180 / 375
第10章・勇者の胎動
◆ 9・混沌の世界(後) ◆
しおりを挟む
「ってか、詳しすぎない? ルーファの記憶を見たのよね? そして私たちの婚約破棄とも無関係な気が……」
「うん。先に言っちゃうと……ルーファの計画はこの双子に魔王として討たれる事だったんだ。だから二人の事は常に監視してたよ」
うわぁ、お父様やカエルにそっくりじゃないの……。で、私のもう一つの質問、婚約破棄に関する事はまだ話してくれない……と?
あくまで婚約破棄話はこのルーファvsオリガ話が終わるまでする気がないらしい。
「順番で言えば、ルーファが魔王転生して、聖女アーニャ魔王サーシャが誕生覚醒するも他所事であるオリガ死亡で停滞って事だね」
「で?」
さっさと話を移らせるべく先を促す。
「二人は作成者アーラの元に辿り着き、オリガを救うよう頼むんだけど……もうアーラには、世界も人も救う力が残ってなかったんだ……とっくにね。滅びを待つだけの彼女は、地上の祈りだけが糧だった」
「祈り……」
「ルーファが言うには元々、地上の空気があわなかったらしいね。二人は世界に絶望するけど、聖女たちが死ぬ事によって世界に復活の光が届く事を知り、それにかけるんだ」
「……それって」
「うん。二人は互いに胸を貫き灰色の靄が世界に満ちる」
灰色……なんだろう、灰色の出現率高すぎる……。面倒なお父様がよぎるじゃないの。物事を灰色にしたいお父様にはピッタリの世界じゃない? もしかしてお父様は……。
「混沌とした世界だったよ」
「どんな風に?」
父の目指す世界は同じであるかもしれないのだ。
「その灰色はモンスターを産み、壊れた魂を多く復活させた。その中の一つにオリガもいた。そして二人も死ねなかった。当然だよ。どちらも覚醒してても、条件足らずだったんだから」
「覚醒してるのに条件足らずって、条件とかあるの?!」
「条件は、周知じゃないか。聖女は勇者に力を与えないと……この話の肝が結局、勇者不在って事なんだよね。だってボクたちの時代では勇者とされているサーシャは魔王だったんだから。でも、勇者は存在してはいたんだよね」
意味が分からない。
「勇者は確実に台頭するって事? 実は埋もれてたけど勇者がいたの?」
「そうだね。ボクは見ていて思ったよ、多分だけど勇者はオリガだ」
オリガが、勇者……?!
「そうしてみれば、納得がいくんだよね。勇者死亡の時点で別の勇者を見つけたら良かったのかもしれないけど、二人はオリガに移入しすぎていた。そしてオリガを救う為に『神の計略』から逸脱した行動を取った」
神の計略――かつてルーファに聞いた別名『神の愛』だ。地上に聖女の光が行き渡り、魔王に殺された人々の復活し楽園の期間。
「これに焦ったのがルーファとアーラだよ」
そりゃそうでしょうね。
「求めた配剤が勝手に死んだ上に、新たに均衡を取る珠を生み出す力もない。アーラは『今』ある物を癒す方が早いと決断する、それには本物の光が必要だったんだ」
「うわ……イヤな予感しかしないわ……」
「想像通りだよ」
嬉しくもない事をカエルは言った。
「うん。先に言っちゃうと……ルーファの計画はこの双子に魔王として討たれる事だったんだ。だから二人の事は常に監視してたよ」
うわぁ、お父様やカエルにそっくりじゃないの……。で、私のもう一つの質問、婚約破棄に関する事はまだ話してくれない……と?
あくまで婚約破棄話はこのルーファvsオリガ話が終わるまでする気がないらしい。
「順番で言えば、ルーファが魔王転生して、聖女アーニャ魔王サーシャが誕生覚醒するも他所事であるオリガ死亡で停滞って事だね」
「で?」
さっさと話を移らせるべく先を促す。
「二人は作成者アーラの元に辿り着き、オリガを救うよう頼むんだけど……もうアーラには、世界も人も救う力が残ってなかったんだ……とっくにね。滅びを待つだけの彼女は、地上の祈りだけが糧だった」
「祈り……」
「ルーファが言うには元々、地上の空気があわなかったらしいね。二人は世界に絶望するけど、聖女たちが死ぬ事によって世界に復活の光が届く事を知り、それにかけるんだ」
「……それって」
「うん。二人は互いに胸を貫き灰色の靄が世界に満ちる」
灰色……なんだろう、灰色の出現率高すぎる……。面倒なお父様がよぎるじゃないの。物事を灰色にしたいお父様にはピッタリの世界じゃない? もしかしてお父様は……。
「混沌とした世界だったよ」
「どんな風に?」
父の目指す世界は同じであるかもしれないのだ。
「その灰色はモンスターを産み、壊れた魂を多く復活させた。その中の一つにオリガもいた。そして二人も死ねなかった。当然だよ。どちらも覚醒してても、条件足らずだったんだから」
「覚醒してるのに条件足らずって、条件とかあるの?!」
「条件は、周知じゃないか。聖女は勇者に力を与えないと……この話の肝が結局、勇者不在って事なんだよね。だってボクたちの時代では勇者とされているサーシャは魔王だったんだから。でも、勇者は存在してはいたんだよね」
意味が分からない。
「勇者は確実に台頭するって事? 実は埋もれてたけど勇者がいたの?」
「そうだね。ボクは見ていて思ったよ、多分だけど勇者はオリガだ」
オリガが、勇者……?!
「そうしてみれば、納得がいくんだよね。勇者死亡の時点で別の勇者を見つけたら良かったのかもしれないけど、二人はオリガに移入しすぎていた。そしてオリガを救う為に『神の計略』から逸脱した行動を取った」
神の計略――かつてルーファに聞いた別名『神の愛』だ。地上に聖女の光が行き渡り、魔王に殺された人々の復活し楽園の期間。
「これに焦ったのがルーファとアーラだよ」
そりゃそうでしょうね。
「求めた配剤が勝手に死んだ上に、新たに均衡を取る珠を生み出す力もない。アーラは『今』ある物を癒す方が早いと決断する、それには本物の光が必要だったんだ」
「うわ……イヤな予感しかしないわ……」
「想像通りだよ」
嬉しくもない事をカエルは言った。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる