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第11章・恩赦

◆ 4・囁き ◆

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 家族と使用人に送り出された私は御者台にいる。
 隣にはエイベル、持たされた地図を開いている。
 侯爵家令嬢ともあろう私が、車内ではなく御者台にいる理由は簡単だ。長旅でのストレス軽減――曰く、歌姫モニーク、商売人オズワルド・スライ、第三王子キャメロンと同じ空気を吸わない為だ。
 三人の雰囲気はギスギスを通り越して冷めきっている。

「オネーサマ、まっすぐどーぞ」

 言われずとも一本道で、道の横は田畑か林だ。


 ってか、何でキャメロンが付いてきてるわけ?? 子供二人連れて、美男美女と旅するなんて目立ってしょうがないわっ。


 父は当初、エイベルにだけ指令を下そうとしていた。私をここに組み込んだのは思いつきのようなものだったはずだ。
 だとするなら、父はスライ商会もしくは組合に登録している先輩を雇ったのだろう。


 モニークは想像つくわ。私のスライ商会潰しが遅すぎて様子見に……いや暗殺を請け負ってきたのかも? そうなると残るキャメロンは……は、私の殺害?! だって、リスタート人生の原因が私って知って……あの目。あの目は忘れられない……。
 正しく、憎悪だった。


 複雑に絡み合った人間が集まっているのだ。事情は各々、一人になった所で聞くしかない。

「エイベル、お父様から……道中の事で何か命令された?」
「うん」
「どんな?!」
「チャンスがあったら、殺していいって」

 一瞬、頭が真っ白になって慌てて問う。

「だ、だれ、誰を!?」
「全員」
「え?」


 お父様……全員って、何で? いや、親に殺されかける事例なんて世の中溢れてるし、今更お父様に、命狙われて泣くような心は持ち合わせてないし、それに今までの軸でお父様に殺された事があったかっていうと……、あれ? ない?? ないわ???? ないね?!
 じゃ何があって私を殺す事にしたの?


「あ、オネーサマはどっちだろ? オレはオネーサマの護衛で、ココにいるヤツらは殺してOKって言われて、こういうの……どっちが優先? 先? 後?」

 エイベルは首を傾げる。


 バカで良かった!!!!  前者だと言えばいい。私を守る方が優先よって……。


 口を開こうとして、止まる。


 待って、可笑しいよね? お父様は灰色計画を推進中で、その思想は魔王は魔王として存在しながらも善であるって感じだった。だからこそ、魔王としても半人前すぎる彼に力を与える為に? 城をってわけで。


 聖女に勇者、魔王に城。悪役はそのお膳立てをするのだから、今死ぬのは父にとってもマイナスな気がした。

「エイベル、お父様に言われた言葉をそのまま繰り返してみて? 覚えてるなら」

 彼はコクリと頷く。

「えーっと『オマエがジャマだと思ったら、レイガイなく消していいよ』って。チャンスさえあればって」


 魔王の障害になる者って意味? それに……その言い方って、私云々や、この馬車の話じゃなくて……!


「全員って、エイベル……さっきの、全員って」

 震える声。父の恐ろしい囁きを言葉として聞くのが怖い。

「あ、うん。『大地に息づく全て』って言われた」

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