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第12章・秘密は舞台

◆ 28・席次の試練(後) ◆

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 カリムも困惑の表情を浮かべている。
 彼にとっても、三大悪役家の二家が揃っている事は問題らしい。

「ヨルク家は何だと思います?」

 不思議な問いかけだ。

「守護神製造の元締め?」
「調停者です。悪役選出の、です。我が家の始祖は、かつて悪魔と契約を交わしました。魔王の城の管と悪役選出の調停。代わりに守護神製造への道」

 彼は懐から鍵を取り出した。
 古びて錆の浮いた鍵だ。

「魔王城の鍵です。念の為、問います。どちらが死にますか?」
「は?」
「……成程な」

 間の抜けた声をあげた私と違い、先輩は肩を竦めた。

「あくまで調停者として一人を選出し、他を殺してデスマッチゲームを無しにするという事だったか」
「悪役は一人ですから」


 この男、頭おかしいの?
 こんな質問にまともに答える奴いないでしょ。ってか、ここまで暴露されたなら、先輩と手を組んでコイツを倒して鍵を奪えば良いのでは?


 先輩とアイコンタクトを取ろうと、視線を向けるが彼は渋い顔をしていた。

「お前の視線の意味は分かるが、そう簡単には行きそうもないな」
「なんでよ!」
「調停者として鍵を預けたのは悪魔だろう? つまり契約が守られているか監視している悪魔がいるという事だろう?」
「……それって」
「仮にこの男を殺しても悪魔と戦闘になる」


 だからって、このままじゃ先輩と殺し合う事になるんですけど??


「そして俺の想像では、その悪魔はお前じゃないのか?」

 ルーファの姿をしたアレックスに向けて放たれた言葉だ。
 先輩はかつて、ルーファと戦った事があるのだ。悪魔である事も知っている。だが、今は中身が違うのだ。実は『あなたの友人の王子です』とも言えない。
 対処に困っているうちに、モニークも不審げにこちらを見ていた。

「違いますね。確かにこの身は悪魔ですが、ここと縁はありません」
「第三王子が悪魔と契約を……?」

 モニークがうめくような声を出す。


 いや、違うんだけどね?


「悪魔、なのですか……」


 うん、カリム様も愕然とした声だしちゃってるじゃないの。中身は第一王子なんだけど。


 やがて、彼は数度深呼吸を繰り返し、戸口へと向かう。

「か、カリム様?」
「……どちらにしろ、先ほどの提案は反故にせざるを得ません。もう一つの悪役家に連絡を取ります」
「カリム様、ちょっと待って! それって三家で殺し合えって言ってるの?!」
「はい」
「はい?!」

 開き直ったとしか思えない言葉だ。
 呆気に取られている間に彼は部屋を出ていく。止めるべきなのに、私は行動できなかった。


 この場に、最悪の敵が爆誕しました。はい、先輩です。
 どぉぉするのよぉぉ!!!!


「よし、いっそ逃げましょう?!」
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