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第16章・リスタート

◆ 6・病死へのカウントダウン(後) ◆

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◆◇◆


「フローレンスが戻ったら、私の所に来させて」

 メイドに伝えた私は、数人のメイドたちと第三王子の来訪をエントランスで待った。
 第一王子であるアレックスも隣に立っている。立場上、彼が待つ必要はないのだが――その時だ。

「お嬢様……フローレンス様が!」


 え?


「フローレンス様が……いきなり倒れて……っ、今……っ」


 えぇ?


「お亡くなりになった……と……」

 呆然とする。
 中庭には誰も立ち入らないように命令したし、父の名も使った。何ならアレックスの名前だって使った。誰も中庭には入れないはずだ。何よりフローレンスが帰ってきた話も聞いていない。

「どこで……、いや、あの子はどこ……」

 かすれる声で問う。
 何も考えられない。すでに消化試合の最後に立ったことになる。

「聖堂です……」


 せ、い堂?? それって啓教会の本部があるとこよね? え? キャメロンが殺したんじゃなくて、教会なの? 確かに私の誕生日を祝うために数人くることにはなってたけど、なんでこのタイミングで。


「この報告は、ヨーク侯にもあがってるね?」

 アレックスが冷静に対応する。

「はい」
「それなら、この後の流れはヨーク侯しだいだね。ただ、現状チャーリーの誕生会に多くの客を招待している立場だからね。取りやめはないかな。おそらく良いタイミングまで隠すだろう」


 そ、うよね……。そのパターンはお母様たちの時にあったわ。


「皆もそのつもりで冷静に動いてほしい。くれぐれも他の客に気づかれないよう」

 今知ったメイドもいるらしく、目を潤ませている。

「少し席を外すわ」

 私は言い置いて外に出る。
 青い空を見上げ、小さく息を吐いた。

「冗談じゃないわ」

 ポツリ呟く。
 妹が死んだことを純粋に悲しめたなら、私も良い人間になったと思えただろう。残念ながら、この先の流れが気になって聖女死亡というフレーズに戦々恐々としている。
 聖女は前回、私が殺した。そういえば、あの時も病気が流行ったとされた。

「チャーリー、大丈夫?」

 アレックスが外に出て来た。

「まぁ……私が死んだわけじゃないし」
「でも、チャーリーの病死カウントダウンが始まったよ」
「そう、よね……」


 そうなのよね。今回は消化試合、何にもならないなら、今ここで死んでも、後で病死しても大した差はないのかもしれない。
 でも……死ぬのは、痛い……痛いのよ。


「アレックス、死ぬべきかな? 絶対無理かな?」
「イエスと言ったら、キミは死ぬの?」
「……眠るように死にたいわね、その場合」

 自嘲気味た笑みを浮かべる。
 途端、両頬にペタリと冷たいものが当たった。


 
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