279 / 375
第13章・悪役闘争
◆ 18・闇討ち(後) ◆
しおりを挟む
フローレンスが振りかぶる斧は太陽光に照らされ、ギラリと光る。
幸い一撃は窓枠を削り斬り裂いた。
避けたんじゃない。
転けたのだ。
彼女の振りかぶった斧が予想以上のスピードでこちらに向かってきたから、腰が抜けたように体が動かず、転がったのだ。
家主母娘が悲鳴をあげて部屋から出ていく。
彼女はうっすらと笑った。
「よく、避けましたね」
違うし。
「次は外しません」
瞳の輪郭が青く光る。
「待っ……!」
横薙ぎに迫る斧から、慌てて前転回避。
――が、彼女は空振った勢いのママ反転し、斜め降ろしの振り切り一撃。
からくも身を翻す。
床にザックリと刺さった白光りする凶器に視線を止めた瞬間、腹部に衝撃が叩き込まれる。
蹴られ……っ、た……!
私の体は食卓に激突し、ゴロゴロと転がった。
「ま……っ、て!!!!」
詰まる息の中、根性で声を出す。
「わ……ったしは、姉だぞ!?」
「違います」
「ち、違わないわ!!!!」
なんで本人否定を他人にされなきゃいけないのよ!
ってか、何に持って、本人認定されてないの?
「フローレンス……、あんた、どこ見て違うって言ってんのよ。キツい態度が良いなら前みたいに対応してやるわよっ」
「色が違います」
色? まさか服の色?
「お姉様は白と黒が混ざりあって、とても綺麗な灰色だった」
「は?」
「あなたは黒一色。二つを持つのはお姉様だけだったのに……」
なんとなく思い当たる部分はある。
理解は出来ずとも、彼女の言う色とやらはアーラと私を指しているのだろう。
アーラが消えた?
いやいや、話せなくなっただけで消えては無いはず、よね? え? 消えたの?
「ま、って……よく見てちょうだい! よーく見て! いるよね?? 白も?! アーラが消えたなんて……っ、そんなの!」
縋るように叫び、両手を広げる。
彼女は私をジッと見つめた。
息すら止めたような時間が、数秒とも数分ともしれず流れた。
「……ぁ」
彼女の小さな声を象徴するように、瞳が見開かれる。
良かった!!!! いたのね?! アーラ!!
「じゃぁ、コレはお姉様?」
首を傾げるフローレンス。
現在の、脅威も去りそうな予感に心も弾む。
「そう、そうよっ、フロー! あなたの愛する姉よ!!!!」
見た目で判断出来ないらしい事には愕然とするが、相手は人外なのだ。
そういうモノと割り切るしかない。
「……でも、大きさが……」
「あんたが言った通りよ! 綺麗でなくとも二色混ざった人間が他にいる?!」
「います」
「え?」
「でも……お姉様な気がします。前に白が大きくなって黒が小さくなった時と同じ、な気がします」
あっ、アーラが、乗っ取ってたあの時ね!?
って事はアーラは一段上の世界にいる?
ホッと息を吐く。
アーラが無事であると思えた事は大きいし、妹も武器を振るう気配が、消えた。
「良かったわ、わかってくれ……っ?」
咳き込む――瞬間、口から赤が飛び散る。
え……?
熱さを感じたのは一瞬で、直後に強く背を殴られたような衝撃が走る。
「おやすみぃ」
耳元でヘクターの声。
そんな、ここまで……来、た……のに……っ。
幸い一撃は窓枠を削り斬り裂いた。
避けたんじゃない。
転けたのだ。
彼女の振りかぶった斧が予想以上のスピードでこちらに向かってきたから、腰が抜けたように体が動かず、転がったのだ。
家主母娘が悲鳴をあげて部屋から出ていく。
彼女はうっすらと笑った。
「よく、避けましたね」
違うし。
「次は外しません」
瞳の輪郭が青く光る。
「待っ……!」
横薙ぎに迫る斧から、慌てて前転回避。
――が、彼女は空振った勢いのママ反転し、斜め降ろしの振り切り一撃。
からくも身を翻す。
床にザックリと刺さった白光りする凶器に視線を止めた瞬間、腹部に衝撃が叩き込まれる。
蹴られ……っ、た……!
私の体は食卓に激突し、ゴロゴロと転がった。
「ま……っ、て!!!!」
詰まる息の中、根性で声を出す。
「わ……ったしは、姉だぞ!?」
「違います」
「ち、違わないわ!!!!」
なんで本人否定を他人にされなきゃいけないのよ!
ってか、何に持って、本人認定されてないの?
「フローレンス……、あんた、どこ見て違うって言ってんのよ。キツい態度が良いなら前みたいに対応してやるわよっ」
「色が違います」
色? まさか服の色?
「お姉様は白と黒が混ざりあって、とても綺麗な灰色だった」
「は?」
「あなたは黒一色。二つを持つのはお姉様だけだったのに……」
なんとなく思い当たる部分はある。
理解は出来ずとも、彼女の言う色とやらはアーラと私を指しているのだろう。
アーラが消えた?
いやいや、話せなくなっただけで消えては無いはず、よね? え? 消えたの?
「ま、って……よく見てちょうだい! よーく見て! いるよね?? 白も?! アーラが消えたなんて……っ、そんなの!」
縋るように叫び、両手を広げる。
彼女は私をジッと見つめた。
息すら止めたような時間が、数秒とも数分ともしれず流れた。
「……ぁ」
彼女の小さな声を象徴するように、瞳が見開かれる。
良かった!!!! いたのね?! アーラ!!
「じゃぁ、コレはお姉様?」
首を傾げるフローレンス。
現在の、脅威も去りそうな予感に心も弾む。
「そう、そうよっ、フロー! あなたの愛する姉よ!!!!」
見た目で判断出来ないらしい事には愕然とするが、相手は人外なのだ。
そういうモノと割り切るしかない。
「……でも、大きさが……」
「あんたが言った通りよ! 綺麗でなくとも二色混ざった人間が他にいる?!」
「います」
「え?」
「でも……お姉様な気がします。前に白が大きくなって黒が小さくなった時と同じ、な気がします」
あっ、アーラが、乗っ取ってたあの時ね!?
って事はアーラは一段上の世界にいる?
ホッと息を吐く。
アーラが無事であると思えた事は大きいし、妹も武器を振るう気配が、消えた。
「良かったわ、わかってくれ……っ?」
咳き込む――瞬間、口から赤が飛び散る。
え……?
熱さを感じたのは一瞬で、直後に強く背を殴られたような衝撃が走る。
「おやすみぃ」
耳元でヘクターの声。
そんな、ここまで……来、た……のに……っ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる