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第15章・共謀する聖人
◆ 20・神 ◆
しおりを挟む「今こいつ、天使呼べって言った?」
私の問いかけにアレックスは頷く。
「それに神とも言ってたね。ボクも入ってるのかな?」
烏は答えない。
石のように微動だにせず、こちらの反応を待っているようだ。
天使を呼べって言われてもね? どうやってよ。
「どうやって呼べばいいの? エルキヤ・エルティアとでも言えばいいの? もう私、すでに人生一度きりの呪文も使っちゃってるし? ってか、アレックスも使ってるし? 言った所で意味はないわね。呪文を頂戴よ、呪文を」
「チャーリー……一理あるけど、何が危険か分からないし言葉には気を付けた方が」
「だって! 呼べって言われても呼び方が分からないじゃない。まさかおっさん天使の名前でも呼べって?」
彼は考え込むように、顎に手をあてた。
「え? ほんとに?」
「可能性はあるよ」
名前は分かる。
いつもは天使たちの名前があやふやだが、今は世界が一段上だか下だかになったのだろう。彼らの名前をしっかりと言える自信がある。
「言うの?」
「……いや、止めておこう。ルーファも可能な限り、『アレ』は避けて通れって言ってたよ」
「おっさん天使を? 悪魔の言を聞いてもね。それにこの鳥が言うことを信じるなら、私たち神でしょ? おっさん天使はいわば部下よ!」
彼は周囲を見回し、歩き始める。
慌てて後を追う。
木の幹や、草に触れ、土を掻き――それらに顔を近づけて匂っている。
「あー……あの、アレックス? 何してるの?」
同じことをしようとは思わない。
上から見下ろす私に、彼は土を手に差し出す。
「触ってみて」
おそるおそる触れる。土は温かかった。
「温度があるんだ、ここの植物」
「……それが?」
「チャーリー、もっとしっかり触ってみて」
確かに驚きではあるが、光の影響だろうと思った。しかし、彼に土を手渡され驚いた。
トクトクと脈打つ感触だ。思わず手を引っ込める。
「な、なに、これ!!!!」
生きてる……!
「ここは『楽園』かもしれない。神の棲み処、魂の帰所、時代によって色々な称され方をされるけど、……ここで言う天使は『彼』じゃないかもしれない」
全く分かりません。
「つまり?」
「チャーリー、君が選ぶんだよ。天使を」
「天使を?」
「君の遣いとしての天使。神の僕として指名するんだと思う」
彼はもう理解してしまっているようだが、私はさっぱりだった。だが、アレックスのことは信用している。
「部下を選んで名前を言えばいいってこと?」
「うん、多分。それもこの場にいない人物だろうね」
それなら、指名する相手は決まっている。
「断然、ミランダよ!」
目前で、風が巻き起こった。
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