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第12章・秘密は舞台

◆ 7・魔王の事情(後) ◆

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 フローレンスの場合は管理というには微妙な扱いに見えた。だが悪魔のルーファをして『闇成分過多な聖女』と言わしめるのだから、管理は必要かもしれない。
 聖女も魔王も、管理が必要な程に壊したのは父である。


 お父様め……。


 大きなため息を漏らす。

「管理って具体的に何をすればいいの? まさか時々『人を殺させろ』とかじゃないでしょうね?」
「力を発散させる事が重要になるね。力を使う事、と言った方がいいかな」

 アレックスは、困ったように視線を下げた。

「本当は、ここのカメとぶつかって貰おうと思ってたんだ」
「カメ? ここの守護神って話の、あのカメ?」
「うん……」

 ぶつかってという言葉の意味する所は『戦闘行為』だろう。

「もしかして、カメが出現したタイミングで私を連れて行方不明になればエイベルがカメとぶつかるって? そういう事だった?」
「色々省略すれば、究極そうなるね」


 いやいや、アレックス何考えてんの!?


「あの子、手加減とかできないのよ?! 飯の種の私が攫われた疑惑のままカメとぶつかったら……カメ殺しちゃうかもよ?! それって、ココ、どうなるの? このオアシスって」
「すぐにはなくならないけど、それなりの短期間で移動は必要になるだろうね」


 アレックス?!


 民を一番に考えて来たのはプリンス・オブ・コンクエストのカエル王子アレックスだ。見た目が悪魔になったからって中身まで同化したとは思いたくない。
 だが、まるで彼の意図が理解できない。
 そんな他人様に多大な迷惑を産みそうな事をアレックスがしようとしているなど、考えたくもないのだ――たとえ私の為という理由があったとしてもだ。

「チャーリー、ここに来るまでにサソリの話をしたよね」

 信じられない思いで彼を見つめる。

「それが?」
「モンスターには食事が必要なんだよ。サソリは通行人から接種。ここのカメはこの地に根を下ろしている大樹のような存在。人々はカメの力を拠り所にこの地を開拓し住んでいる」
「それが何よ」

 この地にとってカメが大事だという事は充分理解している。

「君は、カメの食事だよ」
「……え?」
「彼らはカメに食事を差し出し、この地にとどめ置いているんだ。大体は社会的弱者が生贄として差し出され、時には犯罪者が、そして稀に訪れる国外の旅人は何も知らないまま……その責務を負わされてきた」


 ソレって……いつの時代の話よっ、前時代的にも、過ぎるでしょ!? 馬鹿なの?! 生贄だなんて……いや、確かに私もミランダを……でも、今回のコレとは話が……っ。


「君を燻ってカメの餌に。先輩たちは次回の食事用に取り置き食材……そういう事だよ」


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