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第13章・悪役闘争

◆ 4・リスタートの意味 ◆

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 なんだろう……こんな事で見た目の大事さを痛感するなんて……。


 本来のカエル姿の方がよほど人間味があった。なまじ人間体で、それもイケメンのルーファの姿では――。


 ただの性格破綻者だわ……。
 元婚約者の妹殺害を人に薦めるなんて、あんたの頭はどうなってんの? あんたが勇者なら、未来の嫁を委託殺人してるようなもんよ?


 まして相手は聖女なのだ。『聖女を殺せ』と天使陣営に提言するなど正気の沙汰ではない。

「自分が何を言っているのか、分かってるのか!」

 先輩が声を荒げる。
 対するアレックスは涼しい顔だ。

「ここにいる皆さんに限らず、大体の方は勘違いしています。聖女という存在のレッテルに対する役割も全て、地上に生きる者が後付けしたものでしかないんですよ」
「それがどうした」
「聖女は本当に『聖なる』を冠するにふさわしいのでしょうか?」


 アレックス?


「本当に聖女には相応の役割が与えられているんでしょうか?」


 本気で、あんた……聖女不要な流れでいく気? それとも私がかきまわす事も視野に入れて言ってるの? でも、それならどうして……。


 彼は私を見ないどころか、こちらに背を向けて、窓辺に立つ。
 彼からは先ほどまで私がいた中庭が見えているはずだ。

「もし、聖女が聖なる存在で、それ相応の役割を得て地上に存在しているのならば……我々が何をするまでもなく天上の者達の都合で……勝手に、生存が約束されているでしょう。必要となる、その瞬間まで」
「それは……違うだろう」

 先輩が絞り出すような声をあげる。

「スライ様、どうしてですか?」
「なぜなら、すでにシャーロット・グレイスが……」

 その通りだ。
 先輩は私が何度もリスタートをしている事と、その中でフローが死んでいた道もあったという事を知っている。そして先輩は知らないが、目の前のアレックスとて知っているのだ。
 頭の良いアレックスが忘れているはずもない。
 何か狙いはあるのだろうが、私には判断がつかない。

「シャーロット嬢とは個人的に親交がありましたので、スライ様のご心配に通ずる内容は聞いています」

 私の現婚約者キャメロンから放たれた密偵という設定を守り、彼は更に続ける。

「ですが、事実、聖女フローレンスは今も生きていますよね?」


 確かにそうね……、その時間軸で死のうとも私が死ねばリスタートされて元の時間軸になる。それに、私は聖女を聖女として覚醒させる為にいるわけで……?
 あれ??
 そうよ……、聖女を覚醒させる為に私は何度もやり直さなきゃいけないっていう……。


 知らなかったわけじゃない。
 知っていた。
 聞いていた。
 それでも理解が及んでなかった。

「聖女は……」

 呟けば、彼が振り返る。

「フローは、求められる形になるまでの生存が約束されてる……。そうなるまで、やり直さなければいけないシステム……」

 アレックスは視線を伏せる。
 ルーファの顔だというのに、見知ったカエルの顔がダブって見えた。


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