308 / 375
第14章・灰は撒かれた
◆ 17・問われる罪(前) ◆
しおりを挟む全身白づくめ――しかも仮面――ずるずると引き摺る長衣で現れた客四人と、対面して座っている。
間のテーブルには湯気の立つカップ。
仮面をつけている彼らは当然、手も付けない。
沈黙に焦れたのは私だ。
「私はここの当主ではありませんし、ここの家主ですらありません。それでも良ければお話を伺います」
っていうか、こっちが名乗ってるのに名乗りどころか、声も出さないってどれだけ失礼な奴らなのよっ。
「ヨルクの血族だ、構わない」
「いえ、ヨークです。ヨルクは遠縁の親戚でしかありません」
きつそうな女の声に、きっぱりと答えてやった。
「我々は長老会の遣いだ」
「長老会? 何の?」
私の指摘や疑問にも動じず女は続ける。
「長老会は、今回の騒動を重く見ている。民に混乱を招き、拠り所を奪いし罪だ。ヨルクは罪を償わねばならぬ」
「……なら、他の親戚筋を当たってくれる? さっきも言ったけど、私は遠縁なのよ。この地の事なんて知らな……」
女が立ち上がる。
同時に残り三名も立ち上がる。服越しでは男か女か、若いかどうかも分からない彼らだが、服装の事もあり威圧感を感じてしまう。
「共に来てもらう」
え……? いやいやいや、このパターン、完全に負の連鎖系!! 絶対ダメ!
「ま、待ってちょうだい。私も……良家の娘よ。服装を改めさせてもら……」
「無用だ」
「私の気が……っ」
「無用だ」
「いやいや、私の気持ちだから?!」
「無用だ」
一辺倒に言い、女は手を上げる。
残りの三名が私に向かって歩き出す。慌てて、立ち上がりドアに駆け寄るも開かない。
鍵、かかってる!!!!
メイドだちの顔がよぎる。これは予想に易い状態だ。
つまり……グルだ、あいつらっ!!
私を売りやがったっ!!!!
愕然としたのも一瞬、悔しさと己の甘さに腹が立つ。メイドに気を回して、良かれと思った行動が結局、地獄展開。
何で信じたのよ、……気弱そうな女ほど用心すべきってフローにミランダに、どいつもこいつもロクな事にならないって体感してきたじゃないのっ。
「私だって……か弱いお嬢様じゃないってトコを見せてやろうじゃないの!」
ドアに渾身の力を込めた蹴りを放つ。
大きな音が響くも、ピクリとも動かない扉。むしろ衝撃に足の方が痛む。
「なんで……」
「すでに逃げ場はありません。長老会の意思は絶対ですので、お覚悟を」
「ふ、フローラ……導きの堕天使ー! 今こそ私を導きなさいよーー!!!!」
叫ぶ私に、白装束の一人から失笑が漏れる。
当たり前だ。導くのが堕天使だなどと、そんなものに救いを求める小娘を見たら私もきっと笑うだろう。結局、己を救うのは己の拳しかないらしい。
抵抗すべく拳を握りしめた。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
ゆとりある生活を異世界で
コロ
ファンタジー
とある世界の皇国
公爵家の長男坊は
少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた…
それなりに頑張って生きていた俺は48歳
なかなか楽しい人生だと満喫していたら
交通事故でアッサリ逝ってもた…orz
そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が
『楽しませてくれた礼をあげるよ』
とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に…
それもチートまでくれて♪
ありがたやありがたや
チート?強力なのがあります→使うとは言ってない
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います
宜しくお付き合い下さい
転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
サブキャラへのゲーム転生は、思ったより大人しくしていられない
こなひじき
ファンタジー
とある乙女ゲーのサブキャラであるハルト・ユークリウッドに転生してしまった内気な青年。
彼は元々主人公リリアや兄であるメインヒーローのシリウスの恋路のお邪魔役であり、自己中心的で人に当たり散らしている暴れん坊だった。
そんな真逆とも言えるようなキャラクターになってしまった彼は、主人公達の邪魔にならないように生きていこうと決意する。
ゲーム上では知りえなかったハルトの背景や心情を知っていきながら、物語はどうも違う方向に進んでいくのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる