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失踪者たちについて
第27話・古林と渡鍋・2
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売家の隣家、高梁家での聞き込みはインターフォン越しで行われた。
そして家主の男性――高梁は「人気があるときはそちら側を見ないので、詳しいことは分からない」と答えた。
当たり障りのない、ごく普通の返答。
二人の刑事はそれ以上の質問はしなかった。
「どうした? 古林」
次の現場にむかうことにしたのだが、一度運転席に座った古林が「あっ!」と声を上げて覆面パトカーから降りて、鍵をかけた玄関を解錠して室内へ。渡鍋がその後を追うと、古林は浴室にいた。
「どうした?」
「風呂にどうやって水を張ったのか、気になって」
売家は当たり前のことだが、給水契約は結ばれていないので、水は出ない――
”ひとりかくれんぼ”とは、降霊術の一種と言われている。
行うために必要なものは、
手足がある縫いぐるみ
米(縫いぐるみに詰めることができる分量)
縫い針と糸。糸は赤が好ましい
自分の爪
包丁やカッターのような刃物や、千枚通しなどの先端が鋭利なもの
コップ一杯程度の塩水
以上を用意して、準備を整えて行うのだが、その一連の行動の中に、縫いぐるみを水に浸ける場面がある。
浸けるのは浴室で水を張った風呂桶、または水を張った浴槽。水が張れてさえいれば洗面所でもいいとも書かれている。
「浴槽だな」
売家を出てしっかりと施錠して、ドアノブを引っ張って施錠を確認し覆面パトカーに乗り込んだ渡鍋は、佐野の娘のスマホに残っていた空家で撮影された、ひとりかくれんぼの動画をみる。
そこには、水を張った浴槽に浮いている、ピンク色のうさぎの縫いぐるみ。
佐野の娘が抱えているシーンもあるので、その縫いぐるみが20cmほどあるのは分かっている。
残っている動画では、そのうさぎの縫いぐるみは、浴槽に浮いている。
この状態になるには、浴槽の五分の一以上の水量が必要だが、一般家庭の浴槽はだいたい200リットル~300リットル以下。
古林と渡鍋が確認した動画の状況になるためには、40リットル以上の水が必要になる。
それを運び込むことができたか?
「高梁の庭に、立水栓はありましたね」
「ホースはなかった」
水道が通っていなければ、それは不可能。だが動画では浴槽に縫いぐるみが浮かぶには充分な水が張られていた。
あの売家の浴槽に水を張るとしたら、高梁家から借りるのがもっとも簡単。
「他の人が住んでいない事故物件では、風呂桶でひとりかくれんぼしてたのに、どうしてこの家だけ浴槽で行ったんでしょう」
「さあ、忘れたのかもな。そして物は試しに浴室の蛇口を触ったら、水が出てきたのかも」
「水は出てきませんでしたけれど」
これが車を所有、もしくはレンタルすることができる年齢なら、キャンプ等に使われる水タンクなどを積んで注ぐこともできるが、佐野の娘は運転免許は持っていないし、佐野の元妻は車を持っていなかった。
「…………佐野の拳銃回収が最優先だが」
失踪した娘の跡を追って、行方が分からなくなった佐野……が所持していた拳銃。警察としては、なんとしても拳銃を確保しなくてはならない。
二人の刑事は近所の交番に立ち寄り、高梁の家族構成などについて、軽く情報を集めて、再び車を走らせた。
高梁は二人が思った通り、あの一軒家で一人暮らし。
両親は事故で他界しており、親戚づきあいはほとんどない。
仕事はネットで在宅ワークで、金銭トラブルもなければ騒音やゴミトラブルもない。
「あの売家も、長年しっかりと不動産業者が手入れしているので、一家失踪後いままで一度も問題が起きたことはないと」
「ますます、あの家が一家行方不明になった物件だと、どうやって知ったのかが気になるな」
浴室の水など、奇妙なところはあるが、室内を捜索したが、屋根裏や床下収納、その他を探したが、拳銃は見つからなかった。
また、道路沿いにあるコンビニに立ち寄り、話を聞いた。
佐野は喫煙者で、どこもかしこも禁煙なので、自分の車の中では、煙草をひっきりなしに吸うため、移動の合間に煙草を切らして、コンビニで購入しているだろうと。
残念ながらこの時点で一ヶ月以上経過していたので、防犯カメラの映像は残っていなかったが、
「見覚えはあるかな?」
「この人……ああ、なんとなくですが覚えています。煙草とコーヒーを購入した記憶があります。暇な時間帯で、特徴あるお客さんだったので。はい、体格といい顔つきといい、威圧感があったんで。なにか、あったんですか?」
一件のコンビニで、バイトの青年からそんな証言があった。
念のために煙草の銘柄を尋ねると、佐野が吸っている銘柄だったので、佐野はここに立ち寄ったことが分かった。
「あのベトナム料理店には、立ち寄りませんよね」
「立ち寄るとしたら、隣のファミレスだろうな」
二人はその後も、佐野が残した赤いペンでチェックされた事故物件を周り、拳銃がないかどうか探したものの、一通り探しても拳銃は見つからなかった。
もちろん佐野も、その娘の陽菜もみつからなかった。
そして家主の男性――高梁は「人気があるときはそちら側を見ないので、詳しいことは分からない」と答えた。
当たり障りのない、ごく普通の返答。
二人の刑事はそれ以上の質問はしなかった。
「どうした? 古林」
次の現場にむかうことにしたのだが、一度運転席に座った古林が「あっ!」と声を上げて覆面パトカーから降りて、鍵をかけた玄関を解錠して室内へ。渡鍋がその後を追うと、古林は浴室にいた。
「どうした?」
「風呂にどうやって水を張ったのか、気になって」
売家は当たり前のことだが、給水契約は結ばれていないので、水は出ない――
”ひとりかくれんぼ”とは、降霊術の一種と言われている。
行うために必要なものは、
手足がある縫いぐるみ
米(縫いぐるみに詰めることができる分量)
縫い針と糸。糸は赤が好ましい
自分の爪
包丁やカッターのような刃物や、千枚通しなどの先端が鋭利なもの
コップ一杯程度の塩水
以上を用意して、準備を整えて行うのだが、その一連の行動の中に、縫いぐるみを水に浸ける場面がある。
浸けるのは浴室で水を張った風呂桶、または水を張った浴槽。水が張れてさえいれば洗面所でもいいとも書かれている。
「浴槽だな」
売家を出てしっかりと施錠して、ドアノブを引っ張って施錠を確認し覆面パトカーに乗り込んだ渡鍋は、佐野の娘のスマホに残っていた空家で撮影された、ひとりかくれんぼの動画をみる。
そこには、水を張った浴槽に浮いている、ピンク色のうさぎの縫いぐるみ。
佐野の娘が抱えているシーンもあるので、その縫いぐるみが20cmほどあるのは分かっている。
残っている動画では、そのうさぎの縫いぐるみは、浴槽に浮いている。
この状態になるには、浴槽の五分の一以上の水量が必要だが、一般家庭の浴槽はだいたい200リットル~300リットル以下。
古林と渡鍋が確認した動画の状況になるためには、40リットル以上の水が必要になる。
それを運び込むことができたか?
「高梁の庭に、立水栓はありましたね」
「ホースはなかった」
水道が通っていなければ、それは不可能。だが動画では浴槽に縫いぐるみが浮かぶには充分な水が張られていた。
あの売家の浴槽に水を張るとしたら、高梁家から借りるのがもっとも簡単。
「他の人が住んでいない事故物件では、風呂桶でひとりかくれんぼしてたのに、どうしてこの家だけ浴槽で行ったんでしょう」
「さあ、忘れたのかもな。そして物は試しに浴室の蛇口を触ったら、水が出てきたのかも」
「水は出てきませんでしたけれど」
これが車を所有、もしくはレンタルすることができる年齢なら、キャンプ等に使われる水タンクなどを積んで注ぐこともできるが、佐野の娘は運転免許は持っていないし、佐野の元妻は車を持っていなかった。
「…………佐野の拳銃回収が最優先だが」
失踪した娘の跡を追って、行方が分からなくなった佐野……が所持していた拳銃。警察としては、なんとしても拳銃を確保しなくてはならない。
二人の刑事は近所の交番に立ち寄り、高梁の家族構成などについて、軽く情報を集めて、再び車を走らせた。
高梁は二人が思った通り、あの一軒家で一人暮らし。
両親は事故で他界しており、親戚づきあいはほとんどない。
仕事はネットで在宅ワークで、金銭トラブルもなければ騒音やゴミトラブルもない。
「あの売家も、長年しっかりと不動産業者が手入れしているので、一家失踪後いままで一度も問題が起きたことはないと」
「ますます、あの家が一家行方不明になった物件だと、どうやって知ったのかが気になるな」
浴室の水など、奇妙なところはあるが、室内を捜索したが、屋根裏や床下収納、その他を探したが、拳銃は見つからなかった。
また、道路沿いにあるコンビニに立ち寄り、話を聞いた。
佐野は喫煙者で、どこもかしこも禁煙なので、自分の車の中では、煙草をひっきりなしに吸うため、移動の合間に煙草を切らして、コンビニで購入しているだろうと。
残念ながらこの時点で一ヶ月以上経過していたので、防犯カメラの映像は残っていなかったが、
「見覚えはあるかな?」
「この人……ああ、なんとなくですが覚えています。煙草とコーヒーを購入した記憶があります。暇な時間帯で、特徴あるお客さんだったので。はい、体格といい顔つきといい、威圧感があったんで。なにか、あったんですか?」
一件のコンビニで、バイトの青年からそんな証言があった。
念のために煙草の銘柄を尋ねると、佐野が吸っている銘柄だったので、佐野はここに立ち寄ったことが分かった。
「あのベトナム料理店には、立ち寄りませんよね」
「立ち寄るとしたら、隣のファミレスだろうな」
二人はその後も、佐野が残した赤いペンでチェックされた事故物件を周り、拳銃がないかどうか探したものの、一通り探しても拳銃は見つからなかった。
もちろん佐野も、その娘の陽菜もみつからなかった。
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