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第12章・秘密は舞台

◆ 2・不揃いな助っ人(前) ◆

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 火に焼かれそうになっている中で、火に祈る。
 厳密にいえば、フォティアは炎だ。


 ……それ、って……、私、ミランダを殺した時に……やった手だわ!!


「フォティアに祈るって、つまり炎の魔王に縋るって事ね?! 私って前に契約してるんだもんね?!」

 炎の魔王、随分とフランクな女性だったのを覚えている。
 私はアーラを差し出す代わりに――。

「そうね……進捗報告!! 進捗報告してもらってないわ!!」

 悪魔の地上素通り計画推進に、炎の魔王は他の魔王に働きかけてくれるという話だった。

「〈 フォティア 〉」

 呪文を唱えれば、周囲に炎の気配が生まれる。


 うん、違う……。絶対的に、何かが違うよね? 悪魔召喚ってどうやるんだっけ!?
〈ネローを……〉
 水?


「〈 ネロー 〉」

 水の気配が混ざる。


 で、どうしろって??
〈ベオルファ〉


 口に出そうなど思っていなかった。
 ただ、その響きは口から零れ落ちた。


「〈 ベオルファ 〉」

 炎と水がぶつかり合い混ざり合う。
 それは幻想的ですらあった。部屋に侵入している炎と煙が私の手の中に集約されていく――丸く渦巻く球は、直接触れていない私の手すらも焼きそうなほどに熱さを伝える。高温だ。
 手を離すよりも早く、球は爆発した。
 またも視界は煙一色。堪らずせき込む私。


 何だって言うのよー!!!!


「俺様を呼びし、愚かな魂よ!」

 聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

「俺様はベオルファ、炎と水の精霊王が系譜ー……って!? チャーリー?!」
「え……、チャーリーィィィィ????」

 更に聞き覚えのある声だ。しかも未だかつてない程の取り乱した叫びだ。
 パチリと指を鳴らす音と共に、煙が消え去る。

「チャーリー、こ、これを?!」

 カエル――ではなく、ルーファの姿をしたアレックスが顔を背けたままマントを差し出す。
 その後ろには首を傾げているカエルの姿をした――ルーファだ。


 そ、そういえば……!!!!


 己の姿を思い出し、短い悲鳴が漏れる。
 慌ててアレックスの差し出すマントをもぎ取り羽織る。

「何で、俺様呼んだ? ここドコだよ。俺様、アレックスに言われて王宮にいたんだぜ?」


 なんだ、この違和感……ハンパない。


 少しも取り乱さないカエルの姿のルーファ。
 彼がする嫌そうな態度は、地味にストレスを与えてくる。

「ルーファ止めて、カエルのイメージ崩れる」
「おいおい……」
「ついでに今がどういう状態かって言うと、燃やされてる最中よ」
「マジか……お前どんだけ嫌われてんだよ」

 呆れたように言うルーファ。

「え? チャーリー、エイベルはどうしたの? 何でこんなことに」
「いや、知らないし。ってか、あんたが無事で良かったわ。今から共に死ぬ感じだけど」

 一人よりはマシかもしれない。

「出るぞ」

 流石はルーファだ。
 カエルの姿をしていても、悪魔にとって人間の焼き討ちなど大した意味はないらしい。

「おい、アレックス。ぶっ壊せ」

 いやいや、誰に向かって言ってんのよ? 武力ゼロ男に投げる言葉としてどうなのよ。
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