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【04】
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『忌引』の紙が剥がされた玄関前で息を吐き出して、覚悟を決めインターフォンを鳴らす。
「さてと、嘘でもつくか」
お世話になった叔父さんと叔母さんに嘘をつくのは嫌だが、もうどうすることもできない。
「どちら様ですか?」
インターフォン越しに聞こえて来る叔母さんの声は、あの日から変わらず疲れ切っている。
「響です。叔母さん」
正月に今年リフォームする予定だって叔父さんは話してたけれども……今年はしないだろうな。心ない奴が既に”保険金の他に賠償金ももらったんでしょう”とか言ってきたとか。
リフォームしたら一人娘が死んで手に入れた金で建て直したと言うだろう。叔父さんと叔母さんは住み慣れた家を引き払って新しい土地に移るのも良いかもしれない。
「来てくれたの、響くん」
八歳の頃から十年間、大学に入るまで住んでいた家。去年訪れた時はそんなに古くなったような気はしなかったが、一人欠けるとこれほど家は寂しくなるのか。
そうだ、晶が言ってたな。
俺が家を出たら家がすこし寂れたような気がするって。
線香をあげて「本当は死んでいない晶」の遺影に手をあわせて、沈痛な面持ちで二人と向かいあう。
「叔父さん、叔母さん」
この状況は晶が望んだことだからどうしようもない。
「響くん」
沈黙の多い会話を交わして”また来ますから”と言って家を後にする。叔父さんの背中が小さくなったのは、年のせいだけじゃないし、叔母さんの皺が深くなったのも同じだ。
「……さてと、明日は晶に会いに行くとするか。”ふなだ”の塩豆大福に……」
晶から渡された”あとで買ってきてねリスト”の甘党ぶりに、苛つき半分、喜び半分。俺の両親が異世界の化け物に殺されたことに感謝しつつ――
**********
モンターグが対人恐怖症だろうが、引きこもりだろうが、プロの自宅警備員だろうが、外出するための黒シーツがなかろうが知ったことじゃない。引きずり出して全部を聞き出してやる!
意味もなく腕まくりをして、私は誓っていた。
アイェダンも聞きたいことがあるらしく、私を助けにきた時に持っていた剣を取り出した。刃が水晶みたいな剣は、ロメティアの王しか持つことが許されない剣で、王以外の者が持つと刃の輝きが濁り、何も切ることができなくなる。
私も持たせてもらったけれど、本当に刃が濁る。どんな仕組みになっているのかは……聞いたけれども魔法理論というやつで、私には解らなかった。
中世風の世界観だけれども、数学の知識は私がいた世界と変わらない……か、もしかしたら上かもしれない。
魔法はすべて算術で動いているとのこと。
”理系”という単語に憧れと羨望と嫉妬と嫌悪感を持っている私には解らない世界、それが魔法。
さあ、出かけよう! というところで、伝令がやってきた。
「王、アキラさまに面会したいと言うものが」
「誰ですか?」
「ヒビキと名乗りました。クロエ・ヒビキと。着衣は見慣れないもので、召喚士のリングを確かに装着しておりました」
召喚士のリングって……なに? それよりもクロエ・ヒビキって……
「知り合いですか?」
アイェダンに聞かれて、私は納得できない気持ちを押し殺して頷く。
「いとこだと思う」
どうして響がここに? まさか異世界で迷子になって、私のところまで? それは無理だよね。私がここにいるのを知っているのは……もしかして知っててきたの? どういうこと。
私はアイェダンと共にかつて私がアイェダンと初めて出会った通路へと向かった。あの場所が王との面会室だと知ったのはつい最近のこと。
異世界には玉座とか、殿様が座る一段高い椅子はないらしい。
アイェダンに「ないの?」と聞いたら「はあ……意味が分かりません。わざわざ高い所に座ってどうするのですか?」と、かなり本気で聞き返され、私も答えに詰まった。頭を過ぎったのは諺の『馬鹿と煙は高い所が好き』……言える訳ない。
そんなことを思い出しながら、向かった先にいたのはデカイ紙袋を持って、警察の制服を着た響。
「よう、久しぶり。晶」
正統派で涼しげな美形、中身はかなり性格悪い。でもそれが「クール」とか言われて……要は見た目だよね。見た目がよければ許される。
身内だからら”見た目より性格を見たほうがいいよ”と他人に注意するけれど、私も赤の他人だったら、響のことはやっぱりクールで格好良いと思うだろう。
「本物の響?」
ロメティアの西洋体型に負けない腰の高さに股下の長さ。
これで純粋な東洋人だってんだから……私が五歳、響は八歳の頃から同じ家で同じ物食べて育ったってのに、なにこの違い。
「偽物なんているわけないだろう。お前の希望の菓子もってきてやったぞ。味気ないタッパーだけど我慢しろよ」
無印良品っぽい茶色の大きな紙袋を手渡された。
半透明のタッパーの中身は、見覚えのある和菓子。
「響、どうしてここにいるの?」
「冗談言ってると冷めるぞ」
冗談ってどういうこと?
「なにを言ってるの? 響」
「お前こそ、なにを言ってるんだ晶」
「なに……って」
「お前ができたての”ふなだ”の塩豆大福を持ってこいって言っただろう」
「塩大福じゃなくて」
「カンパーニュか。それは下のほうに。ごっつい紙箱に保護されてるから潰れてない。安心そろ」
「食べ物じゃなくて! なんで響はこの状況を受け入れてるの? なんで驚かないの!」
私は生まれて初めて本気で訴えた。こんなにも心の底から叫んだのは初めて。
「どうやって驚けって?」
でも響はいつも通り、表情を崩すことなく、ちょっと馬鹿にしたような態度と落ち着いた声のまま。
「本当に意味が解らないんだけれど。ここ異世界なんだよ? 私、異世界に召喚されたんだよ?」
「お前、自分が異世界に召喚されるために生まれてきたんだろ? そのために転生したって俺に教えてくれたじゃないか」
響の言葉、理解したくなかった。
すぐに理解できちゃったけれども、なにそれ……
「えっと……私は自分が異世界召喚されることを知っていたの? 響……どういうこと」
「むしろこっちが聞きたい。でもまずは塩豆大福食え。苦労して買ってきたんだから食べてもらわないと腹立たしい」
”ふなだ”は本当に人気の和菓子店で、とくに塩豆大福は午前中のうちに売り切れちゃうんだ。
「わ、わかった」
私たちは場所を移動して固いベンチに腰を下ろして、塩豆大福を食べることに。
「お茶お願い」
控えていた侍女に温かいお茶を頼んだ。
「あれ? そう言えばエニーは?」
これでもロメティア国王の伴侶だから侍女とか付くんだ。
その私付きの侍女がエニー……なんだけれども、
「今日は休みだそうです」
「そうなんだ」
顔色悪い子だから、ちょっと心配だね。
他の侍女の話じゃ、昔は明るくて活発だったらしいけど、ある日突然根暗になったとか。なにか言えない事情があるんだろうと、誰もその傷には触れないらしいけど……なんだろね?
そして、久しぶりの塩豆大福は美味しかった。
アイェダンも気に入ったらしく、笑顔で食べていた。西洋系の美女が塩豆大福を頬張る姿は可愛い……いやああ! この頃私、アイェダンの仕草が可愛いくみえて仕方ないんですけれども、これはなに? 愛? 愛なの?
食べ終わって一息ついた私たちを見て、飲んでいた500mlペットボトルのキャップを閉じて体の前で両手で持って話だした。
「晶はどうして俺がここにいるのか分からないんだな?」
「分からない。本当に分からないの」
響はペットボトルを応援メガホンのように右手に打ちつけて、立ち上がる。
「晶の召喚担当はモンターグと言ったな。そいつの所に今から行くぞ! アイェダン王も」
「はい」
当初の目的通り、モンターグのところに行くことになったんだけれど……なんで響、モンターグの名前知ってるのかな? 異世界にはどうやって来たんだろう? 聞きたいことが多すぎて逆になにも聞けない。
馬車の中でも響は機嫌わるそうにペットボトルを手のひらにぶつけていた。中身のお茶は泡立ってひどいことになってる。
馬車が止まり降りた先には、ちょっと大きめなお屋敷。私はここら辺から城に連れて来られたわけだ。
明るい時に見ると、禍々しくもなんともない家だ。
「開けろ!」
響は高圧的にドアを叩いて怒鳴る。
「あなたは?」
「召喚管理局の治安維持部門の責任者クロエだ」
召喚管理局の治安維持……で責任者の響? なにその恥ずかしい”ひびき”。実際叫んだ響も若干照れてる。
響のこんな顔みるの久しぶりだなあ。
伯父さんたちの事故からやっと立ち直って、心を開いてくれたときの顔に似てる。
今でこそ性格の悪いやつだけど、家にきたばかりの時は……仕方ないとはいえ、捻くれてたなあ。ご両親を事故で失ったから仕方ないんだけど。
ドアの向こう側にいるモンターグは、響の名乗りを聞いて観念したかのようにドアを開いた。その先にいたのは、黒シーツを被っていないモンターグは……あれ? どこかで見たことがあるような? お下げでそばかすで、ちょっとどころではなく暗そうな……
「エニー!」
アイェダンが叫んだ。
そうだ、侍女のエニーだ。エニーってお城の仕事以外にも、モンターグのところで仕事してるの? えっと……まさか……
響は足をドアの隙間にねじ込んで、ドアをむりやり開く。押し入ってきた響を前にして、
「ごめんなさい! ごめんなさい! アオイさんには、アオイさんには!」
エニーは床の上で丸くなって《あおいさん》恐怖に怯えた声で叫ぶ。
「あおいさんって誰?」
「あとで説明する。モンターグ、おまえ召喚失敗したな!」
「ひいぃぃ! 失敗して……失敗してません!」
「晶の前世の記憶がごっそりと抜け落ちてるんだよ!」
響は床で震えているエニーを引っ張って、容赦なく怒鳴りつけた。元々暗くて幸薄そうなイメージが強いエニーが、可哀相なくらいに顔を青白くして正直に答えてくれた。
「許してください、許してください! 失敗しました! 私、召喚とか難しいことできないんです! 私はエニーなんです!」
「続けて正直に言え。正直に言ったら悪いようにはしない。俺に本当のことを言わないと”あおい”に誇張して伝えるぞ!」
「それだけは止めて下さい!」
モンターグとエニーは同一人物だった。そして……《あおい》ってどれほど恐い人なんだろう。
床に崩れ落ちたままのエニーを取り囲むようにして、私たちは告白を聞いた。
「クノッスさまの大事な壷を割ったのが切欠でした……」
召喚士……初めて聞いたんだけれども、召喚権を所持して召喚できる人のことを「召喚士」と言うらしい。それは後で知ったんだけれどもね。
先代の召喚士はクノッスといい、この人は本当に有能な召喚士で、アイェダンのお父さんである王と共に私を召喚するための準備を整えた人だった。クノッスにも後継者といえる弟子がいてそれがモンターグ。
クノッスはアイェダンのお父さんよりも一年早く、今から四年前に亡くなった。
亡くなる前に”召喚権”を別の所に封印し、時期が来たらそれを開封して私を召喚するようにモンターグに言い残したんだそうだ。
「その召喚権を封じた壷を私が割ってしまって……私が召喚士になってしまったのです」
エニーはこの近所に住んでいるそうで、城から帰る途中、雨に降られて玄関で雨宿りしてドアに寄っかかったら鍵がかかっていなくてそのまま家の中に。
部屋から急いで出ようししたんだけれども、部屋が暗くて躓いて、壷を割ってしまって次の召喚士になってしまった。
召喚士クノッスが亡くなる前にモンターグを召喚士リストに登録していたので、今更別の人にしましたとは言えなかったそうだ。
なによりも”あおい”という存在は失敗を許さない。
「私にどうして言わなかったのですか? モンターグ。いいえ、エニー」
「召喚権の管理が出来ていないと知られると、許可証の査定に影響するのだそうです」
「どのくらい影響するもんなの? 響」
「査定額が倍になる上に、毎年査定になる」
「……」
それは言い出せないね。アイェダンの表情も強ばったし……用意できない額なんだ。
おそらくモンターグも同じことを考えたのだろう。そこでモンターグはエニーを「モンターグ」にすることに。こうして王城務めの闊達な侍女は、仕事のあと大量の知識を詰め込まれることになった。
不幸そうだったのは寝不足からくるものだったらしい。
まだ聞きたいことはたくさんあるんだけれど、モンターグは意識を失った。抱えていた秘密を暴露して安堵したようにも、ばれたから徹夜の勉強から解放されたようにも……両方だろう。
エニーをソファーに寝かせて、私たちは座った。
「つぎは俺が知ってることを話そう。俺が知ってると言うよりは”俺が晶から聞いた話”だけどな」
「私から?」
「アイェダン王は……ちょっと待ってくれ」
響は胸元から手帳を取り出して”アイェダン”と片仮名で書いて、となりに”あきら”と平仮名で書いた。
「アイェダン王」
「はい」
「この国は晶を召喚するために二人の王女が自害したな」
自殺したのって王女だったんだ。
「はい」
「その王女の名を晶に教えたか?」
死んだ人の名前ってそんなに聞きたいとは思わないんだけど。
「教えてません」
「じゃあ教えてやってくれ」
「はい。自害した父の叔母二人の名はアイェダンとアリカです」
「いきなり聞かされても困るんだけど」
響は手帳を私にむけた。
「あきら」の名前に下向きの矢印をつけて「AKIRA」とローマ字で。「アイェダン」の名前も同じようにローマ字で「AILEDAN」
これってまさか……
「AKIRAを逆から読んでみろ」
言われなくても”ありか”だ!
「冗談でしょ!」
まさかのローマ字読み。
「これ? なんて書かれてるんですか? アキラ」
「”あきら”と、こちら側の世界のとある言葉で書かれている。そして逆から読むと”アリカ”になる」
響の説明を聞きながらアイェダンは文字を面白そうに眺めている。
「ローマ字読みとかおかしいよ!」
「これがおかしくないんだ」
「どうして!」
「異世界召喚は全部日本を通す」
「どういう……意味?」
「言葉通り。日本を通すから、ほぼ日本基準だ」
「……うそ」
「嘘じゃない。正式な異世界召喚は日本を経由しなけりゃならない。本部も日本、もちろん世間には秘密」
「なんで」
「第二次世界大戦で負けて押しつけられたんだよ」
第二次世界大戦は当たりだったけれど、まさか押しつけられたとは。
「どの国から?」
「アメリカとイギリスとフランスにロシアに中国、どこだと思う?」
「……」
どこだろう? 響の性格の悪さが滲み出る笑いが憎たらしい! 知らない人がみると、とっても魅力的なのがもっと憎たらしいけれども! 分からないことを察した響がヒントを出した。
「クローゼットあたりに入り込んだら異世界だったり、田舎に行ったらメアリー・スチュアートの時代を行き来する物語が書かれた島国」
正直ヒントくれるよりも、さっくりと答えを教えて欲しい。響、あんたは電気機器のヘルプかよ……でも答えないと話は進まない。えっと、ヒントは……クローゼットから異世界に行くのはナルニア国物語で、メアリース・チュアートの時代に行き来するといったら、サッカーズの荘園だから……
「イギリス?」
「そういうこと」
ファンタジー発祥の地だもんね、イギリス。正式名称は世界で二番目に長いらしいけれど、私は知らない。
「でもどうして?」
「良いこと少ないから。むしろ面倒のほうが多い。この召喚管理、大前提が島国なんだよ。異世界から危険なものが来ても海上封鎖でどうにかなるだろ? だから日本におはちが回ってきた」
危険が来たら海上封鎖って……それは……。
「それで晶の前世はアリカ。この国の王女だった。ちなみにロメティア・アイェダンって名乗ってるのは、言語変換が日本語基準だから名字が先になる。記憶失ってたなら不思議に感じただろうな。西洋人風の異世界人の名字が先にくるとか。ほとんどの日本人がびっくりするんだよ。他の奴には日本が基礎になって経由しているとか教えないからな」
アフターサービスもなにもないようだ。お役所仕事っていうのかな?
「うん。不思議だった。ところで響、言語変換って異世界に召喚されても普通に話ができることだよね」
「そうだ」
「私、篠崎麻衣さんに会ったんだけど、彼女一年経っても会話できないままで不自由してたし、モンフェスト将軍も依頼する時には言葉が通じるようになるオプションはなかったって聞いたけど」
「シノザキマイはただの召喚。お前は転生で記憶所持召喚」
「異世界の言葉を覚えているってこと?」
「そういうこと。ちなみに召喚費用は後者のほうが高額プラン。もちろん転生じゃなくても言語が通じるようにすることはできる」
「できるの?」
「俺とアイェダン王、会話しているだろう」
「あっ……」
気付かなかった。
「それでな”晶”に聞いたところによると、二人の王女のうち、どちらが異世界に転生するかは解らなかったらしい。アイェダン王が俺たちの世界に転生したら、名前は逆読みで”ナディア”だったろうな」
”ナディア”日本人の名前としては苦し……くもないか。最近はすごく派手な名前の子いるし、私のクラスにもアリスとかマリアとか普通にいたもんね。
「ナディア。素敵な名前ですね」
「そうだな。ここにはないが、月のという神秘的な衛星を擬人化した名だ。美女の意味もある……晶、前世アリカでよかったな」
「否定しないけど」
たしかに私の顔で「ナディア」は苦しい。
「じゃあ私とアイェダンは、召喚費用捻出のために自害した王女の生まれ変わりと」
「その理由もあるが、費用捻出のためだけじゃなくて、事情を知っている人を転生させる必要があった……って聞いた」
「事情? アイェダン知ってる?」
「知りません」
「知らないだろうな。記憶は安全な場所に生まれる方が継承するそうで、この場合は日本に生まれた晶が持っていた。所持していた記憶は”転生して異世界に生まれ変わり召喚されて卵を産む理由”だ」
「私が知りたかったことは、私は以前知っていたってわけ?」
「だから知ることに固執したんだろう」
「そう言われると……ねえ響」
「なんだ? 晶」
「私、響に前世は異世界の王女で、時が来たら異世界召喚されて卵を産むとか言ってたの?」
そうだとしたら恥ずかしいどころではない。
「それは言ってない」
あー良かった。そんなこと言ってたとしたら、記憶取り戻したくない。知っていなければならない記憶でも、その暗黒史と一緒に捨てる。
「どこから説明したらいいのかなあ……まずは、俺のことから始めるか。晶、俺がお前の家に引き取られた理由覚えてるか?」
「覚えてるよ。誠一伯父さんと美由紀伯母さんが事故で亡くなったから」
「さてと、嘘でもつくか」
お世話になった叔父さんと叔母さんに嘘をつくのは嫌だが、もうどうすることもできない。
「どちら様ですか?」
インターフォン越しに聞こえて来る叔母さんの声は、あの日から変わらず疲れ切っている。
「響です。叔母さん」
正月に今年リフォームする予定だって叔父さんは話してたけれども……今年はしないだろうな。心ない奴が既に”保険金の他に賠償金ももらったんでしょう”とか言ってきたとか。
リフォームしたら一人娘が死んで手に入れた金で建て直したと言うだろう。叔父さんと叔母さんは住み慣れた家を引き払って新しい土地に移るのも良いかもしれない。
「来てくれたの、響くん」
八歳の頃から十年間、大学に入るまで住んでいた家。去年訪れた時はそんなに古くなったような気はしなかったが、一人欠けるとこれほど家は寂しくなるのか。
そうだ、晶が言ってたな。
俺が家を出たら家がすこし寂れたような気がするって。
線香をあげて「本当は死んでいない晶」の遺影に手をあわせて、沈痛な面持ちで二人と向かいあう。
「叔父さん、叔母さん」
この状況は晶が望んだことだからどうしようもない。
「響くん」
沈黙の多い会話を交わして”また来ますから”と言って家を後にする。叔父さんの背中が小さくなったのは、年のせいだけじゃないし、叔母さんの皺が深くなったのも同じだ。
「……さてと、明日は晶に会いに行くとするか。”ふなだ”の塩豆大福に……」
晶から渡された”あとで買ってきてねリスト”の甘党ぶりに、苛つき半分、喜び半分。俺の両親が異世界の化け物に殺されたことに感謝しつつ――
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モンターグが対人恐怖症だろうが、引きこもりだろうが、プロの自宅警備員だろうが、外出するための黒シーツがなかろうが知ったことじゃない。引きずり出して全部を聞き出してやる!
意味もなく腕まくりをして、私は誓っていた。
アイェダンも聞きたいことがあるらしく、私を助けにきた時に持っていた剣を取り出した。刃が水晶みたいな剣は、ロメティアの王しか持つことが許されない剣で、王以外の者が持つと刃の輝きが濁り、何も切ることができなくなる。
私も持たせてもらったけれど、本当に刃が濁る。どんな仕組みになっているのかは……聞いたけれども魔法理論というやつで、私には解らなかった。
中世風の世界観だけれども、数学の知識は私がいた世界と変わらない……か、もしかしたら上かもしれない。
魔法はすべて算術で動いているとのこと。
”理系”という単語に憧れと羨望と嫉妬と嫌悪感を持っている私には解らない世界、それが魔法。
さあ、出かけよう! というところで、伝令がやってきた。
「王、アキラさまに面会したいと言うものが」
「誰ですか?」
「ヒビキと名乗りました。クロエ・ヒビキと。着衣は見慣れないもので、召喚士のリングを確かに装着しておりました」
召喚士のリングって……なに? それよりもクロエ・ヒビキって……
「知り合いですか?」
アイェダンに聞かれて、私は納得できない気持ちを押し殺して頷く。
「いとこだと思う」
どうして響がここに? まさか異世界で迷子になって、私のところまで? それは無理だよね。私がここにいるのを知っているのは……もしかして知っててきたの? どういうこと。
私はアイェダンと共にかつて私がアイェダンと初めて出会った通路へと向かった。あの場所が王との面会室だと知ったのはつい最近のこと。
異世界には玉座とか、殿様が座る一段高い椅子はないらしい。
アイェダンに「ないの?」と聞いたら「はあ……意味が分かりません。わざわざ高い所に座ってどうするのですか?」と、かなり本気で聞き返され、私も答えに詰まった。頭を過ぎったのは諺の『馬鹿と煙は高い所が好き』……言える訳ない。
そんなことを思い出しながら、向かった先にいたのはデカイ紙袋を持って、警察の制服を着た響。
「よう、久しぶり。晶」
正統派で涼しげな美形、中身はかなり性格悪い。でもそれが「クール」とか言われて……要は見た目だよね。見た目がよければ許される。
身内だからら”見た目より性格を見たほうがいいよ”と他人に注意するけれど、私も赤の他人だったら、響のことはやっぱりクールで格好良いと思うだろう。
「本物の響?」
ロメティアの西洋体型に負けない腰の高さに股下の長さ。
これで純粋な東洋人だってんだから……私が五歳、響は八歳の頃から同じ家で同じ物食べて育ったってのに、なにこの違い。
「偽物なんているわけないだろう。お前の希望の菓子もってきてやったぞ。味気ないタッパーだけど我慢しろよ」
無印良品っぽい茶色の大きな紙袋を手渡された。
半透明のタッパーの中身は、見覚えのある和菓子。
「響、どうしてここにいるの?」
「冗談言ってると冷めるぞ」
冗談ってどういうこと?
「なにを言ってるの? 響」
「お前こそ、なにを言ってるんだ晶」
「なに……って」
「お前ができたての”ふなだ”の塩豆大福を持ってこいって言っただろう」
「塩大福じゃなくて」
「カンパーニュか。それは下のほうに。ごっつい紙箱に保護されてるから潰れてない。安心そろ」
「食べ物じゃなくて! なんで響はこの状況を受け入れてるの? なんで驚かないの!」
私は生まれて初めて本気で訴えた。こんなにも心の底から叫んだのは初めて。
「どうやって驚けって?」
でも響はいつも通り、表情を崩すことなく、ちょっと馬鹿にしたような態度と落ち着いた声のまま。
「本当に意味が解らないんだけれど。ここ異世界なんだよ? 私、異世界に召喚されたんだよ?」
「お前、自分が異世界に召喚されるために生まれてきたんだろ? そのために転生したって俺に教えてくれたじゃないか」
響の言葉、理解したくなかった。
すぐに理解できちゃったけれども、なにそれ……
「えっと……私は自分が異世界召喚されることを知っていたの? 響……どういうこと」
「むしろこっちが聞きたい。でもまずは塩豆大福食え。苦労して買ってきたんだから食べてもらわないと腹立たしい」
”ふなだ”は本当に人気の和菓子店で、とくに塩豆大福は午前中のうちに売り切れちゃうんだ。
「わ、わかった」
私たちは場所を移動して固いベンチに腰を下ろして、塩豆大福を食べることに。
「お茶お願い」
控えていた侍女に温かいお茶を頼んだ。
「あれ? そう言えばエニーは?」
これでもロメティア国王の伴侶だから侍女とか付くんだ。
その私付きの侍女がエニー……なんだけれども、
「今日は休みだそうです」
「そうなんだ」
顔色悪い子だから、ちょっと心配だね。
他の侍女の話じゃ、昔は明るくて活発だったらしいけど、ある日突然根暗になったとか。なにか言えない事情があるんだろうと、誰もその傷には触れないらしいけど……なんだろね?
そして、久しぶりの塩豆大福は美味しかった。
アイェダンも気に入ったらしく、笑顔で食べていた。西洋系の美女が塩豆大福を頬張る姿は可愛い……いやああ! この頃私、アイェダンの仕草が可愛いくみえて仕方ないんですけれども、これはなに? 愛? 愛なの?
食べ終わって一息ついた私たちを見て、飲んでいた500mlペットボトルのキャップを閉じて体の前で両手で持って話だした。
「晶はどうして俺がここにいるのか分からないんだな?」
「分からない。本当に分からないの」
響はペットボトルを応援メガホンのように右手に打ちつけて、立ち上がる。
「晶の召喚担当はモンターグと言ったな。そいつの所に今から行くぞ! アイェダン王も」
「はい」
当初の目的通り、モンターグのところに行くことになったんだけれど……なんで響、モンターグの名前知ってるのかな? 異世界にはどうやって来たんだろう? 聞きたいことが多すぎて逆になにも聞けない。
馬車の中でも響は機嫌わるそうにペットボトルを手のひらにぶつけていた。中身のお茶は泡立ってひどいことになってる。
馬車が止まり降りた先には、ちょっと大きめなお屋敷。私はここら辺から城に連れて来られたわけだ。
明るい時に見ると、禍々しくもなんともない家だ。
「開けろ!」
響は高圧的にドアを叩いて怒鳴る。
「あなたは?」
「召喚管理局の治安維持部門の責任者クロエだ」
召喚管理局の治安維持……で責任者の響? なにその恥ずかしい”ひびき”。実際叫んだ響も若干照れてる。
響のこんな顔みるの久しぶりだなあ。
伯父さんたちの事故からやっと立ち直って、心を開いてくれたときの顔に似てる。
今でこそ性格の悪いやつだけど、家にきたばかりの時は……仕方ないとはいえ、捻くれてたなあ。ご両親を事故で失ったから仕方ないんだけど。
ドアの向こう側にいるモンターグは、響の名乗りを聞いて観念したかのようにドアを開いた。その先にいたのは、黒シーツを被っていないモンターグは……あれ? どこかで見たことがあるような? お下げでそばかすで、ちょっとどころではなく暗そうな……
「エニー!」
アイェダンが叫んだ。
そうだ、侍女のエニーだ。エニーってお城の仕事以外にも、モンターグのところで仕事してるの? えっと……まさか……
響は足をドアの隙間にねじ込んで、ドアをむりやり開く。押し入ってきた響を前にして、
「ごめんなさい! ごめんなさい! アオイさんには、アオイさんには!」
エニーは床の上で丸くなって《あおいさん》恐怖に怯えた声で叫ぶ。
「あおいさんって誰?」
「あとで説明する。モンターグ、おまえ召喚失敗したな!」
「ひいぃぃ! 失敗して……失敗してません!」
「晶の前世の記憶がごっそりと抜け落ちてるんだよ!」
響は床で震えているエニーを引っ張って、容赦なく怒鳴りつけた。元々暗くて幸薄そうなイメージが強いエニーが、可哀相なくらいに顔を青白くして正直に答えてくれた。
「許してください、許してください! 失敗しました! 私、召喚とか難しいことできないんです! 私はエニーなんです!」
「続けて正直に言え。正直に言ったら悪いようにはしない。俺に本当のことを言わないと”あおい”に誇張して伝えるぞ!」
「それだけは止めて下さい!」
モンターグとエニーは同一人物だった。そして……《あおい》ってどれほど恐い人なんだろう。
床に崩れ落ちたままのエニーを取り囲むようにして、私たちは告白を聞いた。
「クノッスさまの大事な壷を割ったのが切欠でした……」
召喚士……初めて聞いたんだけれども、召喚権を所持して召喚できる人のことを「召喚士」と言うらしい。それは後で知ったんだけれどもね。
先代の召喚士はクノッスといい、この人は本当に有能な召喚士で、アイェダンのお父さんである王と共に私を召喚するための準備を整えた人だった。クノッスにも後継者といえる弟子がいてそれがモンターグ。
クノッスはアイェダンのお父さんよりも一年早く、今から四年前に亡くなった。
亡くなる前に”召喚権”を別の所に封印し、時期が来たらそれを開封して私を召喚するようにモンターグに言い残したんだそうだ。
「その召喚権を封じた壷を私が割ってしまって……私が召喚士になってしまったのです」
エニーはこの近所に住んでいるそうで、城から帰る途中、雨に降られて玄関で雨宿りしてドアに寄っかかったら鍵がかかっていなくてそのまま家の中に。
部屋から急いで出ようししたんだけれども、部屋が暗くて躓いて、壷を割ってしまって次の召喚士になってしまった。
召喚士クノッスが亡くなる前にモンターグを召喚士リストに登録していたので、今更別の人にしましたとは言えなかったそうだ。
なによりも”あおい”という存在は失敗を許さない。
「私にどうして言わなかったのですか? モンターグ。いいえ、エニー」
「召喚権の管理が出来ていないと知られると、許可証の査定に影響するのだそうです」
「どのくらい影響するもんなの? 響」
「査定額が倍になる上に、毎年査定になる」
「……」
それは言い出せないね。アイェダンの表情も強ばったし……用意できない額なんだ。
おそらくモンターグも同じことを考えたのだろう。そこでモンターグはエニーを「モンターグ」にすることに。こうして王城務めの闊達な侍女は、仕事のあと大量の知識を詰め込まれることになった。
不幸そうだったのは寝不足からくるものだったらしい。
まだ聞きたいことはたくさんあるんだけれど、モンターグは意識を失った。抱えていた秘密を暴露して安堵したようにも、ばれたから徹夜の勉強から解放されたようにも……両方だろう。
エニーをソファーに寝かせて、私たちは座った。
「つぎは俺が知ってることを話そう。俺が知ってると言うよりは”俺が晶から聞いた話”だけどな」
「私から?」
「アイェダン王は……ちょっと待ってくれ」
響は胸元から手帳を取り出して”アイェダン”と片仮名で書いて、となりに”あきら”と平仮名で書いた。
「アイェダン王」
「はい」
「この国は晶を召喚するために二人の王女が自害したな」
自殺したのって王女だったんだ。
「はい」
「その王女の名を晶に教えたか?」
死んだ人の名前ってそんなに聞きたいとは思わないんだけど。
「教えてません」
「じゃあ教えてやってくれ」
「はい。自害した父の叔母二人の名はアイェダンとアリカです」
「いきなり聞かされても困るんだけど」
響は手帳を私にむけた。
「あきら」の名前に下向きの矢印をつけて「AKIRA」とローマ字で。「アイェダン」の名前も同じようにローマ字で「AILEDAN」
これってまさか……
「AKIRAを逆から読んでみろ」
言われなくても”ありか”だ!
「冗談でしょ!」
まさかのローマ字読み。
「これ? なんて書かれてるんですか? アキラ」
「”あきら”と、こちら側の世界のとある言葉で書かれている。そして逆から読むと”アリカ”になる」
響の説明を聞きながらアイェダンは文字を面白そうに眺めている。
「ローマ字読みとかおかしいよ!」
「これがおかしくないんだ」
「どうして!」
「異世界召喚は全部日本を通す」
「どういう……意味?」
「言葉通り。日本を通すから、ほぼ日本基準だ」
「……うそ」
「嘘じゃない。正式な異世界召喚は日本を経由しなけりゃならない。本部も日本、もちろん世間には秘密」
「なんで」
「第二次世界大戦で負けて押しつけられたんだよ」
第二次世界大戦は当たりだったけれど、まさか押しつけられたとは。
「どの国から?」
「アメリカとイギリスとフランスにロシアに中国、どこだと思う?」
「……」
どこだろう? 響の性格の悪さが滲み出る笑いが憎たらしい! 知らない人がみると、とっても魅力的なのがもっと憎たらしいけれども! 分からないことを察した響がヒントを出した。
「クローゼットあたりに入り込んだら異世界だったり、田舎に行ったらメアリー・スチュアートの時代を行き来する物語が書かれた島国」
正直ヒントくれるよりも、さっくりと答えを教えて欲しい。響、あんたは電気機器のヘルプかよ……でも答えないと話は進まない。えっと、ヒントは……クローゼットから異世界に行くのはナルニア国物語で、メアリース・チュアートの時代に行き来するといったら、サッカーズの荘園だから……
「イギリス?」
「そういうこと」
ファンタジー発祥の地だもんね、イギリス。正式名称は世界で二番目に長いらしいけれど、私は知らない。
「でもどうして?」
「良いこと少ないから。むしろ面倒のほうが多い。この召喚管理、大前提が島国なんだよ。異世界から危険なものが来ても海上封鎖でどうにかなるだろ? だから日本におはちが回ってきた」
危険が来たら海上封鎖って……それは……。
「それで晶の前世はアリカ。この国の王女だった。ちなみにロメティア・アイェダンって名乗ってるのは、言語変換が日本語基準だから名字が先になる。記憶失ってたなら不思議に感じただろうな。西洋人風の異世界人の名字が先にくるとか。ほとんどの日本人がびっくりするんだよ。他の奴には日本が基礎になって経由しているとか教えないからな」
アフターサービスもなにもないようだ。お役所仕事っていうのかな?
「うん。不思議だった。ところで響、言語変換って異世界に召喚されても普通に話ができることだよね」
「そうだ」
「私、篠崎麻衣さんに会ったんだけど、彼女一年経っても会話できないままで不自由してたし、モンフェスト将軍も依頼する時には言葉が通じるようになるオプションはなかったって聞いたけど」
「シノザキマイはただの召喚。お前は転生で記憶所持召喚」
「異世界の言葉を覚えているってこと?」
「そういうこと。ちなみに召喚費用は後者のほうが高額プラン。もちろん転生じゃなくても言語が通じるようにすることはできる」
「できるの?」
「俺とアイェダン王、会話しているだろう」
「あっ……」
気付かなかった。
「それでな”晶”に聞いたところによると、二人の王女のうち、どちらが異世界に転生するかは解らなかったらしい。アイェダン王が俺たちの世界に転生したら、名前は逆読みで”ナディア”だったろうな」
”ナディア”日本人の名前としては苦し……くもないか。最近はすごく派手な名前の子いるし、私のクラスにもアリスとかマリアとか普通にいたもんね。
「ナディア。素敵な名前ですね」
「そうだな。ここにはないが、月のという神秘的な衛星を擬人化した名だ。美女の意味もある……晶、前世アリカでよかったな」
「否定しないけど」
たしかに私の顔で「ナディア」は苦しい。
「じゃあ私とアイェダンは、召喚費用捻出のために自害した王女の生まれ変わりと」
「その理由もあるが、費用捻出のためだけじゃなくて、事情を知っている人を転生させる必要があった……って聞いた」
「事情? アイェダン知ってる?」
「知りません」
「知らないだろうな。記憶は安全な場所に生まれる方が継承するそうで、この場合は日本に生まれた晶が持っていた。所持していた記憶は”転生して異世界に生まれ変わり召喚されて卵を産む理由”だ」
「私が知りたかったことは、私は以前知っていたってわけ?」
「だから知ることに固執したんだろう」
「そう言われると……ねえ響」
「なんだ? 晶」
「私、響に前世は異世界の王女で、時が来たら異世界召喚されて卵を産むとか言ってたの?」
そうだとしたら恥ずかしいどころではない。
「それは言ってない」
あー良かった。そんなこと言ってたとしたら、記憶取り戻したくない。知っていなければならない記憶でも、その暗黒史と一緒に捨てる。
「どこから説明したらいいのかなあ……まずは、俺のことから始めるか。晶、俺がお前の家に引き取られた理由覚えてるか?」
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