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第13章・悪役闘争

◆ 18・闇討ち(後) ◆

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 フローレンスが振りかぶる斧は太陽光に照らされ、ギラリと光る。
 幸い一撃は窓枠を削り斬り裂いた。

 避けたんじゃない。
 転けたのだ。

 彼女の振りかぶった斧が予想以上のスピードでこちらに向かってきたから、腰が抜けたように体が動かず、転がったのだ。
 家主母娘が悲鳴をあげて部屋から出ていく。
 彼女はうっすらと笑った。

「よく、避けましたね」


 違うし。


「次は外しません」

 瞳の輪郭が青く光る。

「待っ……!」

 横薙ぎに迫る斧から、慌てて前転回避。
 ――が、彼女は空振った勢いのママ反転し、斜め降ろしの振り切り一撃。
 からくも身を翻す。
 床にザックリと刺さった白光りする凶器に視線を止めた瞬間、腹部に衝撃が叩き込まれる。


 蹴られ……っ、た……!


 私の体は食卓に激突し、ゴロゴロと転がった。

「ま……っ、て!!!!」

 詰まる息の中、根性で声を出す。

「わ……ったしは、姉だぞ!?」
「違います」
「ち、違わないわ!!!!」


 なんで本人否定を他人にされなきゃいけないのよ!
 ってか、何に持って、本人認定されてないの?


「フローレンス……、あんた、どこ見て違うって言ってんのよ。キツい態度が良いなら前みたいに対応してやるわよっ」
「色が違います」


 色? まさか服の色?


「お姉様は白と黒が混ざりあって、とても綺麗な灰色だった」
「は?」
「あなたは黒一色。二つを持つのはお姉様だけだったのに……」

 なんとなく思い当たる部分はある。
 理解は出来ずとも、彼女の言う色とやらはアーラと私を指しているのだろう。


 アーラが消えた?
 いやいや、話せなくなっただけで消えては無いはず、よね? え? 消えたの?


「ま、って……よく見てちょうだい! よーく見て! いるよね?? 白も?! アーラが消えたなんて……っ、そんなの!」


 縋るように叫び、両手を広げる。
 彼女は私をジッと見つめた。
 息すら止めたような時間が、数秒とも数分ともしれず流れた。

「……ぁ」

 彼女の小さな声を象徴するように、瞳が見開かれる。


 良かった!!!! いたのね?! アーラ!!


「じゃぁ、コレはお姉様?」

 首を傾げるフローレンス。
 現在の、脅威も去りそうな予感に心も弾む。

「そう、そうよっ、フロー! あなたの愛する姉よ!!!!」

 見た目で判断出来ないらしい事には愕然とするが、相手は人外なのだ。
 そういうモノと割り切るしかない。

「……でも、大きさが……」
「あんたが言った通りよ! 綺麗でなくとも二色混ざった人間が他にいる?!」
「います」
「え?」
「でも……お姉様な気がします。前に白が大きくなって黒が小さくなった時と同じ、な気がします」


 あっ、アーラが、乗っ取ってたあの時ね!?
 って事はアーラは一段上の世界にいる?


 ホッと息を吐く。
 アーラが無事であると思えた事は大きいし、妹も武器を振るう気配が、消えた。

「良かったわ、わかってくれ……っ?」

 咳き込む――瞬間、口から赤が飛び散る。


 え……?


 熱さを感じたのは一瞬で、直後に強く背を殴られたような衝撃が走る。

「おやすみぃ」

 耳元でヘクターの声。


 そんな、ここまで……来、た……のに……っ。
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