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第7章・二つの心

◆ 29・よんどころない事情(前) ◆

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 弑逆? 
 えーっと、弑逆って滅多な事では使わない言葉よね? 基本、王様殺害系じゃない? でも王様っていうと、カエルのお父様とかお爺様とかになるわけで……どっちも記憶の限り普通に生存してり
 つまり、そういう事?


 呆然としたのも一瞬、問題はメリットだ。

「何があって?ミランダの家族に何の得があるっていうの?」
「そこですよ、お嬢様……」

 ミランダは料理の手を休めずに呟く。

「私には二つの使命がありました。一つは聖女フローレンスの監視、もう一つは……あなたとカエル王子の結婚を阻止です」
「どっちも啓教会の指示よね?」

 振り返れば、頷く様が見えた。
 彼女は「でも」と続ける。

「私は狂信者ではありません」
「いやいや、あんた人を燃やしといてソレはないわ! ってか、あんたが私を殺す時って大体全部が全部教団の意向じゃないの!」

 流石に黙ってられずに口を挟む。今までの人生でTOP3の殺害犯の動機で一番納得がしていたのはミランダの行動だった。
 宗教という名の盲目が起こす悲劇と割り切ろうとさえ思っていたのだ。

「ミルカ、お嬢様にも色々あっての事です。話してください」


 色々起こした側が何か言ってる!!!!
 でも、……この流れは教えてくれる気があるって事よね?


 慌ててミルカを見る。

「長い話をするには歳を取りすぎたわい。……ま、一文で事足りる内容じゃ。当時の国王は啓教会寄りの人間で、ミランダの母親は反啓教会派の人間じゃった」


 やっぱり宗教問題に落ち着くのね?? 当時の国王って事は、ミランダの親世代ならカエルのお爺様になるはず。うん、一文じゃ足りません。


「で、どうして弑逆しようって所まで行っちゃったの? 流石にそれなりの事件がないと、弑逆まで行かないでしょ」

 たとえ空気が読めない系の烙印を押されようとも、分かったふりをして先に進めるわけにはいかない。

「王家の者は何かの折り目に託宣を受けるじゃろ?」
「そう、ね? それが?」
「前国王は、アレを国民全員に課そうとしたのじゃ」
「……それは……」

 もし国民全員に託宣を、というのなら反発は凄いだろう。良い内容が下されれば問題はないが、託宣はそういった事だけではない。王子であるカエルすら、託宣には嫌気がさしてる節もあった。内容如何ではカエルのような気持ちになる者も多いだろうし、それを元に判別されかねない危険性も孕んでいる。

「後は想像に易いじゃろ? 反発した過激派がすぐに行動を起こした。儂とて反発は理解するが、殺人行為は止めるしかあるまい? 前世の妻で永遠誓った癖に何だったんだ等という文句からだけではなく、処するしかない。勿論、未婚で儂と結婚する気があったなら……こっそり逃がした可能性もあると言っておこう」

 老人はカカッと笑った。
 ミランダは嫌そうな素振りすら見せずに頷く。

「今となっては過去ですし、家族が行動を起こした事も、ミルカが処刑した事も納得しています」


 ミランダ、あんたってどれだけデキた人間なの?!

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