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第15章・共謀する聖人
◆ 21・悪魔もどきの天使(前) ◆
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想像通り、風が止んだ先にはミランダの姿。
いつも通りのメイド姿で、ポカンと口を開けている。
「は?」
彼女は私とアレックス、烏を順繰り見る。
うんうん、驚くよね。
「ミランダ、久しぶりね」
私は口火を切った。
「約束を守ったわ、私」
「……は?」
「ほら、一段上に引き上げてあげるって話したじゃない?」
彼女を悪魔に堕とした私は約束のもとに、同盟関係を築いてきた。 まさに今、実現したわよ! あんたを天使に引き上げてやったわ!」
彼女は意味が分からないらしく、しばし言葉を失っていた。
「は?」
「ミランダったら、ためて言うのがソレなの? あんた、ココに来てから疑問符しか言ってないじゃない」
「……お嬢様……、つまり、どういうことですか?」
手を結んでなければ命の危機すら感じるところだが――。
「私、神っぽいのよね」
我ながら馬鹿な言い分だ。他の人間が同じセリフを口にしていたなら、私も頭がイカレたと思う所だ。
しかし、神妙な顔をしてアレックスが追加の言葉を吐く。
「信じられないのも無理はないけど、本当なんだよ。チャーリーは気が触れたわけじゃなくて、ボクも……あ、ボクはカエル王子こと第一王子の……」
「アレクサンダー様ですね。それは分かります。初めてその顔は見ましたが、狂ったお嬢様と動向を共にする人物など第一王子かライラ嬢くらいなものでしょうから」
思ったより落ち着いた口調で応じるミランダ。そこはかとなく失礼なのは、彼女だけではない。
「そっか、良かった。それなら、君も分かると思うけど、ボクは意味のない嘘はつかないよ」
「ですね……。あなたがいなければ、お嬢様をぶち殺して、さっさと復讐完了してました」
おいっ! あんた、私との契約は……。
「それで、私は悪魔未満なわけですが、天使ってなんですか?」
柔軟な思考で、彼女は首を傾げる。
「立場的には私のゲボ……部下ってことよ。ただ、一段上にあがったのは間違いないわね!」
この場にいるのだ。悪魔もどきでも、天使として認証されたとみていいだろう。
「ミランダ、何か自分の中での変化はないの? 力がアップしたとか、使えなかった技が使えるようになったみたいなそういう特典は?」
「特段感じません」
「何か使ってみようとしてよ。実は自分が気付いてないだけでー、とかかもしれないじゃないっ」
「……天使って、具体的に何をするんですか?」
それは、気になるわね?
私はミランダの直視を受けて、視線を烏に移す。
「イノチのセンテイ、タマシイのジョウカ、ジッコウせよ!」
なるほど、良く分からないが天使はヤバイらしい。
烏はミランダの上を旋回する。
勢いよく、何度も何度も――見つめているうちに、羽が降ってきた。
何枚もが、何十枚もに変わっていく。
「冷たい……」
ミランダが不快げに呟く。降ってくる羽に触れると、まるで雪のように冷たかった。
いつも通りのメイド姿で、ポカンと口を開けている。
「は?」
彼女は私とアレックス、烏を順繰り見る。
うんうん、驚くよね。
「ミランダ、久しぶりね」
私は口火を切った。
「約束を守ったわ、私」
「……は?」
「ほら、一段上に引き上げてあげるって話したじゃない?」
彼女を悪魔に堕とした私は約束のもとに、同盟関係を築いてきた。 まさに今、実現したわよ! あんたを天使に引き上げてやったわ!」
彼女は意味が分からないらしく、しばし言葉を失っていた。
「は?」
「ミランダったら、ためて言うのがソレなの? あんた、ココに来てから疑問符しか言ってないじゃない」
「……お嬢様……、つまり、どういうことですか?」
手を結んでなければ命の危機すら感じるところだが――。
「私、神っぽいのよね」
我ながら馬鹿な言い分だ。他の人間が同じセリフを口にしていたなら、私も頭がイカレたと思う所だ。
しかし、神妙な顔をしてアレックスが追加の言葉を吐く。
「信じられないのも無理はないけど、本当なんだよ。チャーリーは気が触れたわけじゃなくて、ボクも……あ、ボクはカエル王子こと第一王子の……」
「アレクサンダー様ですね。それは分かります。初めてその顔は見ましたが、狂ったお嬢様と動向を共にする人物など第一王子かライラ嬢くらいなものでしょうから」
思ったより落ち着いた口調で応じるミランダ。そこはかとなく失礼なのは、彼女だけではない。
「そっか、良かった。それなら、君も分かると思うけど、ボクは意味のない嘘はつかないよ」
「ですね……。あなたがいなければ、お嬢様をぶち殺して、さっさと復讐完了してました」
おいっ! あんた、私との契約は……。
「それで、私は悪魔未満なわけですが、天使ってなんですか?」
柔軟な思考で、彼女は首を傾げる。
「立場的には私のゲボ……部下ってことよ。ただ、一段上にあがったのは間違いないわね!」
この場にいるのだ。悪魔もどきでも、天使として認証されたとみていいだろう。
「ミランダ、何か自分の中での変化はないの? 力がアップしたとか、使えなかった技が使えるようになったみたいなそういう特典は?」
「特段感じません」
「何か使ってみようとしてよ。実は自分が気付いてないだけでー、とかかもしれないじゃないっ」
「……天使って、具体的に何をするんですか?」
それは、気になるわね?
私はミランダの直視を受けて、視線を烏に移す。
「イノチのセンテイ、タマシイのジョウカ、ジッコウせよ!」
なるほど、良く分からないが天使はヤバイらしい。
烏はミランダの上を旋回する。
勢いよく、何度も何度も――見つめているうちに、羽が降ってきた。
何枚もが、何十枚もに変わっていく。
「冷たい……」
ミランダが不快げに呟く。降ってくる羽に触れると、まるで雪のように冷たかった。
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