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第11章・恩赦
◆ 24・熱砂のモンスター(中) ◆
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港町を出て、朝陽と呼べる時間が過ぎようとした頃――私たちは砂漠に突入していた。
すでに、私の分のラクダは馬と交換している。
ラクダとか二度と乗りたくないわ……。というか砂漠自体、二度と来たくないわね!
まだ午前中でこの暑さなら、昼日中ともなれば汗すら干上がる気がする。
後ろに座っている弟が、控え目に服を引っ張る。
「何よ?」
砂漠に入ってからのエイベルは、落ち着きがない。始終、背後で動く気配がしていた。
「オネーサマ、敵は早めにショリしろって言った。早めってどれくらい?」
成程、何か感知してたのね。
「すぐに処理して。今よ、今!」
「……まだ先。夜にブツかる」
場所が分かっているなら、迂回できるというものだ。
でも夜に遭遇するくらい遠くにいるわけで……、そんなヤツを敵として認識するって事は……。
「エイベル、そいつは絶対的に敵なの?」
「うん」
「どんなヤツで、どの辺にいる? 避けられそう?」
「ウえてる。先にいる。たぶんムリ」
最悪ね。
「どんな見た目か分からない?」
聞き方を変えてみるも、エイベルから芳しい答えが返るはずもなかった。首を傾げ、目の前にいないから分からないと答えるばかりだ。
続いての説明から察するに、敵意を孕んだ気配を感知したらしい。
近づいてきたら言うように伝え――。
「先輩、先輩! この先に敵がいるってエイベルが……!」
馬上という事もあり、大きな声をあげる。先輩はラクダを止めもせず、エイベルを見遣る。
「人間じゃないな?」
そりゃエイベルは人間じゃないけど?
「気にするな」
「いやいや、確かにエイベルは人間じゃないかもだけど、敵は大問題でしょ! 気にするわ!」
「チャーリー、それは多分モンスターだよ」
反論する私に答えたのはアレックスだ。しかも衝撃の内容すぎる。
「モンスター? え、またイカ?!」
もうイカは一生分、見ている。
「違うよ、チャーリー。西大陸には元々モンスターが生息してるんだ」
「……は?」
もともと? え? 元から……モンスターが、いる?
「ちょっと意味がよく分からないんだけど。モンスターが、動物みたいに……普通にいるって事?」
「そうだよ」
「そうだ。我が社の得意先も西大陸への派遣といった所だ」
そんなの嘘よ! モンスターと人間が共存なんてっ。
イノシシ一匹で街が倒壊しかける騒ぎだ。
二人の口ぶりから察するに、一匹や二匹のレベルではない。
「西大陸では、モンスターが自然発生してるって事?」
恐る恐る質問する。
その間も、エイベルは視線を右に左にと動かし、落ち着きがなかった。
すでに、私の分のラクダは馬と交換している。
ラクダとか二度と乗りたくないわ……。というか砂漠自体、二度と来たくないわね!
まだ午前中でこの暑さなら、昼日中ともなれば汗すら干上がる気がする。
後ろに座っている弟が、控え目に服を引っ張る。
「何よ?」
砂漠に入ってからのエイベルは、落ち着きがない。始終、背後で動く気配がしていた。
「オネーサマ、敵は早めにショリしろって言った。早めってどれくらい?」
成程、何か感知してたのね。
「すぐに処理して。今よ、今!」
「……まだ先。夜にブツかる」
場所が分かっているなら、迂回できるというものだ。
でも夜に遭遇するくらい遠くにいるわけで……、そんなヤツを敵として認識するって事は……。
「エイベル、そいつは絶対的に敵なの?」
「うん」
「どんなヤツで、どの辺にいる? 避けられそう?」
「ウえてる。先にいる。たぶんムリ」
最悪ね。
「どんな見た目か分からない?」
聞き方を変えてみるも、エイベルから芳しい答えが返るはずもなかった。首を傾げ、目の前にいないから分からないと答えるばかりだ。
続いての説明から察するに、敵意を孕んだ気配を感知したらしい。
近づいてきたら言うように伝え――。
「先輩、先輩! この先に敵がいるってエイベルが……!」
馬上という事もあり、大きな声をあげる。先輩はラクダを止めもせず、エイベルを見遣る。
「人間じゃないな?」
そりゃエイベルは人間じゃないけど?
「気にするな」
「いやいや、確かにエイベルは人間じゃないかもだけど、敵は大問題でしょ! 気にするわ!」
「チャーリー、それは多分モンスターだよ」
反論する私に答えたのはアレックスだ。しかも衝撃の内容すぎる。
「モンスター? え、またイカ?!」
もうイカは一生分、見ている。
「違うよ、チャーリー。西大陸には元々モンスターが生息してるんだ」
「……は?」
もともと? え? 元から……モンスターが、いる?
「ちょっと意味がよく分からないんだけど。モンスターが、動物みたいに……普通にいるって事?」
「そうだよ」
「そうだ。我が社の得意先も西大陸への派遣といった所だ」
そんなの嘘よ! モンスターと人間が共存なんてっ。
イノシシ一匹で街が倒壊しかける騒ぎだ。
二人の口ぶりから察するに、一匹や二匹のレベルではない。
「西大陸では、モンスターが自然発生してるって事?」
恐る恐る質問する。
その間も、エイベルは視線を右に左にと動かし、落ち着きがなかった。
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