上 下
119 / 375
第8章・侵入者

◆ 8・フローレンスの秘密(後) ◆

しおりを挟む
「フローレンスから採取された涙とかって、流石に本人も気づかないって事はないよね?」
「血はともかく、そうですね。どれくらいの量かにも寄りますが……フローレンス様の所へ?」
「ええ、妹に会いに行くのは変じゃないもんね?」
「……変ですね」
「そ、そう?!」

 ミランダはわざとらしく肩を竦めた。

「お嬢様に限って、自分から会いにくなど。格下相手ですからね。基本呼び寄せるでしょう、待っていて下さい」

 去っていく後ろ姿を見送る。
 かつての自分を思い起こせば、納得もする展開だ。ミランダには私が本当に16歳だった頃の記憶しかないのだから当然かもしれない。


 まぁ……どんな風に心を入れ替えようが、ソレを見せられなきゃ意味がないって事よね。フローレンスとの関わりも今回が『初』みたいなもんだし……。


「聖女かぁ……」


〈フローレンスは苦手?〉
 そりゃ苦手よ。比較的お母様には懐いてるし、私の事もあっちは気に入ってるみたいだけど、こっちはどう関わるか悩むし! 私は昔っから、あの子の事は分からないっていうか……何考えてるか読めないし、変な子だからなぁ。
〈変な子?〉
 動物や植物と話したり、宙を見つめて話しかけてる事あるし……。


 幽霊とでも話してるのかと、子供の頃は怯えたものだ。


〈それは『嫌い』とは違うの?〉
 ……嫌い……では、ないかな。無関心だったから。嫌いだったら、いじめてたかもね? 逆に無関心で良かったのかもしれないなぁ、今の状況から考えると。


◆◇◆


「どこにも……っ、いらっしゃいません!!!!」

 飛び込んできたミランダが叫ぶ。
 この場合、主語を察する事は容易だ。

「フローレンスまだ帰ってないの?」
「いいえ!! ここ数日お見掛けした方がいないのです!!!!」


 いや、逆になんでそうなった? 仮にも侯爵家の令嬢だぞ? なんで数日見てません状態が家で起きるのよ。


「フローレンス付きのメイドに聞きなさいよ」
「そんなもの……いるわけないじゃないですか! 馬鹿ですかっ」
「は?」

 いきなりの暴言に素で返すも、相手は苦虫をかみつぶしたような顔で舌打ちする。

「ちょっと何なのよ」
「お嬢様は……所詮、お嬢様ですねっ」


 なんかめちゃくちゃ馬鹿にされてない??
 ミランダが元々フローレンスと親しくしてるのは知ってたけども……これはなくない?


「何なのよ、言いたい事があるなら言いなさいよ。大体ねぇ! 今更あんたの敬語とか気持ち悪かったんだから!」
「じゃあ、言うわ。どこの馬の骨ともしれない汚らしい子供の世話なんて、上流家庭のメイドが世話をするとでも? しませんよ!」
「なっ?! じゃあ、フローはどうやって生活してたってのよ!?」
「フローレンス様はいつも自分の事は自分でなさってましたし、食事やその他の扱いも平民と同等! いえ、それ以下に等しい事だって!」

 怒鳴り合って、明かされた出来事に呆然とした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

女神のチョンボで異世界に召喚されてしまった。どうしてくれるんだよ?

よっしぃ
ファンタジー
僕の名前は 口田 士門くちた しもん。31歳独身。 転勤の為、新たな赴任地へ車で荷物を積んで移動中、妙な光を通過したと思ったら、気絶してた。目が覚めると何かを刎ねたのかフロントガラスは割れ、血だらけに。 吐き気がして外に出て、嘔吐してると化け物に襲われる…が、武器で殴られたにもかかわらず、服が傷ついたけど、ダメージがない。怖くて化け物を突き飛ばすと何故かスプラッターに。 そして何か画面が出てくるけど、読めない。 さらに現地の人が現れるけど、言葉が理解できない。 何なんだ、ここは?そしてどうなってるんだ? 私は女神。 星系を管理しているんだけど、ちょっとしたミスで地球という星に居る勇者候補を召喚しようとしてミスっちゃって。 1人召喚するはずが、周りの建物ごと沢山の人を召喚しちゃってて。 さらに追い打ちをかけるように、取り消そうとしたら、召喚した場所が経験値100倍になっちゃってて、現地の魔物が召喚した人を殺しちゃって、あっという間に高レベルに。 これがさらに上司にばれちゃって大騒ぎに・・・・ これは女神のついうっかりから始まった、異世界召喚に巻き込まれた口田を中心とする物語。 旧題 女神のチョンボで大変な事に 誤字脱字等を修正、一部内容の変更及び加筆を行っています。また一度完結しましたが、完結前のはしょり過ぎた部分を新たに加え、執筆中です! 前回の作品は一度消しましたが、読みたいという要望が多いので、おさらいも含め、再び投稿します。 前回530話あたりまでで完結させていますが、8月6日現在約570話になってます。毎日1話執筆予定で、当面続きます。 アルファポリスで公開しなかった部分までは一気に公開していく予定です。 新たな部分は時間の都合で8月末あたりから公開できそうです。

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

処理中です...