が絡みつき、強烈な瘴気を放ってる。
 「物理無効」をあてにするのは危険だろう。

「『ホーリーバインド』!」

 「ルシアス」に拘束魔法を使ったのはシルヴィアだった。
 INT差があるはずだが、魔法はほんの一瞬だけ効力を発揮した。
 そのあいだに、俺は「ルシアス」から距離を取る。

「状態異常攻撃は効くということか!? ならば……『ハルシネーション』!」

 ダーナが上空から、魔族の使う幻覚魔法を使用した。
 魔族であるダーナのINTはかなり高い。
 それでも、今の「ルシアス」の三分の一もないだろう。
 「ハルシネーション」は効果を発揮しなかった。

「シルヴィア、ダーナ! 成功確率が低くてもいいから、今の魔法を重ねてくれ!」

「わ、わかりました!」

「わかった!」

 ダーナはともかく、シルヴィアも、この状況に呑まれて俺の指示にうなずいた。

「こっちだ!」

 俺は「ダンシングニードル」を放って「ルシアス」の注意を惹きつける。
 予備動作の全くない、高速移動と単調な斬撃。
 「物理見切り」でなんとかかわす。

(「インビンシブル」が切れたところで「屠竜の構え」で反射して倒す……か?)

 だが、「インビンシブル」が切れれば、「ルシアス」は「勇者魔法♣」を使うだろう。

 「ディヴァイン・アニヒレーション」の攻撃範囲は、この屋上はおろか、上空にいるダーナまでをも余裕でカバーする。
 「カタストロフィック・ハリケーン」を使われても、この屋上に安全な場所はなくなるだろう。
 さっき俺の使った「アポカリプス・エッジ」も、屋上の大半を呑み込んでしまう。
 超広範囲に有効な弱体化魔法「ワールド・デセラレーション」を使われたら、俺たち全員の速度が半減し、「ルシアス」の攻撃を避けられなくなる。

(何か……対抗できるスキルはないのか!?)

 「INT削減攻撃」を重ねてからの「MPドレイン」――ダメだ、とてもそんな時間はない。そもそも俺の攻撃が「ルシアス」に当たることはないだろう。

 「ぬすむ☆」で「ルシアス」の「勇者魔法♣」を盗む?
 既に所持しているスキルを重複して盗むことは不可能だ。

 なんとか「インビンシブル」を連発させ、向こうのMP切れを待つ?
 だが、「インビンシブル」の消費MPは210。奴のMPが尽きるまでに、あと10回以上も使える計算だ。
 そのあいだに他の魔法を一度でも使われたら、その時点で俺たちの死亡は確定する。

 それとも、一か八か逃げ出すか?
 いや、空を飛んで逃げたとしても、こいつが魔法を放ってきたら避けられない。
 こいつが追いかけてこないという保証もない。
 こんなデタラメな動きをしてるのだ。
 こいつがいきなり空を飛びはじめたとしても、俺はもう驚かない。

 「ランダムジャンプ」でこいつをどこかに飛ばして一時しのぎをする?
 ダメだ。
 この屋上はダンジョンじゃない。
 「ランダムジャンプ」はダンジョン内でしか使えない。

(待てよ!? そうか、ダンジョンだ!)

 確実にうまくいく保証はないが、やってみる価値はあるだろう。

 再び不自然な動きで突進してきた「ルシアス」をかわし、空中にいるダーナに叫ぶ。

「ダーナ! あいつが動きを止めたら、その位置にダンジョン内部への闇の渦を生み出してくれ!」

「ゲートを……!?
 そうか! やってみよう!」

 ダーナが俺の意図を呑み込んでくれたところで、シルヴィアが「ルシアス」に魔法を使う。

「『ホーリーバインド』!」

 INT差があるから、成功確率は五分五分以下だ。
 が、今回は「ルシアス」に魔法が入った。
 光のリングが、「ルシアス」の身体を縛める。
 その効果が切れないうちに、

「『粘着網』!」

 蜘蛛の網を放った。
 「粘着網」の利点は、INTやDEXに関係なく効果を発揮することだ。
 べたつく網をただぶっかけるだけのスキルだからな。

 ――ヲヲオォォオ゛オ゛ンンッ!

 「ルシアス」がもどかしげな声を上げて暴れまわる。
 パペット人形をでたらめに動かしたような意味のない動きだ。

 「ルシアス」の動きに意味はなかったが、光のリングはほんの数秒で砕け散った。
 だが、まだ粘着網が残ってる。
 「ルシアス」は再び、肘から先を回転させる。
 粘着網が引きちぎられてバラバラになる。

「『ホーリーバインド』!」
「『粘着網』っ!」

 すかさず、シルヴィアと俺が「ルシアス」を再度拘束する。
 「ホーリーバインド」は厳しい確率をまたしても突破した。
 光の輪と粘着性の網が、「ルシアス」を二重に縛める。

「『青メデューサの瞳』!」
「『邪心滅却の印』!」

 俺の「停止」は失敗、シルヴィアの「衰弱」は成功した。
 同時に、光の輪が砕け散る。
 だが、「衰弱」の状態異常で数秒間STRがゼロになってる「ルシアス」は、粘着網を払えない。

 そこで、ダーナが仕掛けた。

「破滅の塔よ! ダンジョンマスター・ダナンストが命ずる! 我が想起した地点にダンジョンズゲートを作り出せ!」

 「ルシアス」を、闇色の渦が呑み込んだ。
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