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第10章・勇者の胎動
◆ 11・壊れた男(後) ◆
しおりを挟む「って、あんた……『ルーファを応援したい』とかプラスな意見言ってたのに、随分な言葉ね」
その上、カエルにとっては契約中の悪魔でもあるのだ。それを『追い出したい』なんて、意味がわからない。
「見て来た限り彼の行動原理、全てがアーラへの愛なんだ」
「でしょうね?」
「人間として死に、魔王になり、今は上級悪魔。関係ないから省いた部分もあるけど、魔王から上級悪魔への転向も相当な血が流れたし、地上も煽りを受けてるんだ」
ナイスだわ……何があったかとか聞きたくないし……。
「ルーファの事はボクも長い記憶の旅路で、親しく思ってるよ。でも彼が性格的に『イイ人』でいられるのは、アーラがいてこそなんだ。『契約』は絶対だと聞いたけど、それでもボクはその『絶対』を信用してないんだ」
「裏切るって? 世界だか神だか知らないけどシステムに反抗したら、ルーファだってタダじゃすまないでしょ」
「そうだね。でも……直近の記憶、システムを無視してミランダの一撃を防いだよね?」
「あ、あー……そういえば、そうね?」
あれは助かったから……深く考えなかったけど。
確かに絶対にシステムは裏切る事ができないと言うなら、可笑しな話になる。
「彼をボクらにとって無害化する必要があるよ。そしてそれにはアーラを引き渡すしかない」
二人の仲を応援はあくまでルーファに枷を填める為って事ね。これ以上の問題を起こして欲しくないから。
……流石、カエル。プリンス・オブ・コンクエストは伊達じゃないって? あんたもルーファと同じで結構、冷静冷徹ですよ?
「でもそのアーラはさ、その面倒なオリガに肉体を監禁保護されてて、魂は私に封印されてんのよ? アーラを引き渡しましょうって言っても簡単な道じゃないわ。それに私……」
アーラを炎の魔王に引き渡すって契約しちゃってんのよね……。
あの時はルーファが何とかするでしょ、って軽い気持ちだったけど……コレ、ルーファにバレたらヤバいって事、よね?
『アーラ、魔王に取られちゃうかもだから助けてあげてね』
『おーよ!』
ってなノリで頼めばいいやと思ってたんだよね……。
私とてその物ズバリを話すのはマズいと思ったからこそ、ライラ達に今までの話をした時は、魔王との契約内容をボカしている。
ルーファとはそれなりの関係を築いてきた自負があったからこその甘えだった。売り渡した事実さえうまく隠していれば『何とかなる』と。
あの時の私の置かれた状況も生存の為と酌量してもらえると――。
どうする? カエルに話す?
カエルの言い分には納得しかない。基本的にアーラさえ絡まなければ、ルーファはイイ奴で、話のわかる奴だ。
今聞いた事を踏まえると、彼の行動が引き起こした世界混乱はオリガの人生も大きく狂わせている。アーラと繋がってくれれば、ルーファ敵対未来は防げるだろう。
「ボクらのやりたい事への協力も頼みたいから、アーラ関係から取り掛かるつもりだよ。彼は強い……味方になってもらう事が、最後の勝敗を分けると思う」
ん??
「……何の話よ? あんた何をしたいのよ」
彼は私の手を取る。体温の低いカエルのつるりとした手を見つめる。
「箱庭刑を解くんだ」
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